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エピローグ おまけのお話
しおりを挟む「あけましておめでとう。今年もよろしく」
カチンとシャンパングラスを重ね合わす。透き通った黄金色のシャンパン。泡がグラスの淵へと上がっていく。
僕は舌を湿らす程度にグラスを傾けた。美味しい……もうひと口。
「こちらこそよろしく。てか、本当に4ヶ月、来なかったな」
僕にとって激動の1年が暮れ、新しい年が明けた。三が日が過ぎた頃、僕はようやく城南邸の門をたたくことに。
年末年始は小学生以来の家族水入らず、ばあちゃんの家で過ごした。これまた久しぶりの猪鍋が美味かったこと。
もちろん勉強は普段通りしてた。僕にしてみれば、そばに両親やばあちゃんがいるだけで、十分だったから。
で、東京に帰ってきて、今ここ。晄矢さんの部屋のソファーで寛ぎ中だ。
目の前には海老やかまぼこ、数の子といった正月料理を彩りよく盛り付けられたお皿、それにシャンパンが置かれている。
「月に1回は事務所で会てったじゃん。それに僕は今年、予備試験一発合格を目指してるんだから、我慢して」
「月に1回だけだぞっ! まあ、それは……わかってる。俺も協力してるだろ?」
確かに。お手製の問題集をメールで送ってくれてる。春には一次試験が始まるから、心からありがたい。
「うん、ありがと」
さっき、リビングで祐矢先生や輝矢さん達に挨拶をしてきた。事務所はもう明日から始まるみたいで、彼らの正月休みもあっという間だったに違いない。
「今日は泊まってくよな?」
晄矢さんも明日から仕事なのに、腰をそわそわさせ、こんなこと懇願してくるんだ。
国立大のキャンパスでは絶対見かけない、どこぞのブランドセーターがいかにも御曹司な感じでなんだか笑えてくる。
「なに笑ってるんだ?」
「え? ううん。晄矢さんがおねだりしてるって思って」
「俺だってねだるときはあるよ。特に涼には……ねだってばかりだな」
へへっと照れくさそうに笑って頭をかく。
いつものスーツにネクタイ姿は凛々しいしカッコいい。でも、こんな仕草もなんだか愛おしいや。けど……。
「でもごめん。泊まらない」
「ええー!? 俺がこんなにお願いしてるのにか?」
「これから2年。僕の正念場なんだよ。さぼるとまた1年それが延びる。そっちの方が嫌だ」
「そうだが……」
「あんまり言うと、二度と来ないよ」
まるで脅迫してるみたいだ。けど、ここはぴしっとしておかなきゃ。僕は自分の能力をわかってるつもりだ。一発合格のためには、ずるずると欲望に負けるわけにはいかないよ。
「うー。わかった。泊まりは諦める」
しょげてる。なんか、こういう晄矢さんを眺めるのってぞくぞくする。僕はSだったのかな。
「けど、今日中は遠慮しない!」
「わ、なんだよ。今、数の子……」
箸でつまんだ数の子を口に入れようとしてたのに。
「数の子なんて、後から食べればよし」
僕はソファーに押し倒される。無念だけど、箸はテーブルに戻した。
「もう……晄矢さん、盛りのついた猛獣みたいだ」
「盛りがついてんだよ。俺は……」
あっさりと認めてきた。そして熱ーいキスが降って来る。結局こうなっちゃう。Sっけも吹っ飛ぶよ。
――――でも、今日だけはいいよね? 息抜きも大切だよ。
と、いうことにしておこう。シャンパンの酔いが回ったかな。
「猛獣の俺を味わえ」
耳元で言われて、僕の心臓が跳ねる。ブルッと体が震えちゃった。
SでもMでもいいや。僕は晄矢さんの背中に両腕を絡ませる。猛獣と化した晄矢さんを存分に味わうために。
♡終わり♡
最後までお読みいただきありがとうございました!
紫紺
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