『ショート怪談』訪れるもの

外の騒音

私の家で久しぶりに友人と一緒に飲んでいたら、今日はやたらと外が騒がしい。
「酔っぱらいが何か言い争いをしてるみたいだな」と私は言った。
「んあ、そうだねぇー」
友人はテレビの音量を上げて、無視するようにした。
私もそれに従って、ビールを飲みながらテレビを見た。しかし、外の騒音はどんどん大きくなって、まるで家の前でやっているかのようだった。
私はカーテンを開けて、外を見てみた。すると、そこには信じられない光景が広がっていた。

外には何百人もの人間が集まっており、それぞれが血まみれの姿で互いに殴り合っていた。その中には私の知っている人も何人か見えた。彼らはまるで狂ったように暴れており、死んだ者や倒れた者には容赦なく踏みつけていた。その様子はまるで地獄絵図のようだった。

私は恐怖に震えながら、友人に声をかけた。
「やばいって！外が大変なことになってるぞ！」と私は叫んだ。
しかし、友人はテレビに夢中で、私の声に気づかなかった。私は彼の肩を揺すって、もう一度言った。
「見てくれよ！外が・・・」
瞬間、突然テレビの画面が真っ暗になった。そして臨時ニュースの赤い文字が画面に表示された。

「臨時ニュースです。本日午後九時頃から、全国各地で大規模な暴動が発生しています。原因は不明ですが、暴徒たちは無差別に他人を襲撃しており、多数の死傷者が出ています。警察や自衛隊は出動していますが、事態は収束せず、むしろ拡大しています。市民の皆様は、絶対に外出しないようにお願いします。また、窓やドアをしっかりと閉めて施錠し、不審者や暴徒に注意してください。このニュースは随時更新します」

私と友人はテレビの声に呆然とした。これは一体何なのだろうか？
世界はどうなってしまったのだろうか？私たちは互いに顔を見合わせて、言葉も出なかった。

そんなとき、家のドアが激しく叩かれた。
「開けろ！開けろ！助けてくれ！」
という声が聞こえた。その声は私の隣人だった。パチンコで勝った日にはお菓子をくれたりする人で、飲みに行ったこともある。
とにかく、助けた方がいいのではないだろうか。私はドアに近づこうとしたが、友人に止められた。
「開けちゃダメだ！あいつも暴徒かもしれない！」と友人は言った。
しかし、私は彼の言葉に耳を貸さなかった。彼を助けなければならないと思った。

私はドアの鍵をあけて、彼を招き入れた。すると、隣人は喜んで飛び込んできた。
その後ろからどかどかと血まみれの男たちが迫ってきたので、急いで扉を閉めてカギをする。
「ありがとう！ありがとう！助かったよ！」
と彼は言った。

しかし、その口元からは血が滴っており、目は白目をむいて、明らかに正常ではないと一目でわかった。
彼は私に抱きついてきたが、それは感謝の抱擁ではなかった。彼は私の首に噛みついてきたのだ。

部ちりと嫌な音が首からした。多分動脈が切れたのだろう。
私は悲鳴を上げたが、もう遅かった。友人も彼に押し倒され手に持っていたナイフを振り上げている。

その後のことは、誰も、知らない。