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第1章
5 アレシュ、盗み聞きの技術を習得する
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通用口の向こうへ出て、アレシュは朝日に目を細めた。そこは広い芝生になっている。空堀を兼ねたその空間は、平時には城に住んでいる貴族の散歩や乗馬の場所であり、兵たちの鍛錬の場だった。
アレシュは、見通しのいいその空間をきょろきょろ見回した。本棟に沿って城門に続く小道を、覚えのある背中が足早に去っていく。それは壁に沿って右に曲がりこみ、見えなくなるところだった。
アレシュはそちらへ一歩踏み出した。途端、思った以上の距離をアレシュの体──というか魂はすいと進んだ。焦ってわたわた手を振り回すが、もちろん誰も反応しない。どうやら意志が「ここ」と目的地にピンを立てると、魂は一気に移動できるらしい。
体がないんだから、当たり前か。ずっと、体がある時と同じようにノタノタ歩き回っていたから気づかなかった。
気を取り直し、壁の端から右の方をのぞく。目当ての人物は、連れと共に本棟から城門に続く太い道に入るところだった。
食料を積んだ荷車や、出勤してくる人々で、道はそこそこ混んでいた。夜勤を終えて帰る人々も多いので、アレシュの追っている人物の存在は目立つわけではない。
だがアレシュには、彼の姿が浮かび上がるように見えた。彼のまとう雰囲気が周囲と違うというか、羽織っているマントを通しても、うっすらとモヤのように人とは違う空気が立ち上っているというか、とにかく、アレシュが見失う心配がなさそうなのが不思議だった。
なんか意外に、追っかけるの簡単そう。
そう思いながら近づいていく。城門には数人の門衛がおり、出入りする人々の身元を改めていた。順番が来ると、彼の連れは木札──身分証だ──を門衛に見せた。門衛はもったいぶって頷き、手を振る。
何事もなく城門を越えた2人は、そのまま街に入っていった。
どこ行くんだろう。
歩いてみたり、滑るように進んでみたり、色々試しながらアレシュはひたすらついていく。人々は一日を始めていた。パンを売り歩く者、仕事場に向かう者、学問所に向かう子供たち。初夏の夜明けと共に小さな営みが積み重ねられ、世界が動く。
繕い物をする店では、縫い子の女性が客と話している。水桶を担いだ老女が、二日酔いを抱えて宿に帰る吟遊詩人とすれ違う。アレシュは街を見るのが好きだった。以前は下宿の窓から、通りを行き来する人々を眺めたものだ。
2人連れは、そうした街の雑踏の中をすり抜けるように歩いていた。立ち止まる気配はない。脇目もふらず、彼らは大きな広い道のふちを歩き、中心部を抜けた。北の街はずれに向かっている。
やがて2人は安酒場と安宿が集まる治安の悪い地域に入った。バカ騒ぎが終わった朝の繁華街は、ゴミと空き瓶と寝込んだ酔っ払いが散乱する静かな場所だ。傾いだ建物が密集する中を2人は歩き、とある小路を曲がって姿を消す。
アレシュは角から首を突き出してみた。
小路の突き当りにはドアがあった。先導の男が、ドアをノックする。コココン、コン、コンコンという合図のような叩き方だった。
ドアが開き、2人は滑り込むように入っていった。すぐにドアが閉められる。しまった! アレシュは流れるようにドアに向かったが、遅かった。
「うう……やっちゃった」
困ったな。そう思いながらドアの取っ手に手を伸ばす。無意識に動かそうとしたのだ。
透けた手が空しく取っ手をスカスカ撫でるのを見ながら、アレシュははたと気づいた。ここは別に魔法結界はない。ドアに手を突っ込むと、自分の手はドアの向こうへ見えなくなった。
そりゃそう。自分の体があるという前提で物事をつい考えてしまうけれど、今は形がないのだ。アレシュはドアに向かって思い切って一歩踏み出した。なんの感触もなく、アレシュはドアの内側にいた。
「なんてことなかった……」
独り言を言いながら、アレシュは階段を上っていく背中についていく。彼らは2階へ上がると狭い廊下を静かに歩き、一番奥の小部屋へ入っていった。
ドアはないものと同じだ。そう学んだアレシュは、ためらいなくドアに顔を突っ込んだ。途端に慌てて顔を引く。2人を迎え入れた男の顔が目の前にあったからだ。男はドアを開けて部屋を出てきた。アレシュが追っていた男のうち、先導していた方も出てくる。2人はそのまま下へ降りていってしまった。
焦った~。
胸を押さえて気持ちを静めると、アレシュは今度はゆっくりとドアに顔を突っ込んだ。考えてみたら、目当ての彼はアレシュが見えるのだ。ドアから顔だけがにょっきり出ているところを見られるのは、なんとしても避けたい。
まず部屋の様子を伺う。中には彼の他にもうひとりいた。窓際に置かれたテーブルのそばに座り、待っていたようだ。
どうしよう。話を近くで聞きたい。悪いことなのはわかってるんだけど、この人の事情を何か知ることができたら、うまく協力を頼めるんじゃないか。なりふり構ってられないわけだし、何よりこの人がどんな人なのか知りたい。
アレシュはそう思った。一番近づきたい人には自分が見えてしまう。それはちょっとした矛盾だ。アレシュはなんとかできないものかと考えた。透明になれないの? 意識だけっていうか、まぁ今現在が意識だけなんだけど、それにしても……。
部屋をあちこち見回してから、アレシュはふわりと浮いてみた。いとも簡単に天井の上に首が突き出る。
3階の床で生首状態になったアレシュは、いったん全身で3階に出てから、首から上だけを床に突っ込んだ。ちょうどよく、2人の上に顔だけ出して話を聞くことができそうだ。
もし見られたら、恥ずかしくて死ぬな、これ。
天井から顔だけ出している自分の姿を想像して、アレシュは悲しくなった。なんでこんなことしてるんだろ。でも、あの人がどういう人なのかは突き止めたい。
2階の部屋の入口に、アレシュに声をかけた彼はしばらく黙って立っていた。窓際で待っていた男が、自分の向かいの椅子に座るように手を振る。
「兄上」
彼が、窓際の男にそう呼びかける。
「カミル。此度のこと……私も無念でならない。今後のことを話さなければ」
この2人、兄弟なんだ。あと、彼の名前はカミルっていうんだ。
カミル、と口の中で呟いてみた。あの誠実なアンバーの瞳に、名前の響きは合っているような気がする。
カミルは大股で部屋を横切ると、椅子にどさりと座った。同時に両手で顔を覆ってうなだれる。
「父上が……こんな……誓って言いますが、父上を殺害、したのは」
「お前ではない。それは分かっている。父上が殺された上に、その殺人の嫌疑をかけられるとは……お前の心中は察して余りある。お前に父上を殺害する動機は何もない。父上……いや、近衛騎士団長を殺した下手人は、他にいる」
は?
これって、割と大変な事件の話じゃない?
「兄上が私の無実を信じてくださっているのはありがたい。ですが脱獄は本意ではありません。これでは私がやったと思われるのでは」
えっ、この人脱獄してきたの?
「そうだが、このままでは口封じにお前が秘密裏に処刑される可能性が高かった。……将軍は王妃と結託している。私は今回の事件の裏には、あの2人が絡んでいるとみた」
カミルはテーブルに肘をつき、頭を支えて深い溜息をついた。
「父上は中立だったはずです」
「だからこそだ。何か不正を行えば、父上は黙ってはおらんだろう。先手を打たれたとみるべきだろうな。夕べ父上に何か変わったことはなかったか」
どんよりとした視線で、カミルは兄を見上げる。
「当城したこと自体、いつもとは異なりましたが……。二度目の休憩の際に詰め所に戻ったところ、父上が来ておられた。何か気にかかることがあるようで、異常がないかを何度も聞いて……私だけを近づけ、気になることをおっしゃいました」
「何だ?」
「『気をつけろ。どのようなことにも、くじけず対処するように』と。まるで私に厄災が降りかかることを予見していたかのようです」
兄は考え込むように言った。
「父上はやはり何かを予見しておられたのか。他に何かなかったか?」
「城壁を越えて何者かが侵入してきたのを一瞬見たのですが、暗くて顔はまったく見えませんでした。それから……何か甘い匂いがして、意識が遠のいた。どのぐらい気絶していたのかはわかりませんが……気づいた時には、私の剣は血まみれで、隣に……父上が……」
2人はしばらく黙り込んだ。
「中では何かあったのですか?」
カミルの問いかけに、兄が腕を組む。
「あった。不審な者が、幼きツィリル第二王子の寝所に忍び込もうとしていたところを使用人に見つかり、衛士に切り捨てられている」
「それはいつ?」
「お前が発見されるより、少し前だ」
アレシュは頭の中で事件を整理した。変な人が城壁を越えて中に入って、第二王子を殺そうとした。その不審者が殺された後、カミルがお父さんを殺したのが見つかった。
しばらく考え、カミルは重い声で言った。
「第二王子……ですか?」
「そうだ」
「それはおかしい」
確かに、とアレシュも思った。現在、王城内ではかなりキナ臭い噂が流れている。アレシュどころか国中が知っている話だ。
それは、どの国でもよくある話だ。後継者争い。この国の現国王は半年前から病気で臥せっている。現在22歳になる第一王子が代わりに政治を行っているのだが、問題は、この第一王子が側室の子であり、第二王子の方が正妻たる王妃の子であることからきている。王妃には長らく子が生まれず、2年前にようやく男子が生まれた。王はすでに第一王子を後継者として指名し、すべてがその前提で動いていたのに、ここへ来て熾烈な争いが勃発したわけだ。
王妃は野心家だった。子がないことに血を吐くほどの悔しさをむき出しにし、側室への憎しみを隠そうともしていなかった。
現在、第一王子は厳重な警備下におかれ、暗殺されぬよう細心の注意が払われている。狙われるとすれば第一王子。それが国全体の共通認識だったのだ。
実際の政治手腕を見ても、第一王子は申し分なかった。むしろまだ2歳の子どもを国王として擁立し、自分たちで権力を振るおうという王妃一派の方が危険であることは、誰の目にも明らかな状態だったのだ。
兄は低い声で答えた。
「王妃が夕べ息まいていた内容はこうだ。『第一王子は、自分の権力を盤石なものとすべく、反対する者を排除しようとしている』とな。殺される前に殺せという理屈は王妃のものであって、温厚な第一王子のものではないのだが……あの王妃は他人も自分と同じ価値観だと思えばこそ、疑り深くなっているらしい。
おまけに今回の件で、下手人の雇主は父上を亡き者にすることに成功した。病床におられる国王陛下からの信頼が最も篤かったのは父上だった。親友を亡くされた陛下も、おいたわしいことだ」
カミルが押し殺した声で言った。
「兄上は、王妃一派の自作自演だと考えておられるということですか?」
「ああ。だからこそ、お前に濡れ衣を着せた。ちょうど警備にお前がいる時を狙ったのではないかと、私は考えている。処刑を急ぐのも、余計なことを言わせぬため……このままではお前も危ないと見て、私はお前を連れ出した」
深い溜息をついて、カミルは頭を抱え込んだ。
「処刑されてもされなくても、私は……父上の葬儀にも参加できぬと?」
「残念ながら、やめておいた方がよかろう」
重苦しい雰囲気に、アレシュは胸が痛くなった。今のカミルは踏んだり蹴ったりだ。アレシュはわけもなく、カミルの髪に触れたくなった。その悲しい気持ちを分け合えたら。思わず手を伸ばしそうになる。
「カミル」
兄がカミルの肩に手を置いた。
「お前の心中、察して余りある。私も……父上が亡くなったとは信じがたい。ずっと……私とお前は父上と母上に育てて頂いた身だ。父上の笑顔をもう一度見たいと願うのは、私も同じだ」
我慢しきれなくなったように、兄はカミルの頭を抱き込んだ。カミルの肩が震える。くぐもった嗚咽が聞こえて、アレシュは自分も泣きそうになった。きっといいお父さんだったんだ。カミルはきっと、お父さんを尊敬していたんだ。殺人の濡れ衣を着せられるなんて、ひどい話。
辛いのに人前で嘆くことも許されないなんて。今のアレシュには、他人事とは思えなかった。
兄弟は、抱き合ったまま父の死を悼んでいた。幼い頃から、きっとこの兄弟は支え合ってきたのだろう。身分の高い人たちを王城で見かけることはよくあったけれど、アレシュはいつも、自分とは関係ない遠い世界の住人のように感じていた。そんなことはないのだ。彼らも家族を愛し、将来のことを不安に思ったり、嫌なことに怒ったり、悲しんだりしている。
やがて兄は、カミルの肩を優しくあやすように叩いた。
「嘆いていても、父上の無念は晴らされぬ。カミル。『くじけず対処するように』と父上もおっしゃったではないか。……実はお前を脱獄させたのには、もうひとつ目的がある。父上の死の真相を突き止めるためにも、お前にしてもらわなければならない」
涙を拭きながらカミルが顔を上げた。
「何です?」
兄の目は、真剣だった。
「国王陛下は、御自分の死が近いことを悟っておられる。私は……陛下から密命を帯びたのだ。それを果たせるのはお前しかいないと私は考えている。王城での捜査は私に任せろ。下手人は誰か。父上は何を掴んでいたのか。お前が嗅いだ甘い匂いは何か。私は必ず調べ上げ、父上の命を絶った上にお前を陥れた者を突き止めずにはおかぬ。
だが一方で、私はお前を守らねばならない。敵を追い詰めるためには、重要な証人であるお前を死なすわけにはいかない。それに……私自身、父だけでなく弟まで失うのは耐えがたい。
だから、お前には身を隠すとともに、ある場所に行ってもらいたいのだ」
「陛下からの密命?」
このお兄さん何者なんだろうとアレシュは思った。国王陛下から直接何か頼まれるなんて、普通の人じゃないんじゃないかな。
その辺も聞きたかったのだが、話は密命の内容に移っていた。
「そうだ。陛下の容態は、のっぴきならないところまで来ている。そうなると、次の国王の即位の手続きを考えねばならない」
「即位?」
「そうだ。我々としては第一王子を全力でお守りし、国王として正当に玉座について頂かなくてはならない。既に陛下から指名を受け誠実に義務を果たしておられる第一王子殿下が、あらゆる面で問題はないのだ。だがあの王妃一派は、即位においても何をするかわからない。父上は何を掴んだのか……それがわかれば早いのだが……」
「私は何をすれば?」
「王笏だ。北の歴代王墓まで行き、王笏を持ってくることが必要になる」
王笏だって?! アレシュは思わず身を乗り出した。2人の目の前まで落ちそうになり、慌てて戻る。今王笏って言わなかった?
「王笏は陛下の手元にあるのでは」
カミルの疑問はもっともで、まさにアレシュが聞きたいことだった。兄の声が一層低くなる。
「これは……この国における重要な国家機密のひとつだ。絶対に他言は無用。決して誰にも言うなよ」
頷くカミルに、兄は囁くように説明した。アレシュは必死で聞き取る。国家機密なんて聞きたいに決まってる。
「王城にあるものは、写しなのだ」
「写し?! 偽物ということですか?」
しぃっと兄が制し、カミルは身をかがめた。
「偽物ではなくきちんと聖別された写しだ。だが王笏の本当の任務は、この国全体に豊穣と加護を与えること。あの石は、国王の権力以上に大きな力を持っているのだ。
それゆえ代々の王は、即位前に重要な儀式を執り行ってきた。歴代王墓に安置されている本物の王笏から、写しの王笏に力を分け与えて頂く。写しの力は、それを与る国王一代きり。本体は北の歴代王墓の奥、初代国王の横にある『始まりの魔法師』の像が守っている。お前は密かにそれを持って帰ってきてほしいのだ」
「なんと……私ひとりで、ですか?」
茫然とするカミルに、兄は頷いた。
「こちらから正式な使いが出るのは一週間後。だがその一行にはもちろん王妃一派の手の者も入っている。誰も信用できぬ状態なのだ。さらに言えば、連中の密偵が数人、すでにこの街を発ったという情報も入ってきている。
王笏の石は、自ら正当な王を見分けるという伝承がある。王妃一派はおそらく王笏を押さえ、第二王子が選ばれたと吹聴する気だ。事は一刻を争う。全員に先んじて王笏を守り、陛下の御手に王笏を届けるよう頼めるのは、お前しかいない」
これって、チャンスじゃない?
アレシュはじっとカミルの頭を眺めた。カミルに手伝ってもらいたいと思ってたけど、逆にカミルを手伝えばいい。カミルが無事に本物の王笏を持って帰ってこられるように助ければ、途中でちょっと触らせてもらえるかもしれない。
石には、ものすごい力があるってことだよね。国王一代分の力を分けてくれても、本体は平気で国全体を守っているなんて。しかもそれを代々……え~と今の国王は12代目だから……たぶん、めちゃくちゃすごいのでは?
カミルに協力すれば、感謝されて石に触らせてもらえる可能性はかなり高い。
当の本人は、黙りこくったまま、しばらく兄の顔を見つめていた。
「ひとりで……国家守護の石を……持って帰れと」
「そうだ。父上はお前の誠実さと真面目な精神を愛しておられた。騎乗しているお前を、目を細めて窓から眺めているお姿を見たことがある。嬉しそうな顔をしておられた。私も、いつもお前と共にある。私は……幼少の折に父上に言われたのだ。お前を……守ってやってほしいと。お前は、かけがえのない……」
そこまで言うと、兄は口をつぐんだ。自分の中の何かと戦っているように唇を引き結び、兄は窓の外をじっと見る。
「父上は……命を賭してお前を守ったのかもしれない」
「守った?」
どこか違和感のある言い方に、カミルの眉が上がる。だが兄は言葉を呑みこみ、カミルに向き合った。
「旅の傭兵として移動しやすいよう、身分証と服、それに剣を用意した。裏には馬も待たせてある。剣は我が家の家宝を持ち出した。外部の者は見たことがないゆえ、お前の身元がそれと知れることはないはず」
「家宝ですって? そのような大切なものを」
「きっとお前を守ってくれよう。それと……ペンダントは持っているな?」
「ええ。肌から離したことはありません」
「よし。その石は母上の祈りが籠められたもの。決して手放してはならない。……カミル。無事の帰りを待っている。私はそれまでに、父上を殺した連中を追い詰めて……やる」
最後の方は、喉が詰まったような声だった。絞り出すように言った後、兄はカミルをじっと抱き締めた。
大丈夫。アレシュは祈り合う兄弟を見ながら思った。
カミルは絶対無事に、王笏を持って生きて帰ってくる。だって、俺がカミルを守るから。
その誓いがどれほど大きなものなのかを、天井から顔を突き出したアレシュはまだ、知るよしもなかった。
アレシュは、見通しのいいその空間をきょろきょろ見回した。本棟に沿って城門に続く小道を、覚えのある背中が足早に去っていく。それは壁に沿って右に曲がりこみ、見えなくなるところだった。
アレシュはそちらへ一歩踏み出した。途端、思った以上の距離をアレシュの体──というか魂はすいと進んだ。焦ってわたわた手を振り回すが、もちろん誰も反応しない。どうやら意志が「ここ」と目的地にピンを立てると、魂は一気に移動できるらしい。
体がないんだから、当たり前か。ずっと、体がある時と同じようにノタノタ歩き回っていたから気づかなかった。
気を取り直し、壁の端から右の方をのぞく。目当ての人物は、連れと共に本棟から城門に続く太い道に入るところだった。
食料を積んだ荷車や、出勤してくる人々で、道はそこそこ混んでいた。夜勤を終えて帰る人々も多いので、アレシュの追っている人物の存在は目立つわけではない。
だがアレシュには、彼の姿が浮かび上がるように見えた。彼のまとう雰囲気が周囲と違うというか、羽織っているマントを通しても、うっすらとモヤのように人とは違う空気が立ち上っているというか、とにかく、アレシュが見失う心配がなさそうなのが不思議だった。
なんか意外に、追っかけるの簡単そう。
そう思いながら近づいていく。城門には数人の門衛がおり、出入りする人々の身元を改めていた。順番が来ると、彼の連れは木札──身分証だ──を門衛に見せた。門衛はもったいぶって頷き、手を振る。
何事もなく城門を越えた2人は、そのまま街に入っていった。
どこ行くんだろう。
歩いてみたり、滑るように進んでみたり、色々試しながらアレシュはひたすらついていく。人々は一日を始めていた。パンを売り歩く者、仕事場に向かう者、学問所に向かう子供たち。初夏の夜明けと共に小さな営みが積み重ねられ、世界が動く。
繕い物をする店では、縫い子の女性が客と話している。水桶を担いだ老女が、二日酔いを抱えて宿に帰る吟遊詩人とすれ違う。アレシュは街を見るのが好きだった。以前は下宿の窓から、通りを行き来する人々を眺めたものだ。
2人連れは、そうした街の雑踏の中をすり抜けるように歩いていた。立ち止まる気配はない。脇目もふらず、彼らは大きな広い道のふちを歩き、中心部を抜けた。北の街はずれに向かっている。
やがて2人は安酒場と安宿が集まる治安の悪い地域に入った。バカ騒ぎが終わった朝の繁華街は、ゴミと空き瓶と寝込んだ酔っ払いが散乱する静かな場所だ。傾いだ建物が密集する中を2人は歩き、とある小路を曲がって姿を消す。
アレシュは角から首を突き出してみた。
小路の突き当りにはドアがあった。先導の男が、ドアをノックする。コココン、コン、コンコンという合図のような叩き方だった。
ドアが開き、2人は滑り込むように入っていった。すぐにドアが閉められる。しまった! アレシュは流れるようにドアに向かったが、遅かった。
「うう……やっちゃった」
困ったな。そう思いながらドアの取っ手に手を伸ばす。無意識に動かそうとしたのだ。
透けた手が空しく取っ手をスカスカ撫でるのを見ながら、アレシュははたと気づいた。ここは別に魔法結界はない。ドアに手を突っ込むと、自分の手はドアの向こうへ見えなくなった。
そりゃそう。自分の体があるという前提で物事をつい考えてしまうけれど、今は形がないのだ。アレシュはドアに向かって思い切って一歩踏み出した。なんの感触もなく、アレシュはドアの内側にいた。
「なんてことなかった……」
独り言を言いながら、アレシュは階段を上っていく背中についていく。彼らは2階へ上がると狭い廊下を静かに歩き、一番奥の小部屋へ入っていった。
ドアはないものと同じだ。そう学んだアレシュは、ためらいなくドアに顔を突っ込んだ。途端に慌てて顔を引く。2人を迎え入れた男の顔が目の前にあったからだ。男はドアを開けて部屋を出てきた。アレシュが追っていた男のうち、先導していた方も出てくる。2人はそのまま下へ降りていってしまった。
焦った~。
胸を押さえて気持ちを静めると、アレシュは今度はゆっくりとドアに顔を突っ込んだ。考えてみたら、目当ての彼はアレシュが見えるのだ。ドアから顔だけがにょっきり出ているところを見られるのは、なんとしても避けたい。
まず部屋の様子を伺う。中には彼の他にもうひとりいた。窓際に置かれたテーブルのそばに座り、待っていたようだ。
どうしよう。話を近くで聞きたい。悪いことなのはわかってるんだけど、この人の事情を何か知ることができたら、うまく協力を頼めるんじゃないか。なりふり構ってられないわけだし、何よりこの人がどんな人なのか知りたい。
アレシュはそう思った。一番近づきたい人には自分が見えてしまう。それはちょっとした矛盾だ。アレシュはなんとかできないものかと考えた。透明になれないの? 意識だけっていうか、まぁ今現在が意識だけなんだけど、それにしても……。
部屋をあちこち見回してから、アレシュはふわりと浮いてみた。いとも簡単に天井の上に首が突き出る。
3階の床で生首状態になったアレシュは、いったん全身で3階に出てから、首から上だけを床に突っ込んだ。ちょうどよく、2人の上に顔だけ出して話を聞くことができそうだ。
もし見られたら、恥ずかしくて死ぬな、これ。
天井から顔だけ出している自分の姿を想像して、アレシュは悲しくなった。なんでこんなことしてるんだろ。でも、あの人がどういう人なのかは突き止めたい。
2階の部屋の入口に、アレシュに声をかけた彼はしばらく黙って立っていた。窓際で待っていた男が、自分の向かいの椅子に座るように手を振る。
「兄上」
彼が、窓際の男にそう呼びかける。
「カミル。此度のこと……私も無念でならない。今後のことを話さなければ」
この2人、兄弟なんだ。あと、彼の名前はカミルっていうんだ。
カミル、と口の中で呟いてみた。あの誠実なアンバーの瞳に、名前の響きは合っているような気がする。
カミルは大股で部屋を横切ると、椅子にどさりと座った。同時に両手で顔を覆ってうなだれる。
「父上が……こんな……誓って言いますが、父上を殺害、したのは」
「お前ではない。それは分かっている。父上が殺された上に、その殺人の嫌疑をかけられるとは……お前の心中は察して余りある。お前に父上を殺害する動機は何もない。父上……いや、近衛騎士団長を殺した下手人は、他にいる」
は?
これって、割と大変な事件の話じゃない?
「兄上が私の無実を信じてくださっているのはありがたい。ですが脱獄は本意ではありません。これでは私がやったと思われるのでは」
えっ、この人脱獄してきたの?
「そうだが、このままでは口封じにお前が秘密裏に処刑される可能性が高かった。……将軍は王妃と結託している。私は今回の事件の裏には、あの2人が絡んでいるとみた」
カミルはテーブルに肘をつき、頭を支えて深い溜息をついた。
「父上は中立だったはずです」
「だからこそだ。何か不正を行えば、父上は黙ってはおらんだろう。先手を打たれたとみるべきだろうな。夕べ父上に何か変わったことはなかったか」
どんよりとした視線で、カミルは兄を見上げる。
「当城したこと自体、いつもとは異なりましたが……。二度目の休憩の際に詰め所に戻ったところ、父上が来ておられた。何か気にかかることがあるようで、異常がないかを何度も聞いて……私だけを近づけ、気になることをおっしゃいました」
「何だ?」
「『気をつけろ。どのようなことにも、くじけず対処するように』と。まるで私に厄災が降りかかることを予見していたかのようです」
兄は考え込むように言った。
「父上はやはり何かを予見しておられたのか。他に何かなかったか?」
「城壁を越えて何者かが侵入してきたのを一瞬見たのですが、暗くて顔はまったく見えませんでした。それから……何か甘い匂いがして、意識が遠のいた。どのぐらい気絶していたのかはわかりませんが……気づいた時には、私の剣は血まみれで、隣に……父上が……」
2人はしばらく黙り込んだ。
「中では何かあったのですか?」
カミルの問いかけに、兄が腕を組む。
「あった。不審な者が、幼きツィリル第二王子の寝所に忍び込もうとしていたところを使用人に見つかり、衛士に切り捨てられている」
「それはいつ?」
「お前が発見されるより、少し前だ」
アレシュは頭の中で事件を整理した。変な人が城壁を越えて中に入って、第二王子を殺そうとした。その不審者が殺された後、カミルがお父さんを殺したのが見つかった。
しばらく考え、カミルは重い声で言った。
「第二王子……ですか?」
「そうだ」
「それはおかしい」
確かに、とアレシュも思った。現在、王城内ではかなりキナ臭い噂が流れている。アレシュどころか国中が知っている話だ。
それは、どの国でもよくある話だ。後継者争い。この国の現国王は半年前から病気で臥せっている。現在22歳になる第一王子が代わりに政治を行っているのだが、問題は、この第一王子が側室の子であり、第二王子の方が正妻たる王妃の子であることからきている。王妃には長らく子が生まれず、2年前にようやく男子が生まれた。王はすでに第一王子を後継者として指名し、すべてがその前提で動いていたのに、ここへ来て熾烈な争いが勃発したわけだ。
王妃は野心家だった。子がないことに血を吐くほどの悔しさをむき出しにし、側室への憎しみを隠そうともしていなかった。
現在、第一王子は厳重な警備下におかれ、暗殺されぬよう細心の注意が払われている。狙われるとすれば第一王子。それが国全体の共通認識だったのだ。
実際の政治手腕を見ても、第一王子は申し分なかった。むしろまだ2歳の子どもを国王として擁立し、自分たちで権力を振るおうという王妃一派の方が危険であることは、誰の目にも明らかな状態だったのだ。
兄は低い声で答えた。
「王妃が夕べ息まいていた内容はこうだ。『第一王子は、自分の権力を盤石なものとすべく、反対する者を排除しようとしている』とな。殺される前に殺せという理屈は王妃のものであって、温厚な第一王子のものではないのだが……あの王妃は他人も自分と同じ価値観だと思えばこそ、疑り深くなっているらしい。
おまけに今回の件で、下手人の雇主は父上を亡き者にすることに成功した。病床におられる国王陛下からの信頼が最も篤かったのは父上だった。親友を亡くされた陛下も、おいたわしいことだ」
カミルが押し殺した声で言った。
「兄上は、王妃一派の自作自演だと考えておられるということですか?」
「ああ。だからこそ、お前に濡れ衣を着せた。ちょうど警備にお前がいる時を狙ったのではないかと、私は考えている。処刑を急ぐのも、余計なことを言わせぬため……このままではお前も危ないと見て、私はお前を連れ出した」
深い溜息をついて、カミルは頭を抱え込んだ。
「処刑されてもされなくても、私は……父上の葬儀にも参加できぬと?」
「残念ながら、やめておいた方がよかろう」
重苦しい雰囲気に、アレシュは胸が痛くなった。今のカミルは踏んだり蹴ったりだ。アレシュはわけもなく、カミルの髪に触れたくなった。その悲しい気持ちを分け合えたら。思わず手を伸ばしそうになる。
「カミル」
兄がカミルの肩に手を置いた。
「お前の心中、察して余りある。私も……父上が亡くなったとは信じがたい。ずっと……私とお前は父上と母上に育てて頂いた身だ。父上の笑顔をもう一度見たいと願うのは、私も同じだ」
我慢しきれなくなったように、兄はカミルの頭を抱き込んだ。カミルの肩が震える。くぐもった嗚咽が聞こえて、アレシュは自分も泣きそうになった。きっといいお父さんだったんだ。カミルはきっと、お父さんを尊敬していたんだ。殺人の濡れ衣を着せられるなんて、ひどい話。
辛いのに人前で嘆くことも許されないなんて。今のアレシュには、他人事とは思えなかった。
兄弟は、抱き合ったまま父の死を悼んでいた。幼い頃から、きっとこの兄弟は支え合ってきたのだろう。身分の高い人たちを王城で見かけることはよくあったけれど、アレシュはいつも、自分とは関係ない遠い世界の住人のように感じていた。そんなことはないのだ。彼らも家族を愛し、将来のことを不安に思ったり、嫌なことに怒ったり、悲しんだりしている。
やがて兄は、カミルの肩を優しくあやすように叩いた。
「嘆いていても、父上の無念は晴らされぬ。カミル。『くじけず対処するように』と父上もおっしゃったではないか。……実はお前を脱獄させたのには、もうひとつ目的がある。父上の死の真相を突き止めるためにも、お前にしてもらわなければならない」
涙を拭きながらカミルが顔を上げた。
「何です?」
兄の目は、真剣だった。
「国王陛下は、御自分の死が近いことを悟っておられる。私は……陛下から密命を帯びたのだ。それを果たせるのはお前しかいないと私は考えている。王城での捜査は私に任せろ。下手人は誰か。父上は何を掴んでいたのか。お前が嗅いだ甘い匂いは何か。私は必ず調べ上げ、父上の命を絶った上にお前を陥れた者を突き止めずにはおかぬ。
だが一方で、私はお前を守らねばならない。敵を追い詰めるためには、重要な証人であるお前を死なすわけにはいかない。それに……私自身、父だけでなく弟まで失うのは耐えがたい。
だから、お前には身を隠すとともに、ある場所に行ってもらいたいのだ」
「陛下からの密命?」
このお兄さん何者なんだろうとアレシュは思った。国王陛下から直接何か頼まれるなんて、普通の人じゃないんじゃないかな。
その辺も聞きたかったのだが、話は密命の内容に移っていた。
「そうだ。陛下の容態は、のっぴきならないところまで来ている。そうなると、次の国王の即位の手続きを考えねばならない」
「即位?」
「そうだ。我々としては第一王子を全力でお守りし、国王として正当に玉座について頂かなくてはならない。既に陛下から指名を受け誠実に義務を果たしておられる第一王子殿下が、あらゆる面で問題はないのだ。だがあの王妃一派は、即位においても何をするかわからない。父上は何を掴んだのか……それがわかれば早いのだが……」
「私は何をすれば?」
「王笏だ。北の歴代王墓まで行き、王笏を持ってくることが必要になる」
王笏だって?! アレシュは思わず身を乗り出した。2人の目の前まで落ちそうになり、慌てて戻る。今王笏って言わなかった?
「王笏は陛下の手元にあるのでは」
カミルの疑問はもっともで、まさにアレシュが聞きたいことだった。兄の声が一層低くなる。
「これは……この国における重要な国家機密のひとつだ。絶対に他言は無用。決して誰にも言うなよ」
頷くカミルに、兄は囁くように説明した。アレシュは必死で聞き取る。国家機密なんて聞きたいに決まってる。
「王城にあるものは、写しなのだ」
「写し?! 偽物ということですか?」
しぃっと兄が制し、カミルは身をかがめた。
「偽物ではなくきちんと聖別された写しだ。だが王笏の本当の任務は、この国全体に豊穣と加護を与えること。あの石は、国王の権力以上に大きな力を持っているのだ。
それゆえ代々の王は、即位前に重要な儀式を執り行ってきた。歴代王墓に安置されている本物の王笏から、写しの王笏に力を分け与えて頂く。写しの力は、それを与る国王一代きり。本体は北の歴代王墓の奥、初代国王の横にある『始まりの魔法師』の像が守っている。お前は密かにそれを持って帰ってきてほしいのだ」
「なんと……私ひとりで、ですか?」
茫然とするカミルに、兄は頷いた。
「こちらから正式な使いが出るのは一週間後。だがその一行にはもちろん王妃一派の手の者も入っている。誰も信用できぬ状態なのだ。さらに言えば、連中の密偵が数人、すでにこの街を発ったという情報も入ってきている。
王笏の石は、自ら正当な王を見分けるという伝承がある。王妃一派はおそらく王笏を押さえ、第二王子が選ばれたと吹聴する気だ。事は一刻を争う。全員に先んじて王笏を守り、陛下の御手に王笏を届けるよう頼めるのは、お前しかいない」
これって、チャンスじゃない?
アレシュはじっとカミルの頭を眺めた。カミルに手伝ってもらいたいと思ってたけど、逆にカミルを手伝えばいい。カミルが無事に本物の王笏を持って帰ってこられるように助ければ、途中でちょっと触らせてもらえるかもしれない。
石には、ものすごい力があるってことだよね。国王一代分の力を分けてくれても、本体は平気で国全体を守っているなんて。しかもそれを代々……え~と今の国王は12代目だから……たぶん、めちゃくちゃすごいのでは?
カミルに協力すれば、感謝されて石に触らせてもらえる可能性はかなり高い。
当の本人は、黙りこくったまま、しばらく兄の顔を見つめていた。
「ひとりで……国家守護の石を……持って帰れと」
「そうだ。父上はお前の誠実さと真面目な精神を愛しておられた。騎乗しているお前を、目を細めて窓から眺めているお姿を見たことがある。嬉しそうな顔をしておられた。私も、いつもお前と共にある。私は……幼少の折に父上に言われたのだ。お前を……守ってやってほしいと。お前は、かけがえのない……」
そこまで言うと、兄は口をつぐんだ。自分の中の何かと戦っているように唇を引き結び、兄は窓の外をじっと見る。
「父上は……命を賭してお前を守ったのかもしれない」
「守った?」
どこか違和感のある言い方に、カミルの眉が上がる。だが兄は言葉を呑みこみ、カミルに向き合った。
「旅の傭兵として移動しやすいよう、身分証と服、それに剣を用意した。裏には馬も待たせてある。剣は我が家の家宝を持ち出した。外部の者は見たことがないゆえ、お前の身元がそれと知れることはないはず」
「家宝ですって? そのような大切なものを」
「きっとお前を守ってくれよう。それと……ペンダントは持っているな?」
「ええ。肌から離したことはありません」
「よし。その石は母上の祈りが籠められたもの。決して手放してはならない。……カミル。無事の帰りを待っている。私はそれまでに、父上を殺した連中を追い詰めて……やる」
最後の方は、喉が詰まったような声だった。絞り出すように言った後、兄はカミルをじっと抱き締めた。
大丈夫。アレシュは祈り合う兄弟を見ながら思った。
カミルは絶対無事に、王笏を持って生きて帰ってくる。だって、俺がカミルを守るから。
その誓いがどれほど大きなものなのかを、天井から顔を突き出したアレシュはまだ、知るよしもなかった。
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