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プーチンの母に、哀願の巻(十五話)

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天界からは、下界の様子は、ありのままに実に良く見える。
ロシアの起こしたウクライナ軍事侵攻、いや侵略のドンパチは、ここ天界にも響きよる。
この物語の主人公の毛沢東も、大いに憂いておる。何とかならないものかと。
まだまだ、霊力が充分ではない為、直接には関与出来ないでおる。
ここは、かつてのワンマンの血が騒ぐ、だが、力不足成り、いい手はありやなしや。
うん、下界のプーチンとやらに関与するのではなくて、天界の母御に頼もうではないか。
一念発起、私が天界から「仲裁」に乗り出そう、と……


毛沢東   「これはこれは、お出まし頂いて、どうもありがとうございます」
      「まず始めに自己紹介させてください。私は中国人です。毛沢東と言います」
      「肌が黄色でも、日本人ではありません。かつての大戦では仲間でした」
      「お国がドイツを負かしてくれました、中国は苦戦しましたが、我らが勝利へと」
      「その後、私は新中国を建国致しました。ソ連を見習い国を作ったのです」
      「お国のスターリン閣下には、一度、モスクワでお会い致しました」
      「非情に怖ろしい方でしたな、別荘でのご馳走が喉を通りませんでしたわ」
      「実は、折り入って、お願い致したき事があるのです」
プーチンママ「はっ、東洋の中国のそんなお偉い方が、私めに何でまた……」
毛沢東   「大いに訳があるのです。下界を揺るがしている戦のことで」
      「あのう、真に言いづらい事なれど、あなたの息子さんの大暴れで悲惨な事に」
プーチンママ「ええ、ウクライナ侵攻は、目に余ります。兄弟国同士が、本当に悪夢です」
      「これは母としては、我が息子の言い分も聞かねばなりません」
      「きっと、止むに止むれぬ思いから、こんな決断に至ったのだと」
      「私だけが知っているウラジーミルは、でも、語っていいものか……」
毛沢東   「母御様、あなたの息子は、今や誰の言う事も聞きません」
      「あなた様だけが、唯一の、そして最後の切り札と思われるのです」
      「私からの、お願いの儀とは、ご子息を悪夢から目覚めさせてほしい」
      「とんでもない悪夢の中に居るのであれば、夢枕に現れて救ってほしいのです」
      「救えるのは、最早あなただけなのですよ、ヨーロッパが救われるのです」
プーチンママ「その、悪夢が悪いのであって、息子は流れているだけだとすると」
      「本当でそれだけだとすると、私は、あの子を解いてあげねばです」
毛沢東   「是非に是非にと、私からお願い申し上げます」
      「私は当時、ソ連あっての私でした、先輩共産国をしたっておりました」
      「イデオロギーはソ連からです。それで国をまとめる事が出来ました」
      「今、下界ではウクライナばかりか、ロシアも窮地に立たされてます」
      「引いては、ヨーロッパのみならず、全世界が無になりかねません」
      「御母堂様、どうか息子の夢に現れて、教え諭してはくれませぬか」
      「この通りで御座います。御母堂様……」
プーチンママ「おっしゃる事は、良くとわかりましたわ。何とかしましょう」
      「息子を救えば、すべてが救われるのですね。やってみます」
      「毎夜毎夜、夢枕に立ちますわ。それどころが、化けて出ますわ」
      「長男を生後すぐ、次男を包囲戦で2才で失って12年振りに出来た子」
      「私が41才の時にやっと手にした子ですもの、可愛くて仕様がありません」
      「あのう、毛沢東さん、私からもお願いがあるのですが」
      「どうか、秘めて置いて欲しい事は、そっとしておいてくださいますか?」
毛沢東   「わかっております。ご子息はレニングラードの申し子ですな」
      「飢餓地獄を耐え抜いた、そのあなたが立派に育て上げたのですぞ」
      「あなたが救ったのです、また、救ってくだされ、どうか」
プーチンママ「ウラジーミルが5才の時の、物憂げな目が忘れられません」
      「さっそく、今夜から夢に出ますわ、やりますわ……」

毛沢東は、下界に恩返しをしようと思ったのである。
それに、やはりロシアが大いに気になるのである。スターリンしかり。
プーチンの天界の母に諫めてもらうとは、これも「仲裁」である。
後々は、自身自らで、下界に介入の出来る運びとなりますかな。
それは、天界での修行によりまする。

ああ、母御の言ってた秘密とは、まあ、今は触れません……
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