カ・ル・マ！ ～天王寺の変～

天王寺の変 五の章

参差錯落 弐 その４

気持ちは解かるが、モノアイの名前が出る度たびキレてたら止める方はしんどいねん。
と楓は心の中で吐き捨てる。

　（確かに、気持ちは解からんでもないけどな～

何せあの時、ルネの左眼を消したのはモノアイ。
だけどその後、超低速軟着弾を使ってモノアイの左眼を潰したのはルネ。

お互い様やんと思うのだが、そんな理屈はルネに無い。
ルネはいつも、逢った瞬間、殺すと公言している。

ま、あの時、眼だけじゃなく身体中穴だらけにされたんだから、怒るのは無理ないと思うけど、名前を言っただけのヤツまで撃っちゃうのはどうかと、、、。

　「ままま、とにかくＥＧ使いが来て、
　　その女を助けたんやね？」

頷うなずこうとするもんだから、また痛がる二人。
楓は写真を出して聞く。

　「この女か？」

頷く。痛がる。
どうやらこいつらが見た女は、間違いなく宮崎佳穂だ。

　「どっち行った？」

野暮な質問だった。
身体中に何かがくっ付いている状態なんだから、楓の質問に腕を上げて指し示せない。

　「あ、ごめ～～～ん」

楓は土佐堀通から、ルネは天神橋筋からここに来ているので、道的に考えるとルネが来た方角と反対方向へ行ったと考えるのが普通。

　「あっちか？」

その方向を、楓が差す。
これには痛がりながらも、うんうんと答えられたビッグさん。

　「ルネ、行くで」

楓が歩き出した。
ルネも続いた。
二人の男の呻き声。

　「たたた、助けて、、、くれる、
　　ん、、と、ちゃうん？！」
　「助ける言うたっけ？　誰が誰を？
　　知らんなぁ、、、」

一見、女子プロレスラーの衣装を連想させる楓の後ろ姿が、二人の男の視界からどんどん小さくなって行く。
残された男の感情など気にもせず、楓とルネは谷四から谷九方面へ向かった。