風華鬼伝承

桐夜 白

文字の大きさ
上 下
5 / 6
第一話 鬼達の幼き日々

2

しおりを挟む
夜亜芽(ヨツメ)と現(うつつ)との出会いは、母─翠桜(スイオウ)が連れて来た”許嫁”というモノだった。
彼女はボロボロの姿だった。 
曰く、親から虐待を受けていたようだ。
 
 
夜亜芽の母親は、現(うつつ)の母─翠桜の妹らしい。
最初は妹の茜という少女を許嫁に差し出したそうだが、「姉が居るでしょう?」と言ったら、翠桜の妹は表情を強張らせて言葉を失ったらしい。
そして「娘はこの茜だけよ」と言い張ったらしい。
そんな中、姉である翠桜の側に居た父─九蓋(クガイ)が出て来たらしい。

希少さが赤恋玖より少ない青鬼の青瑠璃玖の長が出てきたら、隠し通せるものも隠し通せない。
翠桜が側の物置小屋に行くと、物音がかすかにしたのを九蓋と翠桜は聞き逃さなかった。
「開けるな!」という翠桜の妹の声を無視して物置小屋を開けると、ソコには怯えた赤い髪に金色の瞳の”角の無い鬼”が居た。
ソノ小さな小鬼は、髪は長くてボロボロで、やせ細ろえていて、とても健康幼児とは想えなかった。
また顔や肌には殴られたであろう跡があり、虐待されているのが明らかに見てとれた。
 
 
  
「コノ子を現(うつつ)の許嫁にもらいます」
「勝手なことを…」
「私が親になろう」
「…っ、青瑠璃玖長(アオルリクオサ)…」
 
 
 
翠桜が赤い髪の”角の無い鬼”を抱き上げるとハッキリと言い放つ。
するとソノ妹が睨みつけて言い、九蓋が前に出て翠桜をかばった。
ソレに赤い髪の”角の無い鬼”の母親は憎々し気に言った。
 
 
 
「ふんっ!好きにするといいわ!姉さんにはお似合いの産物よ!!
ソイツは五歳になっても角が生えなかった。
出来損ない、憎たらしい、まるで人間みたいだわ!
そんな奴くれてやるわ!

…さぁ、茜?
これからは幸せな日々が待っているからね」
 
 
 
ソノ時、母は見逃さなかったという。
翠桜の妹である茜の母の見えないところ、茜の背中で、茜が指文字を示したことを。
「お姉ちゃん、会いに行く」と。
 
ソレに翠桜が微笑むと、ソレを自分に向けられたと翠桜の妹は受け取ったみたいでチッと舌打ちをした。
そして怯える夜亜芽という赤い髪に金の瞳の”角の無い鬼”を、二人は連れ帰ってきた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

新訳 軽装歩兵アランR(Re:boot)

たくp
キャラ文芸
1918年、第一次世界大戦終戦前のフランス・ソンム地方の駐屯地で最新兵器『機械人形(マシンドール)』がUE(アンノウンエネミー)によって強奪されてしまう。 それから1年後の1919年、第一次大戦終結後のヴェルサイユ条約締結とは程遠い荒野を、軽装歩兵アラン・バイエルは駆け抜ける。 アラン・バイエル 元ジャン・クロード軽装歩兵小隊の一等兵、右肩の軽傷により戦後に除隊、表向きはマモー商会の商人を務めつつ、裏では軽装歩兵としてUEを追う。 武装は対戦車ライフル、手りゅう弾、ガトリングガン『ジョワユーズ』 デスカ 貴族院出身の情報将校で大佐、アランを雇い、対UE同盟を締結する。 貴族にしては軽いノリの人物で、誰にでも分け隔てなく接する珍しい人物。 エンフィールドリボルバーを携帯している。

Strain:Cavity

Ak!La
キャラ文芸
 生まれつき右目のない青年、ルチアーノ。  家族から虐げられる生活を送っていた、そんなある日。薄ら笑いの月夜に、窓から謎の白い男が転がり込んできた。  ────それが、全てのはじまりだった。  Strain本編から30年前を舞台にしたスピンオフ、シリーズ4作目。  蛇たちと冥王の物語。  小説家になろうにて2023年1月より連載開始。不定期更新。 https://ncode.syosetu.com/n0074ib/

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

ハバナイスデイズ~きっと完璧には勝てない~

415
ファンタジー
「ゆりかごから墓場まで。この世にあるものなんでもござれの『岩戸屋』店主、平坂ナギヨシです。冷やかしですか?それとも……ご依頼でしょうか?」 普遍と異変が交差する混沌都市『露希』 。 何でも屋『岩戸屋』を構える三十路の男、平坂ナギヨシは、武市ケンスケ、ニィナと今日も奔走する。 死にたがりの男が織り成すドタバタバトルコメディ。素敵な日々が今始まる……かもしれない。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

片隅の天使

mizuho
キャラ文芸
孤児失踪事件・・・巷で起こっている事件は国立書物館で働く青年シイナと深く関わりのある事件だった。 事件の知らせと同時に、ある特殊な力を持つ人間が存在する事を知る。 満月の夜、シイナは一人の少女と出会う。 すべてを癒やす力―少女は天使と呼ばれる人間だった。 力を持つがゆえに運命に翻弄される少女、その力を求め事件を起こす者― それらはシイナの過去とも重なり事件は大きく動き出す。 少女が年の離れた大人の男(ぶっきらぼうで素っ気ない)に守られたり 大事にされたりするのが大好物です・・・。

処理中です...