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第70話 お楽しみの後
しおりを挟むシャワールームはかなり広く、左右に個室が並んでいる。その真ん中に、休憩するためのベンチやウオータークーラー、観葉植物等などが置かれてるスペースがある。
僕と神崎さんはそのスペースで話してる。神崎さんもトレーニングが終わったようだ。
「たった今連絡が来て。出張に行かないといけなくて。ホントに申し訳ない。この穴埋めは必ずします。年内か年明けでも……」
神崎さんは一気にまくしたてた。時間がないのかな。
「謝らなくて大丈夫です。神崎さんがお忙しいのわかってるし。また連絡して」
残念なのは当然ある。けど、そんなのイチイチ気にしたり怒ったりしても仕方ない。社会人としてあって然るべきこと。第一、神崎さんは社長さんなんだ。責任ある場面に駆けつけなきゃいけない立場だろう。
「そう? ホントに? ああ、私も滅茶苦茶楽しみにしてたんだけどね……」
ふうっと一つ大きく息をついた。ヘーゼルアイも曇って見えて心底残念そうだ。
「神崎さん……あの、少しは時間ある?」
どうして僕は、こんなこと言っちゃったんだろう。いつものように、ただの常連同士みたいな感じで振る舞えば良かったのに。
その時、シャワールームには誰もいなかった。そう思ってた。神崎さんの残念そうな表情と、僕のなかにあった今夜の期待が諦められなかった。
「え? ああ。ふふ。飛行機の時間まではまだあるね」
僕の言わんとすることがわかったようだ。落ち込んでた表情がパッと華やぐ。やっぱり神崎さんはそうでなきゃ。僕も少し嬉しくなって笑みを交わす。
「じゃあ、手っ取り早く、勢いでいきますか」
僕らは同じ個室に入った。
頭の先から足元へと流れていく細かな湯水。シャワーヘッドの穴が細かいのか、肌を滑るように落ちていく。それもこここの自慢だそうだ。
「仕事の前に、あなたに触れられて僥倖でした」
「使い方間違ってるよ。そんな凄いことじゃない」
「いえ。私にとっては最上級の癒しなんです。あなたという存在は」
腰をぐっと持ち上げるように抱きしめられる。火曜日にはここで九条さんと乱れたばかり。その罪悪感も僕の淫らな心は喜びに変えてしまう。
「クリスマスデート、私のほうが先で喜んでたのに。あのクライアントめ」
熱いキスを交わしながら、耳もとでそんな悪態を吐く。なんだかおかしくなってくる。
「いいじゃない。どっちが先でも……あ……んん」
笑いながら言う僕を咎めるよう、神崎さんが僕をいたぶる。それが気持ちよくて……。
飛行機の時間がいつかわからなかったけど、たっぷり半時間、僕と神崎さんは熱すぎるシャワータイムを楽しんだ。
「必ず連絡しますから。どちらがいいかな? 年末年始」
「年始で。三日にはこっちにもどってるよ」
年末は九条さんと予約済みだ。仙台にはその後帰省して三日に帰ってくる。神崎さんの『了解』との返事を聞いて、僕は個室のドアを開けた。割と勢いよく。
「よお、お楽しみだったか?」
けど、目の前で長い脚を組んでる人物を見て固まった。ベンチからゆっくりと立ち上がる。
顎のラインでふわりと揺れる髪。見事に仕上がった肉体。彫りの深い男らしい顔。けど今は、鬼の形相の九条さんが待っていた。
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