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花柄のシャツ

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 自分が引越しする前の話なんだけど、未だに忘れられない話があってさ。

 その日は引越しの準備もあって慌ただしく、気分も高揚してた。新しい生活が待っているという期待感が胸を膨らませていたんだ。
 しかし、その晩、バイトに行く前に洗濯機を回していたら、不思議なことがあったんだ。

 洗濯物を取り出すと、見たこともない服が混じっていた。白いシャツに淡いピンクの花柄が施されており、どこか懐かしい気持ちになる服だ。
 普段自分はシャツとか花柄を着ないし、貰った記憶もない。間違いなく、自分のものじゃない。
 どっかで混じった?なんで??

 不思議な気持ちと共に、その服を手に取ってみる。その瞬間、不気味な感覚が背筋を伝って走った。何かが違う。手触りは普通なのに、触ってるところがすごく気持ち悪い。とても静かながらも、何かが存在するような気配を感じたのだ。

「まさか、この服に怨念でも宿ってるとか?」

 そんな妄想が頭をよぎるが、自分でも馬鹿げたと思い直す。だが、なぜか不安感は拭えなかった。

 バイトに行く時間が迫っていることを思い出し、急いでその服を畳んで戻そうとする。しかし、畳もうとすると、なにか音が聞こえて来たんだ。

 服が畳まれる音に合わせて、ゆっくりとした歩みの音が聞こえてくる。足音が廊下から近づいてくる。

「誰かが来てる…?」

 不安に駆られながらも、確証を得るため、ドアの向こうに耳を近づけた。すると、その時だった。

「返して貰えます?」

 不気味な声が扉越しに耳に飛び込んできた。響き渡るその声は、まるで地獄からの使者が語りかけるようだった。その声には、何かしらの恨みや怒りが混じっているような気がした。

 恐怖に襲われる中、その声に応えることができず、動けなくなってしまった。腰が抜けてたんだと思う。

 すると、急にドアが開いた。鍵はかけてたはずなのに、何事もないみたいに開いてさ。その瞬間、冷たい風が通り抜けるような感覚がした。何かが私に近づいてくる。息が詰まり、心臓が高鳴る。

「助けて…誰か助けて…!」

 叫びたくても声が出ない。恐怖の中、私はただただ身を守ることしかできない。そして、その闇に包まれたまま、私は意識を失ってしまった。

それで目が覚めたら夜でさ、自宅のベッドに横たわっていた。全身に冷や汗が滲んでおり、頭がぼんやりとしていた。
ヤバって思って時計みたらバイトのシフトも終わってる時間でさ、電話したんだ。

「ん?どしたー?忘れ物でもしたの?」

店長の気の抜けた声に訳わかんなくなってさ、話聞いたら私が普通に来て、普通に仕事して帰ったらしい。

洗濯物も全部片付いてたし、着替えまでしてた。ただ、あの花柄のシャツは無くなってた。

 それ以来、私は洗濯物たたむのが怖くなってさ、引越し先での新しい生活では全部干しっぱなしにしてる。


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