20 / 29
第一章 家族編
14話 僕はみんなに愛されている
しおりを挟む
やばい! アレン君から離れないとだめだ!と思った僕は、アレン君の体をドンっと押して、3歩ほど後ずさりした。急いで兄さまの誤解を解こうと思い、手を前に出してあわあわと口を動かす。
「に、兄さま! 僕なにもされてないですよ!」
「でも泣いているじゃないか。誰に泣かされたんだい?」
「そ、それは……」
そう言われてちょっと黙る。確かに、この涙はアレン君が僕のことを信じてくれないかもと思って、不安になったから流れた涙だ。でもでも、否定しなきゃ!
怒って目を細めている兄さまにお返事しようと、手を胸元でぐーにして声を出す。
「あのね、アレン君だけど……アレン君じゃないの!」
「……もしかして、僕のせいかな? リュカのお守りに水の魔法陣を仕込んだせいで、怖くなって泣かせてしまったのかい?」
「あれはやっぱり、兄さまがやってくれたのですか!?」
「そうだよ。それにね、リュカの場所が分かるように、父さまがお守りに追跡魔法をかけてくれていたんだ。でも、駆けつけるのが遅くなってしまったから、リュカに嫌な思いを……」
後悔するように下を向く兄さま。それを見て、僕のことを助けてくれたのにどうして誇ってくれないの?と考えてしまう。そのまま兄さまのことをぼんやりと見続けていたら、僕が乗ってきた馬車が止まっている道から、父さまが出てきた。
「リュカ、大丈夫か?」
「父さままで……どうして?」
「実行犯を捕まえるために来た。まあ、まさかリュカを性的に襲おうとしているとは思わなかったが……怪我はしていないか? どこか痛いところは?」
父さまはいつも通り眉をしかめていて、僕のことを睨んでいるように見える。でも、父さまの口から出てくるのは、罵倒じゃなくて心配の言葉。それに父さまは、兄さまからもらったこのお守りに追跡魔法をかけてくれていた。
……兄さまも父さまも、僕のことを嫌いじゃなかったの?
「な、なんで……? 兄さまは僕のこときらいなんでしょう?」
「そんなわけない! 僕はリュカのことが大好きだよ!」
「父さまは……?」
「……嫌いじゃない」
2人の返事を聞いて、僕はつばを飲み込んだ。
今まで嫌われていると思っていたのは、全部僕の勘違いだったの?
……僕ってこんなに愛されていたんだ。
目も鼻も熱くなる。視界が端からじわじわとぼやけていく。だめだ、泣いちゃう。
「僕、父さまに……兄さまに……きらわれているとおもってた!! あってもはなしかけてくれないし、だっこもしてくれない! わらってもくれない!!」
「リュカ……」
「ぼ、僕、きょうしんじゃうとおもってた! うぅ……うわぁーん!!!」
下を向いていたはずの兄さまが、泣きそうな目で僕を見る。僕の口からは、絶対大丈夫と信じ込ませて気付かないようにしていた言葉が、ぽろぽろと外にでていく。
死ぬ運命に逆らおうと必死にもがいて、頑張って皆に好かれようと行動しても空回りして……ずっとずっと不安だった。
そんな僕のとまらない涙を見て、兄さまは僕をひしりと抱きしめた。
「ごめんねリュカ! 僕はお母様にいい子のフリをして自分の身を守っていたんだ!! そのせいで……そのせいで!!」
「うぅ、えっぐ……にい、さまぁ」
「僕の身勝手な行動でリュカが嫌な目にあってしまったというのに……!! 本当にごめんなさいリュカ!!」
そう言って、兄さまは真珠のようにキラキラした大粒の涙を流しながら、僕に回した腕の力をさらに強くする。兄さまは、痛くなるほど強く僕のことを抱きしめたまま、ピクリとも動かない。僕も兄さまの背中に震えた手を回して答える。
2人で抱き合って泣いていると、父さまはズボンが土で汚れることなんて厭わずに、地面に膝をついて、僕のほっぺたに手を添えて話し出した。
「リュカ、そのままでいい。リュカは頭がいいから、これは君の母がやったことだって気付いていただろう。でも、リュカが生まれたときの話も聞いてくれないか?」
父様は真剣に僕の目を見て話す。僕は鼻水をずびずびとすすりながら、こくんと首を縦に動かした。
「に、兄さま! 僕なにもされてないですよ!」
「でも泣いているじゃないか。誰に泣かされたんだい?」
「そ、それは……」
そう言われてちょっと黙る。確かに、この涙はアレン君が僕のことを信じてくれないかもと思って、不安になったから流れた涙だ。でもでも、否定しなきゃ!
怒って目を細めている兄さまにお返事しようと、手を胸元でぐーにして声を出す。
「あのね、アレン君だけど……アレン君じゃないの!」
「……もしかして、僕のせいかな? リュカのお守りに水の魔法陣を仕込んだせいで、怖くなって泣かせてしまったのかい?」
「あれはやっぱり、兄さまがやってくれたのですか!?」
「そうだよ。それにね、リュカの場所が分かるように、父さまがお守りに追跡魔法をかけてくれていたんだ。でも、駆けつけるのが遅くなってしまったから、リュカに嫌な思いを……」
後悔するように下を向く兄さま。それを見て、僕のことを助けてくれたのにどうして誇ってくれないの?と考えてしまう。そのまま兄さまのことをぼんやりと見続けていたら、僕が乗ってきた馬車が止まっている道から、父さまが出てきた。
「リュカ、大丈夫か?」
「父さままで……どうして?」
「実行犯を捕まえるために来た。まあ、まさかリュカを性的に襲おうとしているとは思わなかったが……怪我はしていないか? どこか痛いところは?」
父さまはいつも通り眉をしかめていて、僕のことを睨んでいるように見える。でも、父さまの口から出てくるのは、罵倒じゃなくて心配の言葉。それに父さまは、兄さまからもらったこのお守りに追跡魔法をかけてくれていた。
……兄さまも父さまも、僕のことを嫌いじゃなかったの?
「な、なんで……? 兄さまは僕のこときらいなんでしょう?」
「そんなわけない! 僕はリュカのことが大好きだよ!」
「父さまは……?」
「……嫌いじゃない」
2人の返事を聞いて、僕はつばを飲み込んだ。
今まで嫌われていると思っていたのは、全部僕の勘違いだったの?
……僕ってこんなに愛されていたんだ。
目も鼻も熱くなる。視界が端からじわじわとぼやけていく。だめだ、泣いちゃう。
「僕、父さまに……兄さまに……きらわれているとおもってた!! あってもはなしかけてくれないし、だっこもしてくれない! わらってもくれない!!」
「リュカ……」
「ぼ、僕、きょうしんじゃうとおもってた! うぅ……うわぁーん!!!」
下を向いていたはずの兄さまが、泣きそうな目で僕を見る。僕の口からは、絶対大丈夫と信じ込ませて気付かないようにしていた言葉が、ぽろぽろと外にでていく。
死ぬ運命に逆らおうと必死にもがいて、頑張って皆に好かれようと行動しても空回りして……ずっとずっと不安だった。
そんな僕のとまらない涙を見て、兄さまは僕をひしりと抱きしめた。
「ごめんねリュカ! 僕はお母様にいい子のフリをして自分の身を守っていたんだ!! そのせいで……そのせいで!!」
「うぅ、えっぐ……にい、さまぁ」
「僕の身勝手な行動でリュカが嫌な目にあってしまったというのに……!! 本当にごめんなさいリュカ!!」
そう言って、兄さまは真珠のようにキラキラした大粒の涙を流しながら、僕に回した腕の力をさらに強くする。兄さまは、痛くなるほど強く僕のことを抱きしめたまま、ピクリとも動かない。僕も兄さまの背中に震えた手を回して答える。
2人で抱き合って泣いていると、父さまはズボンが土で汚れることなんて厭わずに、地面に膝をついて、僕のほっぺたに手を添えて話し出した。
「リュカ、そのままでいい。リュカは頭がいいから、これは君の母がやったことだって気付いていただろう。でも、リュカが生まれたときの話も聞いてくれないか?」
父様は真剣に僕の目を見て話す。僕は鼻水をずびずびとすすりながら、こくんと首を縦に動かした。
16
お気に入りに追加
984
あなたにおすすめの小説
セントアール魔法学院~大好きな義兄との学院生活かと思いきや何故だかイケメンがちょっかいかけてきます~
カニ蒲鉾
BL
『ラウ…かわいい僕のラウル…この身体の事は絶対に知られてはいけない僕とラウル二人だけの秘密』
『は、い…誰にも――』
この国には魔力を持つ男が通うことを義務付けられた全寮制魔法学校が存在する。そこに新入生として入学したラウルは離れ離れになっていた大好きで尊敬する義兄リカルドと再び一緒の空間で生活できることだけを楽しみにドキドキワクワク胸を膨らませていた。そんなラウルに待つ、新たな出会いと自分の身体そして出生の秘密とは――
圧倒的光の元気っ子ラウルに、性格真反対のイケメン二人が溺愛執着する青春魔法学園ファンタジー物語
(受)ラウル・ラポワント《1年生》
リカ様大好き元気っ子、圧倒的光
(攻)リカルド・ラポワント《3年生》
優しいお義兄様、溺愛隠れ執着系、策略家
(攻)アルフレッド・プルースト《3年生》
ツンデレ俺様、素行不良な学年1位
(友)レオンハルト・プルースト《1年生》
爽やかイケメン、ラウルの初友達、アルの従兄弟
兄たちが溺愛するのは当たり前だと思ってました
不知火
BL
温かい家族に包まれた1人の男の子のお話
爵位などを使った設定がありますが、わたしの知識不足で実際とは異なった表現を使用している場合がございます。ご了承ください。追々、しっかり事実に沿った設定に変更していきたいと思います。
【完結】前世の記憶が転生先で全く役に立たないのだが?! ~逆チートの俺が異世界で生き延びる方法~
.mizutama.
BL
☆本編完結しました!!番外編を続々更新予定!!☆
由緒正しい家柄である騎士団長の夫妻に拾われた赤ん坊の俺、アントンには日本人だった前世の記憶があった。
夫妻に溺愛されてすくすくと成長した俺だが、キラキラしたこの異世界での場違い感が半端ない!
そして、夫妻の実子である一歳年下の弟・アルベルトの冷たい視線が突き刺さる!
見た目がザ・平民の俺は、貴族の子弟が通う学園でクラスメートからほぼいない者として扱われ、16歳になるのに婚約者さえ決まらない!
体力もなければ、魔力もない。選ばれし勇者でもなければ、神子でもない。
この物語は、そんな俺がこの異世界を生き抜き、なんとか安らげる居場所を求めてあがいた生々しい記録である!!
【R18】
完全無欠美貌騎士の弟×平凡無自覚兄
(※その他攻めキャラいろいろ・・・・)
※注意事項※
愛されという名の総受け。
ギャグですが、R18要素は多め!(R18シーンは予告なく、突然に始まります!)
攻めはイケメンですが、全員変態です。
それでもいいという方のみご覧ください!!!
【お願い】
ネタバレ感想はネタバレフィルターかけさせていただきます。あしからずご了承ください!アンチ感想・感想という名の展開予測はご遠慮ください。
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
第二王子に転生したら、当て馬キャラだった。
秋元智也
BL
大人気小説『星降る夜の聖なる乙女』のゲーム制作に
携わる事になった。
そこで配信前のゲームを不具合がないか確認する為に
自らプレイしてみる事になった。
制作段階からあまり寝る時間が取れず、やっと出来た
が、自分達で不具合確認をする為にプレイしていた。
全部のエンディングを見る為に徹夜でプレイしていた。
そして、最後の完全コンプリートエンディングを前に
コンビニ帰りに事故に遭ってしまう。
そして目覚めたら、当て馬キャラだった第二王子にな
っていたのだった。
攻略対象の一番近くで、聖女の邪魔をしていた邪魔な
キャラ。
もし、僕が聖女の邪魔をしなかったら?
そしたらもっと早くゲームは進むのでは?
しかし、物語は意外な展開に………。
あれ?こんなのってあり?
聖女がなんでこうなったんだ?
理解の追いつかない展開に、慌てる裕太だったが……。
愛を求めて転生したら総嫌われの世界でした
豚
BL
愛を知らずに若くして命を落とした安里(あんり)は異世界転生の機会を与えられる。しかし転生先でも黒髪黒目で生まれたアンリは、誰もが持っている精霊の加護を持っておらず、"黒の忌人(いみびと)"として公然と差別を受ける存在だった。
不憫健気な主人公が不条理な差別や過酷な運命に見舞われつつも、攻めに愛され、愛を知り、愛を懸命に育んでいく成長物語(?)です。
攻めは三人以上の予定。最後は総受け総愛されハッピーエンド…ですがそこまでが長くてずっと不憫です。
R18は中盤以降になるかと思います。
ざまぁ展開はありません。…すみません。
虐待、差別等の表現が多々出てきます。苦手な方はご注意下さい。
R18表現がある時(未満の時もありますが)には「※」マークをつけています。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる