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第11話
しおりを挟む翌日、僕は自宅のキッチンで和風餃子の作り方を鹿島さんに教えた。彼はちゃんといつものエプロンを付け、餃子を作り上げた。少しだけ歪なのもあったけど、そういうところも僕は好きなんだ。
「先生のこと、祥、って呼んでもいいかな」
寝室のベッドで、鹿島さんが僕に聞いた。もちろん、いいに決まってる!
「はい。もちろんです。でも、教室では呼ばないでくださいね」
「さあ、どうかな」
彫の深い顔立ちに厚めの唇。その口角を上げて鹿島さんは言う。僕が何か言うのも聞かず、キスが降ってきた。シーツが擦れる音がする。僕はまた彼の中にのめり込んでいった。
しかし、鹿島さんに秘密を作ってしまった罪悪感が僕から消えない。しかも、美原さんにあんなことを言ってしまって。誤解、したかな。でも、僕が鹿島さんを好きなのはわかってくれてると思うし。もう、何があっても美原さんの誘いは断ろう。二人では決して会わない!
僕はそう強く決意して、日々の仕事に頑張った。その様子に舞は、例のごとく異変を感じてたみたいだけど、敢えて何も言ってこなかった。
二人が顔を合わす、次のレッスンが恐ろしくはある。美原さん、態度に出ないといいんだけど。
そして、普通にその日はやってきた。僕は生徒さんを一人ずつお迎えするんだけど(もちろん、たまたま一緒に来る人もいる)、いつも以上に緊張してしまった。
「失礼します」
いつも通り、ブランドのスーツに身を纏ったイケメン眼鏡、美原さんがやってきた。ちらりと僕の方を見たけど、動揺しないように努め、中へと迎え入れる。続けて入って来た沢城さんに目を移す。
「よろしくお願いしまぁす」
「はい、こちらこそ」
少し和んだ。僕はそっと安堵の息を吐いた。
「こんばんは」
最後に入って来たのは鹿島さんだった。二人だけがわかるようにアイコンタクトをする。ふう、やっぱり鹿島さんが好きだ。
しかし、レッスン中、鹿島さんと美原さんの微妙な空気を僕はずっと感じることになった。その緊張感たるや。僕は鹿島さんに美原さんとのことを知られないよう、努めて普通を演じた。だけど、ばれてやしないか、内心ビクビクだったんだ。
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