上 下
88 / 208
第1部

第82話 やめてはいけない。

しおりを挟む


 正月明けの旅行は散々考えてバリ島にした。ホテルなんかも僕が決めた。ここで佐山には十分な充電をしてもらうつもりだ。いい刺激になるといいな。

 クリスマスライブまであと一週間。リハーサルも残すところあと一回になった。今日、僕らは会場の最終チェックに来ている。

「チケットは800枚完売です。当日はオールスタンディングで行きますから」
「了解です。非常口とか、そういうのはきっちりお願いしますね」

 このライブハウスキャパでは最大値だ。大切なイベントであるクリスマス、佐山のライブを選んでくれたことに僕は感謝する。でも、僕は自信を持っているよ。来てくれたお客さんたちが満足してくれるって。

「倫、当日あんたはどこにいる?」
「え? ああ、多分舞台袖にいるよ。ちゃんと送り出してやるから」

 楽屋からステージに向かう通路を抜けると、舞台袖に出る。そこでは音響さんたちが機械とともにいるスペースがあって、その横に僕らスタッフが控える場所がある。

 ライブハウスの場合、大抵それが狭いけれど、まあ、椅子も置いてあったりで(座らないけど)、僕はいつもそこで佐山たちの演奏を見ている。
 あってはならないことだけど、メンバーの誰かが倒れたり、お客さんがステージに上がってきたりというアクシデントに備えているんだ。でも、なんでそんなこと聞くんだろう。いつものことなのに。


 僕らは旅行の準備も兼ね、西急ハンズに寄って買い物してから家路に着いた。海外旅行なんて付き合ってから初めてだ。自ずと話題はその話になる。リビングのテーブルにもガイドブックが何冊も広げられていた。

「水着もう一着買っていこうか?」
「あ、それなら現地で買おう。いい店あるんだ」

 僕はまず、海辺のヌサドゥアに宿を取った。そこの近くにはショッピングモールがあって、何でも揃うんだ。ホテルにもあるけど、高いからね。

「太らんようにジム行かんとなぁ。泳ぐだけじゃ足りんよな」
「そうだな。ホテルのジム、毎日一緒に行こう」
「うんうん。そこのシャワー室はどんなかな」

 また悪いことを考えているな。

「シャワーは部屋にもあるぞ」
「なんだよ。ふふん、何考えてるんだ?」

 ヤラシイ表情で僕を見る。目が水平の三日月になってる……。

「おまえと同じことだけど?」
「それは相当スケベだな。へへっ」

 何考えてんだよ、おまえは。呆れた表情でいると佐山が背中にもたれかかってきた。

「ううー。俺は妄想だけでもう逝きそうだ」
「それは簡単でいいな。遠慮しなくていいぞ」
「なんだよ。冷たいな……」

 僕の耳タブを軽く齧ると、舌を入れてくる。

「こら……」
「感じるだろ? ほら……ほら……」

 あいつの手が僕の感じるところをまさぐりだす。首筋を吸血鬼みたいに軽く食み、僕を挑発した。

「やめ……」
「ん? やめる?」

 悪戯っ子のように尋ねるあいつに僕は言う。

「ばか……やめるなんて許さない……」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

幸せの温度

本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。 まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。 俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。 陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。 俺にあんまり触らないで。 俺の気持ちに気付かないで。 ……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。 俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。 家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。 そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?

ショタ18禁読み切り詰め合わせ

ichiko
BL
今まで書きためたショタ物の小説です。フェチ全開で欲望のままに書いているので閲覧注意です。スポーツユニフォーム姿の少年にあんな事やこんな事をみたいな内容が多いです。

娘の競泳コーチを相手にメス堕ちしたイクメンパパ

藤咲レン
BL
【毎日朝7:00に更新します】 既婚ゲイの佐藤ダイゴは娘をスイミングスクールに通わせた。そこにいたインストラクターの山田ケンタに心を奪われ、妻との結婚で封印していたゲイとしての感覚を徐々に思い出し・・・。 キャラ設定 ・佐藤ダイゴ。28歳。既婚ゲイ。妻と娘の3人暮らしで愛妻家のイクメンパパ。過去はドMのウケだった。 ・山田ケンタ。24歳。体育大学出身で水泳教室インストラクター。子供たちの前では可愛さを出しているが、本当は体育会系キャラでドS。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

【完結】(R18)先生、今日のレシピはなんですか?

紫紺(紗子)
BL
身長176cm、甘いマスクの料理研究家 城山祥(しろやましょう)。 28歳のイケメン料理家が満を持して始めたのは、社会人男性限定の料理教室だ。 そこには老若合わせて8名の男たちが集う。現職の刑事や弁護士にエリート会社員、定年間近のおっさんやら個性豊かな面々だが、なかには動機が不純な奴らもいて……。 無自覚小悪魔キャラの主人公と彼に振り回される男性達との恋愛模様。キッチンスタジオで繰り広げられる彼らの奮闘をお楽しみください。 ※長編というより中編。 ※エロ薄め。 ※小説内のメニュー、レシピは個人レベルのものです。知識は素人ですのでご承知おきください。

処理中です...