上 下
100 / 208
番外編 僕とあいつのいちゃバリな日

その4(倫目線)

しおりを挟む


 朝食のビュッフェが罪悪感半端ないので、僕らは陽が昇ってる間の暴飲暴食を避けるようにした。
 ホントにここの朝食凄いんだよ。見たこともないようなフルーツが並ぶし、パンも種類豊富(しかも甘めのが多い)。カリカリベーコンは僕の好物だし、その場で焼いてくれるオムレツが美味しすぎる。で、つい食べ過ぎてしまう。

 ということで、夜になると僕らはプールサイドのオープンバーへと向かう。ライトアップされたプールには、日焼けしたくない大人たちが、フロートに身を預けてぷかぷか浮いてる。
 そこにひときわ光を集めているのがバーだ。そこで女の子が好きそうなカクテルなんか頼むと、いつも佐山はバカにするんだよな。

「またお子様みたいの飲んでるな」

 僕はあまりお酒は得意じゃないんだよ。でも、こういうのもアルコール度数高いそうだから、気を付けないと。
 店はカウンター席ばかりが10席ほど。お客さんは、僕ら以外端っこにカップルがいるだけだ。

「そう言えば、今朝、青山君からメール来てさ」

 サラダやピザを注文して、これが僕らの夕食。フードはホテルビーチにあるレストランから持ってきてくれる。昼間は結構アクティブにしてるからお腹はすくんだよね。佐山はグラス片手にもうぐいぐいやってる。

「へえ、なんて?」

 あいつはビール好きなんで、シャンディガフとかビールをベースにしたカクテルを中心に飲んでる。といっても、最後は結局ビールになるんだけどね。

「うん、例のあの変態プロデューサー、なんか捕まったらしいよ」

 僕らを嵌めようとして嵌めそびれた柏木P。性懲りもなく悪さをしていたらしく、ホテルで若いシンガーといるところを連行されたらしい。
 なにかと情報通の青山くんによると、起訴はないかもだけど、業界的にはアウトだろうとのことだった。

「ふうん。懲りないおっさんだな」

 と、何故か気のない反応。でも、僕は見逃さなかった。あいつの口角がふいって上がるのを。

 ――――佐山のやつ。まさかなにかやったのか?

 佐山は僕があの下衆に拉致される瞬間を録画していた。例の怪しい薬も奪ってたはずだ。

「あの、さやま……」
「んな話はどうでもいいや。乾杯しようぜ。今日も可愛い倫に乾杯!」

 僕の言葉を遮るとグラスを掲げる。僕が小さくため息をつきながらグラスを持つと、今度は空いてる手で僕の顎を掴んだ。

「キスする」

 言い終わる前に、いつものセクシーな唇を僕のそれに軽く触れさせた。

「な、なんだよもう」

 僕はちょっとだけ小さくなって周りを見渡す。バーテンのお兄さんの口角がひくついている。見たな……。向こうのカップルはお互いに夢中で気が付かなかったみたいだ。

「ピザの味した」

 あいつが舌で唇を舐めて言う。恥ずかしいな、もう。

「おまえのはビールの味だったよ」

 お返しとばかりに僕。ちょっと触れただけだから味なんかわかんないけど、息はビールだった。

「え……駄目か? 嫌だったか?」

 すまなそうに佐山が言う。何を今更。

「馬鹿……駄目じゃないよ。嫌でもないから」

 僕はまた、あいつの黒曜石みたいな瞳を見ながら答える。おまえがこんなに好きなのに、何が嫌なもんか。

「俺も……何味でもいい」

 そう言うと、またキスをしてくる。今度はしっかりと味を確かめるように舌を絡ませて。
 僕は願う。バーテンのお兄さんもカップルの二人も、本能に忠実な僕らをどうか見逃してくださいって。


つづく

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

処理中です...