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第1部

第6話 ジム

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 アスリートのみならず、鍛えられた肉体は美しい。僕も子供の頃からずっとスポーツをしていたから、だらしない体にはなりたくない。
 佐山の惚れ惚れする肉体美を見てからは、その想いを強く持つようになった。あいつ、売れる前は肉体労働をバイトにしていたらしい。
 肉体労働って、文字通り肉体で労働するんだけど、真っ当な労働だ。あっち系ではなく建築関係のお手伝い(おかげでギターラックなんか自分で作れるようになってる)。

 最近は余裕が出てきたので、二人そろってジムに通うようになった。僕はあいつのギターを聴きながらエアバイクを漕ぐのが一番好きだ。佐山はかなり圧の強いのをやっている。ライブでは二時間ぐらいステージに立つ。体力勝負だというのが佐山の口癖。

「また満員だなあ」

 割と有名なジムのせいか、終わりに浴びるシャワー室はいつも混んでいる。でも汗を掻いた後だ。シャワーを浴びずには帰れない。腰にタオルを巻いて、待っていると佐山がやってきた。

「あ、空いたぞ、行こう」
「行こうって、僕の番だよ」
「何言ってんだよ、一緒に入れば効率的だろ?」

 真面目な顔して僕に言うんだ。でも、口角の端がふるふる震えているのが見える。

「考えてること、見え見えだぞ」
「あれ? あんたの願望だろ?」

 否定できない。僕は佐山に背中を押されてシャワー室に入る。

「でも、向こうから見えないか?」
「シャワー浴びるだけだぞ? 別にいいじゃないか」

 ……嘘を吐け。
 シャワーの扉はもちろん曇りガラスで、向こう側からは人がいるなあ、程度にしか見えないようになっている。それに加えて佐山は扉の上部にタオルをかけ、見える範囲を少なくした。

「な? これで大丈夫」

 何が大丈夫なのかわからないけれど、とりあえず汗を流そう。1m四方ほどの狭いシャワー室、うちの風呂場よりも狭い。髪を洗っていても腕が当たるし、シャワーヘッドの取り合いになるしで接触率が自ずと高くなる。

「ううーん、やっぱり狭いな」
「当たり前だ」

 佐山がシャンプーを流してそんなことを言いだす。今更何を言ってんだ。

「大丈夫。こうすれば狭くない」
「おい、こら……」

 あいつは背後から僕の体を抱きしめる。首筋に弾力のある唇が這いだす。

「あ……やめ……」
「声は残念だけど出しちゃだめ」

 わかってる。でも無理だよ。しかし予想はしてたけど、ホントにやるんだもんな。
 僕も大概欲しがりだけど、それ以上にこいつの精力って底なしだ。ま、そこが需要と供給のバランスいいんだけどね。

「声、出ちゃうよ」
「塞いでやるから。指噛むなよ」
「うう!」

 佐山が僕の口を塞ぐ。噛むなって言うと噛みたくなるのが人情というものだ。でもちょっと我慢する。

「そこに手をついて。少しかがんで」

 耳元で佐山が囁く。僕はAIのように指示通りに動いてしまう。佐山の言葉は僕にとってまるで呪文だ。

「うう……っ」

 息が上がる。佐山のものが僕を貫いていく。声が出したくて我慢できない。思わず佐山の指を噛む。「いてっ」、と佐山の声が耳朶にかかる。
 シャワーの水を吐き出す音が間断なく響き続ける。外から本当に見えないだろうか。その不安が刺激に変わる。腰を持っていた佐山の手が僕のビンビンになってるものに移ってくる。上下に擦られ、外と中の共演が始まる。

「んんっ……あっ」
 
 佐山の指は商売道具だ。これ以上噛むのはまずい。僕は咄嗟に棚に手を伸ばす。そこには乾いたタオルがある。それとわかったのか佐山がタオルを取り、僕に咬ませてくれた。
 片手が空いた佐山は僕の腰を持ち、なお一層激しく責め立ててくる。もう我慢の限界だ。

「ああううん!」

 絶頂の時、噛んだタオルから僕のくぐもった声が洩れる。

「はああ……」

 同時に僕の背中で佐山が大きく息を吐く。奴も僕の中で果ててくれたんだ。
 早く佐山とキスしたい。佐山は僕の口からタオルを出してくれた。僕は急いで反転する。やっと対面した奴の唇に熱い熱いキスをした。
 僕らの体から湯気が立ち上っている。それを冷まそうとシャワーの温度を下げる。火照った体に水は心地よく流れていった。

 その後、僕らは一人ずつ何食わぬ顔で更衣室へと向かう。エアコンの風が気持ちいい。

 やっぱりジムはここまでのフルコースに限るな。



 
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