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第46話 ミッションインポッシブル
しおりを挟む急遽決まった話ではなかったようだ。明日のゴルフは、既に何日も前から決まっていた。
飲み会で接待してすぐ、今度はゴルフ接待かとあきれたがそうでもない。業界人のコンペらしい。
丸藤証券のメンバーは昨夜の三人トップと祐矢氏の四人だったのだが、脇田副社長の都合が悪くなったと(ほんとかよ)。
それで、晄矢さんをピンチヒッターに指名した。そこまでならわかるが、なぜか僕をキャディーとして参加してほしいとオファーしてきた。
「祐矢様が相模原様のことをお話したら、是非にと言われたとのことです。藤堂社長も黛副社長もたいそう相模原様のことをお気に召されたようで……」
そこでどうして僕の話をするんだよ、あのおっさん。全く信じられない。
それに、コンペなら少なからず優勝とか順位がかかってくる話だよ。キャディーだってちゃんとした人がやった方がいいに決まってるのに。
「立花さん、今親父どこにいる。勝手なことしやがって!」
立花さんからは部屋で聞いた。珍しくくつろいでてた晄矢さんはわかりやすく激怒している。
「旦那様は打ちっぱなしに出かけられました」
「な、追いかける。涼、心配するな、俺……」
「待って、晄矢さん。あの……大丈夫。僕、やるから」
立ち上がり、今にも部屋を飛び出そうとした晄矢さんを呼び止める。どうしてだかわからないけど、この挑戦を受けて立ちたくなったんだ。そうしなきゃって思った。
「何言ってる。貴重な休みだ。涼は勉強しなくちゃ……」
「それも心配ない。元々僕は限られた少ない時間でやってきたんだ。ちゃんとやってみせるよ。立花さん、詳しいこと教えてください」
立花さんはちらりと晄矢さんの顔色を伺う。
「今すぐ資料などお持ちしますが……」
「立花さん、ごめん。少し二人にしてくれるかな」
晄矢さんの言葉に、立花さんは頭を下げて退室した。
「涼、本気か? どう考えても親父の……」
「うん、そうだね。でも、断ったら事務所にとっていいコトじゃないよね。藤堂社長さんたちに気に入られてるってのはどうかわかんないけど」
「それは間違いなく気に入られてるよ」
晄矢さんは僕の両手を握って見つめる。本気で心配してくれてるのが伝わって来た。
「うまくやれるかどうかはわからないけど、誠意は尽くしたい。祐矢氏にもそこのところわかってもらいたいんだ」
「誠意なんか伝わるかよ」
吐き捨てるように晄矢さんが言う。それは少し、僕は悲しかった。
「バイトのつもりでいたけど……今は少し違う。もちろん輝矢さんたちが許されたら、僕はいつでもこの屋敷から出て行くけど……祐矢氏には認めてもらいたいって思ってる」
「涼……おまえ、出て行く必要はない。輝矢が許されたって、ここに居ていいんだ」
そうは行かないよ。僕は首を横に振る。
「ありがと。それはまた違う話だ。僕は、晄矢さんが好きだから。晄矢さんの選択は間違いではないって思ってほしいんだ。それだけ」
と言うか、やっぱり意地もある。晄矢さんは何も言わずに僕をテーブル越しに抱きしめた。
「俺は……おまえを絶対守るから。離さないから……」
耳元で誓う声は、少し震えていた。
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