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第一章 誰が為の新嫁娘(シンチャンニャン)

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「にしても報われない恋どころかこんな執念深く怨念塗れになっちまって。
黒紫桂(ヘイヅィグイ)も可哀想に」


「帝の死も時間の問題ってとこかね」、燐燗はそう再び言うと煙管を吹かす。
仁光儀はついに頭に血が上り、紙を握りしめて燐燗の胸ぐらを掴んだ。

「お前に人としての心はないのかッ‼︎」



仁光儀が叫ぶ。
ソレに燐燗は無表情で仁光儀を見つめると、悲しそうに微笑んだ。



「なら取り戻しておくれよ、奪われたアタシの心を…」

「何…?」

「ははっ!なぁーんてねっ!戯言に惑わされるから黒紫桂は本気になっちまったのかねぇ、哀れなことさね。
仁光儀、失われたものはね、元には戻らないんだよ。
帝も然り。
助けれるかはアンタがソレを実行すると契約するかどうか」



燐燗は静かに仁光儀の手を離すと目を逸らすことなく彼の目を見つめて言う。
ソレは瞳に灯を灯した色だった。



「失ったモノは、戻りはしない」
「…ッ!
それでも…!
小さくとも強い火は決して消えはしないのだろ⁈」



燐燗は目を見開いた。
息を飲む。



「そうだろ·····」



燐燗は黙した。
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