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第10話
しおりを挟む停電は何かの事故だったんだろうか。数分後、普通に電気が点いた。その時、僕は半裸状態。上半身はシャツのボタンが全て外され、肩や胸が露わになっていた。
「すみません……」
明るくなったことで、野獣に変身した美原さんは元の紳士に戻ってくれた。いつの間にか外されていた眼鏡。初めて見るその端正な顔立ちに、僕は思わず見惚れてしまった。
――――は! 見惚れてる場合じゃないっ。
僕は慌てて後ろを向くと、ボタンを嵌める。心臓が早鐘のように打って収まらなかった。
「帰って……もらえますか?」
「はい……あの……」
「まだなにか」
「教室には……来てもいいですか?」
そうか。そうだよね。でも、僕はちゃんと来て欲しい。
「もちろんです。レッスンはまだ始まったばかりです。一年間のお約束ですから、来てください。それに……」
それに、僕は一体何を付け加えるんだろう。自分も思わず楽しんだとでも? そんなこと、口が裂けても言えない。でも、美原さんは何かを期待して待っている。
「美原さんがいなくなったら、僕は寂しいです」
「はいっ。ありがとうございます!」
何を言ってるんだ、僕は。でも、これは教師としてだから……。お願い。そう、取って下さい。
なんだかとても疲れてしまって、僕は自宅リビングのソファーに体を沈めた。先週はここで、鹿島さんに抱かれたというのに。舞の言うように、なんて尻軽なんだ!
でも、抗えなかった……かな。僕だってそんな非力じゃない。一応男だし。料理男子は腕力あるんだよ。だから、抗わなかったんだ。多分。
「はあ……」
僕が大きくため息を吐いた時、スマホの通信音が鳴った。
――――鹿島さんだ!
そこには、今日、無事事件が解決したとあった。良かったぁ。そしてもう一言。『明日、個人レッスンしてもらえるか』って!
僕は天にも昇る気分。だけど、その足を引っ張る重しが……。それでもこちらも自分の欲望に抗えない。
『喜んで待ってます』
なんて、ハートマーク付きで送ってしまった。
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