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第2部
第15話 披露宴
しおりを挟むマネージャー仲間の青山君がめでたく結婚した。その披露パーティーには、他のマネージャー達や彼の担当するヴィジュアル系バンド、パープルシャドウの関係者が招待された。
僕も佐山と一緒に出席。佐山は久しぶりに会うメンバー達と楽しそうにじゃれてる。余興で演奏もすることになってたので、それも嬉しいんだろう。
「おめでとうございます」
カジュアルなパーティーながら、青山君はスーツ、花嫁さんは可愛らしいピンクのドレスを着ていた。春爛漫のガーデンパーティはとても気持ちが良い。
「来てくださって嬉しいです。市原さん達はお式されないんですか? 僕で良ければ企画しますよ!」
なんて事を言う青山君。気持ちは嬉しいけど、もう僕らは披露してしまったからね、全国区で(カミングアウトのことだよ)。
「あはは、ありがとう。それより佐山はまた皆と演奏したそうだ。ライブの予定あったらゲストで呼んでやってよ」
「ホントですかっ!? それ、みんな言ってたんですよ。是非!」
社交辞令でもなんでもない。レコーディングで多忙ななかでも、この日のために練習してた佐山は本当に楽しそうだった。たまには昔のサポート役に戻るのも悪くない。このバンドとは付き合い長いしね。
余興のライブ演奏は、本物のライブさながら。みんな酔っぱらってたのもあるけど、披露宴の余興だってこと忘れてたんじゃないか。
アンコールまでやって、5曲も演奏してた。でも、青山君も新婦さんもずっと笑顔で。幸せそうだったよ。
「倫も……式とか披露宴、やりたいか?」
お酒も入っていい気分のまま、佐山は僕を求めた。もちろん僕も、あいつが欲しくて。帰宅するなり僕らはベッドの上で燃える恋人達になった。
一息付いたところで、佐山がそんなことを聞いてきた。あいつも誰かに何かを言われたのかもしれないな。
「いや。必要ないよ。それにほら、僕らにはこの首輪があるじゃないか。指輪ならぬ」
今日の披露宴に、僕らはお揃いのネックレスを示し会わすこともなく着けていった。お互いのイニシャルがトップ。イニシャルを刻む指輪と同じ理屈だ。
「俺は構わないんだぞ? 倫が望むなら……」
「なんだ。佐山はやりたいのか?」
優しさかもしれないけど、何でも僕の責任にしないでくれ。やりたいなら、そう言えばいい。いつものように。
「あ……そうだな。ごめん。俺は正直どっちでもいいんだ。敢えて披露したい人もいないしな」
「なら、それでいい」
「そうか?」
「うん。もし気が変わったら、そのときはちゃんと話すよ。だからもう、この話はやめ」
佐山は黒曜石みたいな瞳を僕に向け、柔らかな笑顔で頷いた。そのまま、両手を伸ばして布団に転がる僕を引き寄せた。
「来いよ。もっと近くに……くっつきたいんだ」
シーツの上を滑ってあいつの胸のなかに納まる。厚い胸板に頬を寄せると激しく打つ鼓動が耳の鼓膜から体内に広がっていく。
佐山の顔が見たくて見上げると、あいつも僕を見ていた。いとおしさに胸が苦しいほどだ。
僕は目を閉じてキスをせがむ。エロチックな唇が襲ってきたら、僕は夢中になって吸い付いた。
「好きだ……」
どちらからともなく告げられる愛の言葉。佐山の大きな手が僕の体を這いずる。まるで宇宙遊泳してるみたいに僕は浮遊するんだ。
本当は、おまえを誰にも披露したくない。おまえの全てを僕だけのものにしたいくらいなんだ。だって、誰にも邪魔されたくない。おまえのカッコ良さを、僕は独り占めしたいんだから。
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