112 / 208
第2部
第6話 発熱
しおりを挟む翌朝、雪が気になった僕はいつもより早くベッドから起き上がった。リビングに出てカーテンを開け外界を見渡す。
「良かった。晴れてる」
北側の屋根にはうっすらと白い雪が朝日を反射させていたけど、道路は濡れているだけだ。スマホで調べたところでは、東京の積雪も大したことは無さそうだった。
――――良かった。今日もやれそうだな。
ホッとした途端、寒気を覚えた。慌ててエアコンを付け、ソファーに置きっぱの上着を着る。
「いや、まだ全然寒いや」
ブルッと身震い、悪寒がした。僕はもう一度ベッドに戻る。佐山に暖めてもらおうなんて、ちょっとだけ思いながら。
「雪、大丈夫みたいだ」
「んっ。 そりゃ良かった。あれ、まだ早いじゃないか」
「部屋、エアコンつけたから。寒いよっ」
「俺が暖めてやる」
ベッドに戻ると佐山は僕を抱きしめてくれた。暖かい体が僕を熱くしてくれる。なんだけど……。
「おかしい。寒気が収まらない」
なんだか頭痛もする。気のせいかな。
「佐山、ごめん。引き出しに体温計あるから取ってくれるか」
「えっ!? 倫、大丈夫か? ……確かに熱いな」
佐山が僕の額に自分の額を当てる。
「よせ。風邪だとうつるから」
佐山が心配そうな表情で僕の顔を覗いてる。ごめん。こんなときに体調崩すなんて、マネージャー失格だな。
案の定、僕は発熱していた。39度近いから結構高熱だ。
「昨日、雪のなか連れ出したからだな。すまん」
しょげた様子で佐山が言う。そんな顔しないでくれ。
「大丈夫だよ。解熱剤飲んどけば治るさ。それより、うつすといけないから今日は休ませてもらうな。水口さんに電話しておくから……」
「今日はレコーディング、キャンセルしよう」
「はあ。馬鹿言うな。おまえのレコーディングなんだぞ。それに一緒にいない方がいい。おまえにうつしたくないんだ。スタジオ近くのホテルを取って2、3日そこにいてくれ」
「馬鹿はあんただ。黙って寝てろ。水口さんには俺が電話する」
そう言うと、佐山は寝室から出ていった。おまえの気持ちは嬉しいけど、レコーディングは続けて欲しい。僕のせいでキャンセルなんて嫌だよ。
熱があると知ると、急に体が辛く感じるのは何故だろう。僕は息苦しさを覚えながらベッドから起き上がり、佐山のあとを追いかけようとした。
「さや……」
あいつの名前を呼んだ……つもりだった。もう一度スタジオに行くよう言おうと思ったんだ。
「倫!!」
ベッドの脇に僕は膝から崩れ落ちた。視覚も聴覚も瞬間シャットダウンしてしまった。
0
お気に入りに追加
100
あなたにおすすめの小説
虐げられオメガ聖女なので辺境に逃げたら溺愛系イケメンアルファ辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
無自覚両片想いの鈍感アイドルが、ラブラブになるまでの話
タタミ
BL
アイドルグループ・ORCAに属する一原優成はある日、リーダーの藤守高嶺から衝撃的な指摘を受ける。
「優成、お前明樹のこと好きだろ」
高嶺曰く、優成は同じグループの中城明樹に恋をしているらしい。
メンバー全員に指摘されても到底受け入れられない優成だったが、ひょんなことから明樹とキスしたことでドキドキが止まらなくなり──!?
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
幸せの温度
本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。
まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。
俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。
陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。
俺にあんまり触らないで。
俺の気持ちに気付かないで。
……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。
俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。
家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。
そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる