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小包
しおりを挟む私は玄関のチャイムが鳴った音にビクッと身を震わせた。
自宅のアパートでのんびりと過ごしていたので、突然の来客に戸惑いながらも玄関に向かった。
「誰かしら…」
心の中で疑問を抱きながら玄関を開けると、そこには小さな小包みを一つだけ持った男が立っていた。彼は黒いスーツに身を包み、真っ赤なネクタイが目立っていた。
「どちらさまでしょうか?」私は男に尋ねると、彼は静かに小包を私の方に近づけた。
「お届け物です」
男は淡々と答える。
「川村さんですね。小包みをお届けに来ました」
私は少し戸惑いながらも、手を差し出して小包みを受け取った。その瞬間、何か違和感を感じた。小包みはなんとも言えない重さを持っているようだった。
「えっと、送り先はどこから?」私は尋ねると、男は微笑んだ。
「きっと、届け先はすぐに見つかるでしょう。では、お疲れ様でした」
男はそう言って、一礼して去っていった。
私は不思議な感覚に包まれながらも、玄関を閉めて中に戻った。
「何だろう、この小包みは…」
私は興味津々で小包みを開くことにした。しかし、言い知れぬ不安がよぎる。心の奥底で、何かが起こる予感がした。
ゆっくりと小包みの包装紙を剥がしていくと、そこには黒い布に包まれたものがあった。寮の手のひらに収まるような、そこまで大きくないものだ。私は少しの勇気を振り絞り、その黒い布を取り除いた。
すると、中には人形が一体だけ入っていた。それは、まるで実物のようなリアルな造りだった。しかし、その表情は不気味で、どことなく嫌な感じがする。
「なんだこれ…」
私はつぶやきながら、人形をじっと見つめた。すると、突然、その人形がぎょろりと私の方を見た。
「ひっ!」
驚いて取りこぼした人形が、地面に落ちる。
ボトリと人形らしからぬ重く柔らかい音がした。
「あっ…」
すごく、嫌な感じがする。どんどん視界が狭まって、世界が黒いものに包みこまれていくような感覚に襲われた。
人形から目が離せないまま、じっと固まったような空間の中で、人形がゆっくりと起きあがりだした。
「嘘…」
コツコツコツ…と人形の足音が部屋中に響き渡った。私は震える手で後ずさりし、どうしていいか分からなくなった。
「止まって…!」
私は叫びながら、逃げ出そうとしたが、人形は私に向かって近づいてくるばかりだった。
「助けて…!」
私の叫び声は部屋中に響き渡るが、誰も助けてくれる者はいなかった。人形は私に迫り、その手を伸ばしてきた。
私は絶望の中で叫び続けた。しかし、その叫び声はただの虚しさだった。人形の手が私の首に触れる瞬間、私の意識は闇へと飲み込まれていった。
ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと、暗闇の中にいた。
やっと光に出会ったら、私の顔があった。
驚いた顔で私を落とした私。
なんでそんなことをするの、なんで離れていくの。
もっとよく顔を見せて、もっとそばにいて。
闇の中は、寂しいよ。
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