【第２部完結！】(R18)僕とあいつのいちゃラブな日々

第１部

第２８話 映画館

　夜の映画館でいちゃつくカップルを見ると、正直萎えた。折角楽しみにしてた映画なのにと興を削がれた感じになる。
　かと言って、混んでる時間に行くのは嫌なので、結局レイトショーになってしまうのだけれど。そういう時は、前方の席にすれば大体映画に集中できる。首が痛いくらいは我慢しないとね。

　その日は珍しく佐山と一緒に映画を見に来た。佐山はアニメ映画しか観ないので、僕に付き合うのは滅多にないことなんだ。

「つまんなかったら寝てもいいからな」
「何だよ。俺だって洋画ぐらい観るよ」

　割と有名な映画なので大丈夫かな。二年前、某英国ロックグループの記録映画を観た時は、二人して号泣した。それからその映画は何度も観た。だから今回はそれ以来ってことになる。今回は僕が好きなアクション系の映画だ。多分退屈しないだろう。

　佐山は十分もしないうちに退屈した。いや、彼だけじゃない。僕も退屈した。期待を裏切る駄作だ。この俳優さん、好きだったのにな。ちょっと残念。　
　僕は佐山のためにと一番後ろの席にしたのだけれど、やはり評判が悪いのか、客の入りは良くなかった。

　――ごめんな。予想以上につまんないな、これ。出てもいいぞ？――

　僕は小声で佐山に囁く。映画がたまに明るくなる時にしか表情すら見えない。それでも、あいつが口角を上げたのが見えた。……嫌な予感がした。

　――倫もつまらないと思う？――
　――うん。これは駄目だ。画面も暗いし――
　――そっか。でもそこはいいところだと思う――
　――え？　うわっ――

「しっ！」

　佐山が唇に指を乗せている。そしてもう一方の手は、僕の股間にあった。

　――やめろよ。何考えてる！　――
　――なにって、アレしか考えてない――

　相変わらずの変態だ。僕は周りを見る。幸い、一番後方のこの列には僕ら以外には誰もいない。前方も三席ほど前にカップルがいるくらいだ。彼らも退屈しているのか、影が重なっている。

　――よせよ……――

　あいつの手首を取るが、全くやめる気配はない。それどころか、あいつは僕にキスを迫る。塞がれた唇からはポップコーンの塩味がした。
　映画のＢＧＭは訳もなく大きく、僕が少々喘いでも誰にも聞こえないだろう。だけど時々しんとするから、油断できない。あいつの指の動きが早くなると同時に、奴はファスナーを降ろし始めた。

　――こらっ、何するんだよ！――
　――直接触って欲しくないか？――

　耳元でそう囁く。それは……それは、そうだけど……。映画館ではいちゃつかない。そんな自分的なルールを僕は佐山に犯されている。なんだか、それが悔しかった。でも、あいつが僕の膝に体を倒したとき、観念した。あいつは口でもって、僕の固くなったものを愛撫し始めたんだ。

　――もう、馬鹿野郎。ああっ……――

　映画では銃撃戦が始まっている。鬼気迫る場面なんだろうけれど、それどころじゃない。僕にも危機が迫ってる。もう我慢できなくなっているんだ。

　――佐山、続きは家にしよう。なっ？　ここでは許してくれ……――

　僕はそう佐山に哀願する。

　――ええ？　そうなの？　残念だな――

　何が残念だ！

　――おまえもやって欲しいだろ？　僕はここではやれないから、な？――
　――俺は、後で大丈夫――
　――さ、佐山、あほっ！――

　映画はクライマックスシーンになる。主人公は爆弾の解除が間に合わず、爆弾を抱えて車を走らせる。そして、崖下に突っ込ませると同時に自分は車外へと転がり落ちた。
　轟音とともに、でかいスクリーンは炎に包まれる。シアター内は爆撃音が何度も炸裂し響き渡った。

「あっ、んんっ！」

　その音に紛れながら、僕は声を漏らす。こっちの方も爆発した。