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第52話 そういう関係
しおりを挟む「あれは君を案じたわけではないからな。城南家の当たり前を言ったまでだ。勘違いしないように」
コンペの翌日、城南家のリビングで祐矢氏に出くわした僕は、かように言い渡された。代議士の命令に反してくれたお礼を言った返しがこれだ。まあ、それを文字通り受け取りはしないけど。
――――まだまだ認めてもらったわけじゃないようだ。とはいえ、認められたら、晄矢さんが事務所を継ぐことになる? あれ、なんか変だな。僕の役目は輝矢さんが許されるまでの時間稼ぎだったはず。
祐矢氏は、僕らが嘘の関係だと疑ってる。『そういう関係』でないと調べさせてるんだ。
でも……この間の大浴場で『そういうこと』に近いこと、しちゃったし……。
「なににやけてるんだ、君は。もう直に試験だろ!? 成績も見せてもらうぞ!」
「は、はい。承知しました」
僕は慌てて顔を引き締め、一礼して自分の部屋に戻った。
てか、考えてみたら、どうして成績表を提出せにゃならんのだろう……。これでは書生扱いだなあ。
――――でも、恥ずかしい成績を取るつもりはない。これはこれで励みになるし、前向きにとらえればいい。
僕らの仲を認めても、祐矢氏的には跡継ぎとして不適格なのは間違いない。やはり、ここは諦めて輝矢さんを受け入れてもらうしかないはずだ。
僕らが本当の恋人になったのは悪いことじゃない。僕はそう考えることにした。
木曜日から一週間。大学はテスト期間に入った。科目によって筆記試験とレポート提出に分かれるんだけど、レポートは既に提出済み。筆記もまずまず問題なかった。
レポートについては晄矢さんがちょくちょくアドバイスしてくれたおかげで満足できるものが出来た。やっぱり現役弁護士は凄いよ。
これを家庭教師や塾に換算するとヤバイ金額が発生しそうだ。
「それは、クラブでの接待とゴルフコンペでの働きで十分おつりが来るよ。俺や親父の我が儘のせいで成績が落ちたら申し訳なさすぎだからな」
と、晄矢さん。あれしきで勉強時間が足りなかったとは思ってないけど、色々あり過ぎて脳内がパンクしそうになったのは本当だ。
主に……晄矢さんとのことなのは本人は気づいてないかも。
早ければ夏休み前にもこの不思議なバイトは終わると思っていた。けれど、その気配すらない。
輝矢さんの居場所はわかっているようだけど、連絡を取り合ってる感じはないし。
――――すぐ終わると思った僕のバイト。嘘が本当になって、描いていたエンディングも変わってしまったかもしれない。
『フリ』じゃなくなったわけだから、バイト代はもういらないと言ったのだけど……僕の時間を拘束してるのと、事務所での仕事を合わせても正当な報酬だと晄矢さんに却下された。
かといって、このままずっと晄矢さんの部屋に居続けるわけにはいかない。そんなことはわかってる。わかってるけど……。
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