上 下
29 / 36

ドアを回す人

しおりを挟む
ある日、深夜の遅い時間に、私は一人で家にいました。外は暗く、静かな夜でした。
突然、玄関のドアがガチャンと鳴りました。

私は驚き、ドアを開ける勇気もありませんでしたが、確認しなければならないと思い立ちました。
慎重にドアに近づき、のぞき穴から外を覗いてみると、何も見えませんでした。

その時、再びドアがガチャンと私の目の前で動きました。驚きすぎて声すら出ませんでした。
覗き穴を見ている範囲に人影などありません。なにかが私の家に入ろうとしているのかと思うと、背筋が凍るような感覚がしました。

私は恐怖に耐えきれず、部屋に戻り布団を被りました。

しばらくして、ガチャガチャとなんどかドアノブが動く音がした後、ドアが開く音が響いてきました。私は恐怖に打ち震えながら、布団を深く被ります。

すると、暗闇の中から足音が聞こえてきました。それは重々しい足音で、濡れているような音が混じっています。私は心臓が飛び出るほどの恐怖に襲われました。

足音は次第に近づき、私のいる部屋の扉の前で止まりました。私は息をひそめ、何が起こるのかを待ちました。そして、ゆっくりとドアノブが回され、部屋に入る音がしました。

私は恐怖に支配されながらも、勇気を振り絞って部屋に入ってきた人物を見ました。しかし、そこにいたのは、げっそりと痩せこけた私自身の姿でした。

驚きと恐怖で声を出すこともできず、私は自分の目を疑いました。ありえないことだと思いましたが、それは現実でした。

自分の姿は私を見つけたようで、無言で私を見つめ、じわりと笑いました。口が裂けそうなほど口角を上げて笑うその笑い声は冷たく、不気味でした。私は絶望感に包まれ、自分が何故こんなことになっているのか思い当たらず頭の中には疑問ばかりが浮かんできました。

そして、私の姿は徐々に消えていきました。私は自分がどこにいるのかもわからないまま、闇に包まれました。その後、私は二度と元の世界に戻ることはありませんでした。

しおりを挟む

処理中です...