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第1部
間奏話<佐山目線>好きなタイプ
しおりを挟むミニアルバムを出すにあたって、俺の仕事が今までと様変わりした。最も変化したのはプロモーションをすることだ。今までは他人の作品を助けてただけだから、俺は現場に行って演奏して帰ってくる。それだけだった。
楽曲提供にしてもちょっと助言することはあっても、提供した相手が好きにすればいいというのが俺のスタンス。細かいことは気にしない。誰に提供するかで、そこのところはある程度考えてるから問題ないんだ。
なんで、人前で話をしたり、写真を撮られたり、慣れるまで大変だった。大体そういうのが嫌だからサポートしてたんだからな。結構なストレスだったよ。
それでも、倫と話し合って決めたことだし、自分のやりたい音楽をやれるっていうのはそれ以上に得るものがあった。毎日楽しいし、やりがいもある。倫は俺のことを考えて仕事を選んでくれてるし、何よりあいつが嬉しそうだ。
プロモーションでは、深夜ラジオや雑誌でのインタビューが欠かせない。で、その中でいっつも聞かれるのがこの質問だ。
「佐山さんはギターだけでなく、男の色気満載なルックスからも、女性人気が凄いんですよね」
「はあ」
なんだ、その男の色気って。そんなもの、俺は纏ったつもりはない。大体女性ファンの存在なんて、俺はあんまり感じたことないけどな?
「佐山さんの好きなタイプってどんな方ですか?」
うちの有能マネさんからのお達しで、交際の有無については質問NGになっている。多分俺が正直に言ってしまうのを恐れてるんだろな。
なので、『好きなタイプ』というのが、『好きな食べ物』なりに聞かれるんだよ。そんなことに興味のあるやつが俺のファンにいるとは思えないのにな。
「えっと。見た目は高身長で筋肉質のクールビューティです」
まんま倫だ。
「は、はあ。なるほど、女っぽい感じより、中性的な雰囲気の方がタイプってことですねっ」
中性的というか、男性だけどな。でも、こういうインタビューの後は、必ず倫からお小言が。
「あんなの、適当でいいんだよ。その……僕に遠慮しなくていいから」
「俺は嘘つくの嫌だから」
倫が頬を染めて伏し目がちになるのを俺は見逃さない。そんな時は、すぐにキスをする。
俺から視線を外す倫の顎をクイって持ち上げて、花びらみたいな唇を俺は食む。あいつの舌を絡めとると、あいつは喉の奥で喘ぎだす。それがもうたまらなくて。あ、涎出た。
たださ。あまりに忙しくて、二人の時間が減ってしまったのは悲しいよ。
「いつも一緒にいるじゃないか。同じことで喜んだり興奮したり、僕はそれがすごく楽しいし嬉しい。それに、おまえとの時間は濃密になったと思ってるよ」
なんて倫は言うんだ。確かに俺はあいつを抱く時、今までよりずっとずっと真剣だ。
今までが不真面目ってわけじゃない。俺はいつだって本気だから。でも今は、これを逃すと次いつかわかんないって勢いであいつを抱いてる。それを倫はわかってるのかな。
「ま、待って……そんなに焦るなよ」
「焦ってない。あんたこそ焦らすなよ」
俺があいつの体に身を埋めて愛撫をしてるとき、ついつい焦って急いでしまうのは俺もわかってる。
でも、俺はあいつが好きで仕方ないんだ。倫といつも繋がっていたい。そして繋がっている時が俺は一番安心するし、幸せなんだ。
「あふっ。ううっ……はあっ」
俺の腕の中で喘ぐ倫。俺が腰を動かすごとに、切なそうな声を上げる。深く突いてもいいかな。俺をもっと感じて欲しいんだよ。
「ああっ……いい……さやま……」
俺の名を呼ぶ倫の唇を俺は慌てて塞ぐ。どうしてこんなに可愛いんだろう。誰にもこいつに触らせたくない。俺だけが棲む世界に閉じ込めたい。俺だけのものだ、倫は。
どんどん猟奇的な気持ちになっていく。俺、どうにかなっちゃいそうだ。
「おまえになら監禁されても幸せだ」
倫は俺にそう言った。きらきらと星みたいに光る瞳に、俺は魅せられる。
それで俺は気が付く。俺のほうこそ、倫の虜なんだと。俺は身も心もあんたに捧げたしもべだったと思い知らされるんだ。
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