49 / 208
第1部
第45話 沖縄編 4
しおりを挟む陽が落ちる前に、僕らは水着になってホテルのプライベートビーチで遊んだ。撮影のクルーはまだ戻っていない。シュウさんは、夕焼けをバックに撮影するらしい。やはり主役は大変だ。
「倫、絶対そのTシャツ脱いだらだめだぞ」
僕らはこの間買ったばかりの水着を着ているのだけど、佐山はそんなこと言ってくる。全く、誰が僕の裸なんか見たいと思うのか。
「わかってる。日焼けするの嫌だし脱がないよ。おまえも日焼け止め塗っとけよ」
やはり南国沖縄の太陽熱は本土のそれとはけた違いだ。以前南の島で痛い目にあった経験がある僕は、そこのところ慎重なんだ。
しかし、折角買った水着を無駄にしなくて良かった。この後の打ち上げもプールサイドでやるとのことだから、このままでも大丈夫だろう。
「市原さん、今度私が撮る映画に出演しませんか?」
すっかり陽が落ちてから始まった打ち上げ。プールサイドでバーベキューだ。さすが売れてる人は違うなあ。例によってマネさん達と飲んでいると、監督さんがわざわざやってきた。
「いやいや、とんでもないです。僕は裏方が好きなので」
「ええ? でも勿体ないですよ!」
監督の言葉に、他のマネさん達も「そうだ、そうだ」と追随してくる。彼らはいたって無責任なのだ。
「あの演技は、役者でも難しいです。それに市原さんには透明感もあって……」
「あれ、演技じゃないです。あの楽曲の力あってのことで……。言うまでもないですが、佐山の作品だから出来たことなので。でも、ありがとうございます。少しでもお役に立てたなら何よりです」
僕はそう言うと、再びマネさん達の輪に入った。監督さんには申し訳ないけれど、僕はそんなこと全く望んでいないんだ。
「相変わらず市原さんは、佐山さんひとすじですね」
他のマネさん達から、からかわれながらも楽しく飲んでいると、佐山がやってきた。
「倫、食べてるか?」
「ああ、もうお腹いっぱいだよ」
「俺ももう食べるのはいいや。プールで少し泳ごう」
食べた分を消化したいのだろうか。このホテルのプールはラグーンのようになっていて、夜はライトアップされ、周りの植物たちとともに南国情緒あふれる幻想的な造りだ。一周すればいい運動になるだろう。
「いいなそれ。おまえ、飲み過ぎてないだろうな?」
「大丈夫だよ。明日もあると思って制御したから」
本当かよ。まあいいや、佐山は酒に溺れるタイプではない。他のモノには溺れ勝ちだけど。僕らは小学生のように、勢いよく水に飛び込んだ。
「気持ちいいな」
僕らは並んで泳ぐ。泳ぎの得意な佐山は僕を見ながら、横泳ぎをしている。僕はあいつの腕を掴んで引っ張ってもらおうとした。
「うわっ! 何するんだよ」
佐山は僕をいきなり沈めにかかる。唇から漏れる泡が、ライトニングされた水面に向かって上がっていく。佐山が僕を追いかけ、そのままキスをした。なんだか人魚にでもなったようだ。
「うげっ! 苦しい」
それもつかの間、苦しくなって慌てて顔を出した。
「ははっ! お、月が綺麗だ」
遅れて顔を上げた佐山が空を指さす。そこには夜空を独り占めしたように光り輝くレモン型の月が浮かんでいる。
「本当だ」
「倫……」
佐山が僕の耳元で囁く。大きな葉を持つ植物で、どこからも死角に入る場所だ。あいつがしたいことは手に取るようにわかる。僕もしたいから。
ゆっくりと振り向くと、佐山の彫の深い整った顔があった。セクシー過ぎる唇が視界を占め、僕のそれを塞ぐ。
「う……ん」
くぐもった声が僕の喉から漏れると、佐山の腕に力が入る。濡れた肌が卑猥さを増し、水着の下で蠢くものがまるで別の生き物のように主張を始めた。
「ああ、もう駄目だ。部屋へ戻るぞ」
佐山が唇を触れさせたまま、ため息のようにそう吐いた。
「賛成」
僕らはプールから部屋へと直行した。部屋のシャワーを浴びるのもそこそこに、ベッドの上で熱い時を過ごした。
0
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる