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48 【2年前】(25)
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保冷材、応急医療キット、タオル類、ちょっとした食べ物、シーツとタオルケット。
細々としたものをタカトオの配下から調達すると、レンはサキが監禁されている部屋に戻った。タカトオから厳しく命令が出ているらしく、全員が一応、レンの言った物を出してきた。レンとしては数人咥える覚悟はしていたのだが、今のところ、その必要はないらしい。
戻ると、見張りが無言で鍵を開けた。玄関を入り、レンはほっと息を吐く。元々、そこは監禁用に使われているようだ。鍵は中から開けられない物に取り換えられており、玄関ドアには中の様子を見て、食事を放り込める小窓がつけられていた。バルコニーに面したガラスの引き戸も窓も、木の板で封鎖されている。電気をつけなければ、ほとんど何も見えない暗さだ。リビングの天井の隅には監視カメラが当然のように睨みをきかせていた。
レンは大量の荷物をひとまず廊下に積み上げ、手を洗った。
出ていった時と変わらず、電気はつけられていた。
荷物をリビングとキッチンに運び込むと、レンはサキの様子を見に行った。がらんとしたリビングの真ん中に、サキは横たわったままだ。
近づいて顔をのぞきこむ。口やこめかみから流れ出た血が固まってこびりつき、頬が腫れ上がっていた。おそらく体もひどい状態だろう。タカトオは元医者のはずだが、サキを手当てするつもりはなさそうだった。
荷物の中から消毒液やタオル、塗り薬や保冷剤など、役に立ちそうなものを持ってくると、レンは丁寧にサキの顔の傷の手当てをした。保冷剤を顔に当てておいて、Tシャツの腹をめくる。
そちらもひどい様子だった。
泣きたい気分をこらえて、内出血を起こしているところに保冷剤を当てる。痛かったようで、サキが呻き声を上げた。眉間に皺が寄っている。
なんで、物事は単純にいかないんだろう。そう思いながらサキの髪に手を伸ばした時、突然手首を掴まれ、レンはびくんと硬直した。
サキは強い力でレンを握ったまま、目を開けた。相手がレンであることを確認すると力を抜く。
「……どのぐらい、寝てた」
苦しそうな声だった。
「わ、わかんないけど……1時間半ぐらい」
「そうか」
言ったきり、サキは黙った。息が荒い。
「痛み止めの薬を持ってきたんだけど……飲めます?」
「そう、だな。ごほっ」
咳き込んだサキは、痛みに顔をしかめて丸くなった。レンはペットボトルの水で薬を飲ませると、マットレスにシーツを敷き、サキをなんとかその上へ引っ張り上げた。
「サキさん、骨が折れたりとかは」
「多分、ないと、思う。あいつ……まだ手加減して、たからな」
「手加減?」
ぐったりと横たわったまま、サキはうっすらと目を開け、レンを見上げた。
「しばらく、いなかったみたいだけど……お前は、だい、じょうぶか? 何か、げほっ、されなかったか」
レンの喉の奥に、苦い塊がこみ上げてきた。実の父親は出来損ないと言う。でもサキは立ち上がれない状態でレンの様子を確認しようとしている。
「オレは別に……何もされてないです」
言わなきゃ。自分があのタカトオの息子で、ずっと利用されているって。今の自分は、敵になることでしか、この人を守れない。
「オレ、あの」
サキの手が震えながら伸び、レンの頬に触れた。
「……何か、言われたか」
この人は──。
「何も言われてません。……足手まといでごめんなさい」
サキがふわりと微笑んだ。
「足手まといになんか……なってない。お前ひとりなら脱出、できそうだ」
しゃがれた声で、サキはそう言った。
「いいか、隙を見て、お前は……逃げろ。奴の狙いは、ごほっ」
「ここにいます。サキさんが一緒に脱出できるまで」
返事はなかった。サキは再び、苦しい息で目を閉じ、泥沼のような場所へ落ちていた。
薬が効くといいんだけど。
レンは苦い塊を腹に飲み込み、立ち上がった。インスタントやレトルト食品をいくつか持ってきたし、お湯で溶かすスープもある。キッチンへ行き、食器などが何もないのを確認すると、レンは必要なものを調達するために、再び部屋を出ていった。
細々としたものをタカトオの配下から調達すると、レンはサキが監禁されている部屋に戻った。タカトオから厳しく命令が出ているらしく、全員が一応、レンの言った物を出してきた。レンとしては数人咥える覚悟はしていたのだが、今のところ、その必要はないらしい。
戻ると、見張りが無言で鍵を開けた。玄関を入り、レンはほっと息を吐く。元々、そこは監禁用に使われているようだ。鍵は中から開けられない物に取り換えられており、玄関ドアには中の様子を見て、食事を放り込める小窓がつけられていた。バルコニーに面したガラスの引き戸も窓も、木の板で封鎖されている。電気をつけなければ、ほとんど何も見えない暗さだ。リビングの天井の隅には監視カメラが当然のように睨みをきかせていた。
レンは大量の荷物をひとまず廊下に積み上げ、手を洗った。
出ていった時と変わらず、電気はつけられていた。
荷物をリビングとキッチンに運び込むと、レンはサキの様子を見に行った。がらんとしたリビングの真ん中に、サキは横たわったままだ。
近づいて顔をのぞきこむ。口やこめかみから流れ出た血が固まってこびりつき、頬が腫れ上がっていた。おそらく体もひどい状態だろう。タカトオは元医者のはずだが、サキを手当てするつもりはなさそうだった。
荷物の中から消毒液やタオル、塗り薬や保冷剤など、役に立ちそうなものを持ってくると、レンは丁寧にサキの顔の傷の手当てをした。保冷剤を顔に当てておいて、Tシャツの腹をめくる。
そちらもひどい様子だった。
泣きたい気分をこらえて、内出血を起こしているところに保冷剤を当てる。痛かったようで、サキが呻き声を上げた。眉間に皺が寄っている。
なんで、物事は単純にいかないんだろう。そう思いながらサキの髪に手を伸ばした時、突然手首を掴まれ、レンはびくんと硬直した。
サキは強い力でレンを握ったまま、目を開けた。相手がレンであることを確認すると力を抜く。
「……どのぐらい、寝てた」
苦しそうな声だった。
「わ、わかんないけど……1時間半ぐらい」
「そうか」
言ったきり、サキは黙った。息が荒い。
「痛み止めの薬を持ってきたんだけど……飲めます?」
「そう、だな。ごほっ」
咳き込んだサキは、痛みに顔をしかめて丸くなった。レンはペットボトルの水で薬を飲ませると、マットレスにシーツを敷き、サキをなんとかその上へ引っ張り上げた。
「サキさん、骨が折れたりとかは」
「多分、ないと、思う。あいつ……まだ手加減して、たからな」
「手加減?」
ぐったりと横たわったまま、サキはうっすらと目を開け、レンを見上げた。
「しばらく、いなかったみたいだけど……お前は、だい、じょうぶか? 何か、げほっ、されなかったか」
レンの喉の奥に、苦い塊がこみ上げてきた。実の父親は出来損ないと言う。でもサキは立ち上がれない状態でレンの様子を確認しようとしている。
「オレは別に……何もされてないです」
言わなきゃ。自分があのタカトオの息子で、ずっと利用されているって。今の自分は、敵になることでしか、この人を守れない。
「オレ、あの」
サキの手が震えながら伸び、レンの頬に触れた。
「……何か、言われたか」
この人は──。
「何も言われてません。……足手まといでごめんなさい」
サキがふわりと微笑んだ。
「足手まといになんか……なってない。お前ひとりなら脱出、できそうだ」
しゃがれた声で、サキはそう言った。
「いいか、隙を見て、お前は……逃げろ。奴の狙いは、ごほっ」
「ここにいます。サキさんが一緒に脱出できるまで」
返事はなかった。サキは再び、苦しい息で目を閉じ、泥沼のような場所へ落ちていた。
薬が効くといいんだけど。
レンは苦い塊を腹に飲み込み、立ち上がった。インスタントやレトルト食品をいくつか持ってきたし、お湯で溶かすスープもある。キッチンへ行き、食器などが何もないのを確認すると、レンは必要なものを調達するために、再び部屋を出ていった。
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