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第2部

第84話 新たな試練

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 北海道に来てから4日目。温泉を堪能してから部屋で飲んでたら、パープルシャドウのマネージャー、青山君から連絡があった。僕らの事務所で聞いたのか、北海道で遊んでいることを知っていた。

「来週、パープルシャドウでライブやるんですよ。遊びに来ませんか?」

 場所は札幌と函館の2か所。いつも見に来てくれるから、出来れば日程合わせたいな。佐山に言うと、もちろん行く気満々だ。

「あいつらのライブ、ずっと行けてなかったからな。邪魔させてもらうよ」

 それをそのまま伝えると、青山君はもちろん、メンバーのみんなもすごく喜んでくれたみたいで、僕だけなく佐山にもメッセージが届いた。

「俺に1、2曲演奏しろとか言ってくるんだが」
「いいんじゃない? ギターもあるし、目瞑っても弾ける曲練習しておけよ」

 ギターはいつものアコギだが、旅行と言えどさすがにこれだけは手放すことはない。今回は車移動だから、荷物にもならなくて助かるよ。

「んー。まあ、あいつらがそれでいいって言うならいいけど。あんまりいい加減な演奏はしたくないな」
「大丈夫だよ。ゲストだから気軽にやれば」
「そうか? 倫がそう言うならやってみるかな。でもゲストかあ。俺もえらくなったもんだな」

 リゾートホテルの大きなベッドの上で、あいつはギターを手にパープルシャドウの曲を弾き始める。久しぶりに聞くロックティスト。悪くない。
 あいつが丸める背中にもたれるように座り、ギターとアルコールに酔う。まるで天国にいるようだ。ふわふわして翼もはえそうだよ。調子に乗ってハミングでメロディーを歌ったりすると佐山がそれに合わせてくれた。

「倫、歌は苦手って言うけど、俺はそのアンバランスな感じ、割と好きだぞ」
「なに。褒めてないだろ、それ」
「誤解だっ」
「わっ……」

 ギターをベッドに放り投げて、佐山が僕に襲い掛かってくる。倒れながらもグラスから酒が零れないように、なんとかサイドテーブルに置いた。

「倫の声が好きなんだ。だからさ……」
「はいはい、わかってるよ……」

 口角が上がったままのあいつのエロい唇が僕の視界を塞ぐと、そのまま口づけを交わす。少しビールの味がする。僕が飲んでたのは甘い系のカクテルだから、混ざって悪酔いしそうだな。
 そんな僕の感想もお構いない佐山は蠢く舌を入れてくる。ふうう、やっぱり体が熱くなっていくよ。

 ――――ググッググッ!

 そこでまたスマホが振動した。あれ、まだ話あるのかな。けどメールなので僕は軽く無視した。まずはお楽しみを味わってからだよね。

 けれど、僕らはまだ知らなかった。それが僕らにとって、新たな試練の始まりだったことを。





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