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第2部

第6話 発熱

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 翌朝、雪が気になった僕はいつもより早くベッドから起き上がった。リビングに出てカーテンを開け外界を見渡す。

「良かった。晴れてる」

 北側の屋根にはうっすらと白い雪が朝日を反射させていたけど、道路は濡れているだけだ。スマホで調べたところでは、東京の積雪も大したことは無さそうだった。

 ――――良かった。今日もやれそうだな。

 ホッとした途端、寒気を覚えた。慌ててエアコンを付け、ソファーに置きっぱの上着を着る。

「いや、まだ全然寒いや」

 ブルッと身震い、悪寒がした。僕はもう一度ベッドに戻る。佐山に暖めてもらおうなんて、ちょっとだけ思いながら。

「雪、大丈夫みたいだ」
「んっ。 そりゃ良かった。あれ、まだ早いじゃないか」
「部屋、エアコンつけたから。寒いよっ」
「俺が暖めてやる」

 ベッドに戻ると佐山は僕を抱きしめてくれた。暖かい体が僕を熱くしてくれる。なんだけど……。

「おかしい。寒気が収まらない」

 なんだか頭痛もする。気のせいかな。

「佐山、ごめん。引き出しに体温計あるから取ってくれるか」
「えっ!? 倫、大丈夫か? ……確かに熱いな」

 佐山が僕の額に自分の額を当てる。

「よせ。風邪だとうつるから」

 佐山が心配そうな表情で僕の顔を覗いてる。ごめん。こんなときに体調崩すなんて、マネージャー失格だな。


 案の定、僕は発熱していた。39度近いから結構高熱だ。

「昨日、雪のなか連れ出したからだな。すまん」

 しょげた様子で佐山が言う。そんな顔しないでくれ。

「大丈夫だよ。解熱剤飲んどけば治るさ。それより、うつすといけないから今日は休ませてもらうな。水口さんに電話しておくから……」
「今日はレコーディング、キャンセルしよう」
「はあ。馬鹿言うな。おまえのレコーディングなんだぞ。それに一緒にいない方がいい。おまえにうつしたくないんだ。スタジオ近くのホテルを取って2、3日そこにいてくれ」
「馬鹿はあんただ。黙って寝てろ。水口さんには俺が電話する」

 そう言うと、佐山は寝室から出ていった。おまえの気持ちは嬉しいけど、レコーディングは続けて欲しい。僕のせいでキャンセルなんて嫌だよ。

 熱があると知ると、急に体が辛く感じるのは何故だろう。僕は息苦しさを覚えながらベッドから起き上がり、佐山のあとを追いかけようとした。

「さや……」

 あいつの名前を呼んだ……つもりだった。もう一度スタジオに行くよう言おうと思ったんだ。

「倫!!」

 ベッドの脇に僕は膝から崩れ落ちた。視覚も聴覚も瞬間シャットダウンしてしまった。




 
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