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四章
2021暮秋1
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2021年「暮秋」
秋も終わりにさしかかり、肌寒くなった空を八咫は低空で旋回しはじめると、その体内に取り込まれた村上の耳に、不特定な人の思念が投げかけられる。
それは、他人に向けた殺意や、ただすれ違っただけの人に投げかけられた罵詈雑言、何気なく開いたSNSに対しての憎悪の声であった。
「人の根本など所詮悪意よ・・・よく聞け、そしてオノレの真に会いたい怨み人を見つけ出すことなど、オノレを取り込んだワレには、容易なこと」
「くだらねぇ・・・そうやって人の怨みを食い物にして、人を思うように操って・・・それで貴様の真の目的が果たせたのか?俺には自己満にしか聞こえねぇがなぁ」
「活きの良い事を言えるのも今のうちだ・・・みておれ」
八咫は無数の憎悪にまみれた声から、一つの声を探し当て、その方向へ突き進んだ。
「なにぃ・・・いいから呼んでこいよ!C級アイドルの端っこ風情が、芸能人ズラでイキがれるのも今のうちだって言ってやれよ」
中根貴文(なかねたかふみ)、村上の両親を無残に殺害した主犯格であり、五年ほど少年院に入ったが、出所後、父親の経営する出版社に入り、今では系列の写真週刊誌の経営を任されている。
中根の数日前から、現在に至る胸くその悪い思念が村上の胸の中へ押し寄せてきた。
「ほらいいだろ、俺の言うとおりにすれば、一花咲かせられるんだから・・・今夜のことは誰にも言わないってことで・・・いいよな」
「インスタで際どい写真あげてるんだから、ヌードグラビアぐらい屁でもないだろ!それともこの間のベットの上の写真を流出させたほうがいいかな」
また、ある日の中根の思考。
「なんだとぉ!今更脱ぐのはイヤってなんなのよ!こっちはお前の為に良かれと思って、写真集の話をしてるんんだよ!」
次の思考は、比較的近い時期に中根が発した言葉らしかった。
「おい!俺を訴えるって、マジでいってんのかよ!こっちは、お前が世に出るためにやってやってんのによぉ・・・お前の事務所の専務から聞いてねぇか・・・俺とガキの頃、おばさんレイプして殺しちゃったってはなし・・・」
中根は少女の耳元で気味悪く囁いた。
この言葉の数々は、実際に中根が発した言葉なのか、八咫が村上の怒りを増幅させるために脚色された物なのかはわからない。
だが、村上の感情に言い知れない怒りを植え付けていることは確かなようであった。
「くぅぅぅぅあのクズ野郎・・・・」
八咫の体内で村上の歯ぎしりが響く。
「怨みを解放するのだ」
八咫の叫びが脳内に響き渡ると、村上の視野が暗くなり、瞬間発光した何かに包まれた感覚になると、目の前に中根貴文が現れた。
中根は誰かと携帯電話で話していて、まだ八咫の存在に気づいていない、いや、八咫が自分の姿を見せない何かをしているのかもしれなかった。
「なんだって!親父がそんなこと言うわけないだろ!いつものようにもみ消せるだろうが・・・ちょっと待てなにいってんの・・・おい!おい!」
「どうやらこの男、幾人もの女を食い物にして、自らで解決できなくなったようだのぉ・・・」
「あのような輩は、斬り捨てたほうが世が明るくなるぜ・・・ケケケケ」
伊助が村上に囁きかける。
「伊助とかいったな・・・大体アンタのことは調べてわかっていたが、この身体の中にいて、何故アンタが怨みを晴らすだけの殺しじゃなく、高杉晋作を守るっていう目的を持った殺しをさせられたか、わかったような気がするよ」
村上がそれ以上伊助に語りかけようとしたが、中根の叫び声がそれを遮ってしまった。
「うおっ!なんだてめぇ!」
中根には、抜き身の刀を構え、殺意に満ち満ちた村上の姿が見えているようであった。
「やめろぉ!」
「やめろって・・・お前こそその刀・・・」
「ケッ・・・俺がやってやる・・・」
「いや、それでは意味がない・・・お主が斬れ!お主の母を・・お主の父を・・虫のごとく葬った男ぞ」
2021年「暮秋」
秋も終わりにさしかかり、肌寒くなった空を八咫は低空で旋回しはじめると、その体内に取り込まれた村上の耳に、不特定な人の思念が投げかけられる。
それは、他人に向けた殺意や、ただすれ違っただけの人に投げかけられた罵詈雑言、何気なく開いたSNSに対しての憎悪の声であった。
「人の根本など所詮悪意よ・・・よく聞け、そしてオノレの真に会いたい怨み人を見つけ出すことなど、オノレを取り込んだワレには、容易なこと」
「くだらねぇ・・・そうやって人の怨みを食い物にして、人を思うように操って・・・それで貴様の真の目的が果たせたのか?俺には自己満にしか聞こえねぇがなぁ」
「活きの良い事を言えるのも今のうちだ・・・みておれ」
八咫は無数の憎悪にまみれた声から、一つの声を探し当て、その方向へ突き進んだ。
「なにぃ・・・いいから呼んでこいよ!C級アイドルの端っこ風情が、芸能人ズラでイキがれるのも今のうちだって言ってやれよ」
中根貴文(なかねたかふみ)、村上の両親を無残に殺害した主犯格であり、五年ほど少年院に入ったが、出所後、父親の経営する出版社に入り、今では系列の写真週刊誌の経営を任されている。
中根の数日前から、現在に至る胸くその悪い思念が村上の胸の中へ押し寄せてきた。
「ほらいいだろ、俺の言うとおりにすれば、一花咲かせられるんだから・・・今夜のことは誰にも言わないってことで・・・いいよな」
「インスタで際どい写真あげてるんだから、ヌードグラビアぐらい屁でもないだろ!それともこの間のベットの上の写真を流出させたほうがいいかな」
また、ある日の中根の思考。
「なんだとぉ!今更脱ぐのはイヤってなんなのよ!こっちはお前の為に良かれと思って、写真集の話をしてるんんだよ!」
次の思考は、比較的近い時期に中根が発した言葉らしかった。
「おい!俺を訴えるって、マジでいってんのかよ!こっちは、お前が世に出るためにやってやってんのによぉ・・・お前の事務所の専務から聞いてねぇか・・・俺とガキの頃、おばさんレイプして殺しちゃったってはなし・・・」
中根は少女の耳元で気味悪く囁いた。
この言葉の数々は、実際に中根が発した言葉なのか、八咫が村上の怒りを増幅させるために脚色された物なのかはわからない。
だが、村上の感情に言い知れない怒りを植え付けていることは確かなようであった。
「くぅぅぅぅあのクズ野郎・・・・」
八咫の体内で村上の歯ぎしりが響く。
「怨みを解放するのだ」
八咫の叫びが脳内に響き渡ると、村上の視野が暗くなり、瞬間発光した何かに包まれた感覚になると、目の前に中根貴文が現れた。
中根は誰かと携帯電話で話していて、まだ八咫の存在に気づいていない、いや、八咫が自分の姿を見せない何かをしているのかもしれなかった。
「なんだって!親父がそんなこと言うわけないだろ!いつものようにもみ消せるだろうが・・・ちょっと待てなにいってんの・・・おい!おい!」
「どうやらこの男、幾人もの女を食い物にして、自らで解決できなくなったようだのぉ・・・」
「あのような輩は、斬り捨てたほうが世が明るくなるぜ・・・ケケケケ」
伊助が村上に囁きかける。
「伊助とかいったな・・・大体アンタのことは調べてわかっていたが、この身体の中にいて、何故アンタが怨みを晴らすだけの殺しじゃなく、高杉晋作を守るっていう目的を持った殺しをさせられたか、わかったような気がするよ」
村上がそれ以上伊助に語りかけようとしたが、中根の叫び声がそれを遮ってしまった。
「うおっ!なんだてめぇ!」
中根には、抜き身の刀を構え、殺意に満ち満ちた村上の姿が見えているようであった。
「やめろぉ!」
「やめろって・・・お前こそその刀・・・」
「ケッ・・・俺がやってやる・・・」
「いや、それでは意味がない・・・お主が斬れ!お主の母を・・お主の父を・・虫のごとく葬った男ぞ」
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