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第19話 朝シャンの罠
しおりを挟む気持ちよく朝シャワー&シャンプーを済まし、鼻歌まじりにバスルームから出た。部屋はまだシンとしてる。焦った僕は鼻歌を取りやめ一転、足を忍ばせ寝室を覗いた。
晄矢さんはまだ寝ている。昨日は6時に目覚ましが鳴ってたから、もうすぐかな。今の彼はまたまっすぐに天井を向き、ほぼ大の字になって寝ている。
その時、よせばいいのにいたずら心が湧き出てしまった。またまた忍び足でベッドに近寄り、そっとよじ登った。
――――僕も寝顔を拝見。なんちゃって。
静かに眠る晄矢さんはどこかの彫像のように綺麗だ。整えてあるのだろうけど、形の良い眉に閉じられた双眸からは長いまつ毛がかすかに揺れている。
そして高くて筋の通った鼻。男らしい口元。あれだけ忙しいのに肌艶もいい。僕は思わずふっとため息をついてしまった。
その瞬間、目の前で閉じられていた瞼が突然開いた。
「えっ!」
「こらっ!」
「うわっ!」
跳ねるように起き上がった晄矢さんに僕は腕を取られ、あっという間に体が入れ替わる。僕はベッドに背を沈め、その目の先には晄矢さんが不敵な笑いを浮かべていた。
「寝顔を覗いたな」
「ご……ごめんなさい」
別に謝ることではないが、勢いで口からついて出た。晄矢さんは笑いをかみ殺すような顔になる。
「ふふっ……あ、シャワー浴びてきたのか」
「う、うん。一度やってみたくて」
「一度? そんなの毎日やればいいよ。朝シャワーは俺も好きだよ」
「そ、そう」
「髪が濡れてる……シャンプーがいい匂いだな……」
晄矢さんは生乾きの僕の髪に触れ、指で梳いた。その仕草に僕の心臓はバクバクしっぱなしで息苦しいほどだ。髪を見ていた視線が再び僕の目に移って来ると、更に鼓動が激しくなる。
「涼……」
晄矢さんが唇を半開きにして止める。何か言おうとして躊躇っているのだろうか。僕はごくんと息を呑む。
ルールルールール♪
そこでスマホが昨日と同じメロディーを奏でだした。6時だ。晄矢さんがふっと小さなため息をつく。そして僕の上から体を離しスマホのタイマーを切った。僕も体を起こす。
「さて、起きるかあ。俺もシャワー浴びよ」
ベッドからさくっと下りると、さっとパジャマを脱ぎ捨てた。男の目から見ても惚れ惚れするような肉体が露わになる。
僕はその後姿をぼんやりと見送り、崩れるように再びベッドに身を沈めた。
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