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第四話 俺様な婚約者候補⑤
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※※※※新しい婚約者候補が出てきますけど、題は変えません。それは顔見せの時にアランコ王国の嫌われ者エルネスティが現れるからです。そのフェルクスに庇われて、アウグスタが意識し始めますので、ご注意ください※※※※
母様に確認の手紙を出したのだが、なぜか私の出した手紙がどう考えても手元についてはいないはずなのに、母様から手紙が届く。
「・・・おおお、お嬢様、おおお、お手紙です」
相変わらず私を前にすると顔を赤くしてうまく話せなくなる専属侍女のロニヤが、今日の私の当番らしい。トレイに乗っている手紙を取り上げて、私はロニヤに話しかける。
「・・・ねえ、ロニヤ?」
「な、な、なんでしょか」
トレイを胸の前で両手で抱えてうろたえる。
「・・・もっと普通に話せないの?」
私の言葉にさらに顔を赤くしながら、口を開く。
「わわわわわわたし、は、こここここれが、ふふふふふふふふふつうで、ごごごございます!」
悪化した。可愛いくて武芸の腕は相当な、侍女としての仕事は完ぺきにこなせるロニヤだが、私を前にするとあがってしまってうまく話せないそうだ。というか、あがるのが普通なのか・・・。なんだか頭が痛くなってきた。
「・・・わかりました。一生懸命なのはわかってるから、そのあがり症なのを直すように努力してね。あと、お茶飲みたいから持ってきて」
「ひゃい!」
奇妙な返事とともにロニヤがすっと動き、すぐに音もなくカップが斜め前に置かれた。ちょうど手紙を読みながらでもカップを取りやすい位置だ。
「ありがとう」
ロニヤが淹れてくれたお茶を口に運びながら手紙を開封する。ふと、お茶を入れるときの配膳は完璧なのに気が付いた。カップの音をさせたことなどないし、私の前に音もなく静かにカップが置かれる。もちろんこぼれることなどない。
給仕などは完璧なのよねえ。
苦笑しながら、手紙の封を開けて目を通す。
「・・・母様・・・」
中身には私をげんなりさせることが書かれていた。
しばらくお茶を飲んで心を落ち着かせる。一度息を大きく吸い、そして吐き出す。
「ロニヤ」
「ひゃ、ひゃい」
「またサロンの予約をしなくちゃならないみたい」
「ひゃい?」
「また顔合わせをしなければならないみたいなのよ」
「はえ?ああああのアアアランコおうぴでしょか?」
「おうぴ?・・・ああ、おうじね。・・・エルネスティ・アランコ第三王子じゃない方と顔合わせをしろと母様が手紙に書いてきたわ」
「はええ、おおおおおじょうしゃまにまたおおおおみあいでしゅか」
「・・・そう言うことになるわね」
たぶん、この手紙と同じ内容のものがカイサにも届いているはずだ。カイサは今日、非番のはずなのに。手紙を読んで、今頃泡を食ってこちらに向かっているのだろう。
速足で移動する足音が近づいてくる。ドアの前まで来た足音は、そこでぴたりと止まる。
ノックの音が三回響いた。するっとロニヤが私の斜め後ろに移動する。
「お入りなさい」
かちゃっと軽くドアノブが動き、ドアを開けてカイサが入ってくる。まっすぐソファに腰を下ろしている私の前に進み、私に向けて一礼した。顔を上げ、私が手に手紙を持っているのを見ると、目を細める。
「カイサは今日非番ではなかったの?明日でも問題ないのではない?」
ゆるゆると首を振り、カイサが口を開く。
「お嬢様、もうお読みになられたと思いますが、また顔合わせをせよと命が届いております」
私はため息をつくと、持っていた手紙をローテーブルに置く。
「母様からの手紙にそう書いてあったわ」
「前回はとんでもないお方との顔合わせでございましたが、今回は私でも知っております貴公子でございます」
「?そうなの?」
「はい。エルネスティ・アランコなどという下だけ男とは比べ物にならない方でしょう」
そこまで言う・・・。とことん嫌われたねアランコの第三王子。
「・・・はははは、まあ、わかったからカイサ、サロンの予約を入れてくれる?」
だが私の言葉にカイサが首を横に振る。
「いえ、学園のサロンではなく、市井のものではございますが、喫茶室を借り切るため、エレンをその喫茶室に向かわせております」
はいい?学園のサロンではダメなの?
「サロンでいいと思うけど・・・」
「お嬢様のお母上の命でございます。学園のサロンなどというケチ臭いものではなくではなく最高級の喫茶室を使用せよと」
喫茶室に最高級なんてあるの?!それに学園のサロンがケチ臭いなんて言ってますけど。うちの、乳母じゃないわ、侍女頭、認識が私と違う。
「・・・無駄使いじゃない・・・?」
「そのようなことはございません。お嬢様のお母上の命でございます。
それにエレンが戻りましたら、侍女全員でお嬢様を盛り立てるための衣装、装飾品、髪型の研究会を致します」
「・・・お嬢様を盛り立て・・・」
斜め後ろでロニヤがうふふふふふっと恍惚の声を上げている。これは見ちゃいけないやつだ。見たら引くね・・・。
「アランコなどの王子は既製服に毛の生えたもので十分ですが、今回は注文して作らせます。お母上曰く『金に糸目はつけるな』だそうです」
「おおっ!」
斜め後ろで歓声が上がっている。
「・・・でもすぐには無理じゃない?注文品のドレスは」
大げさすぎると、私は言ってみる。
「・・・ですから『金に糸目はつけるな』です!大金貨を二十万枚用意して御座います!足りなければ追加も送らせます!」
はいいい!二十万枚・・・。どうやって持ってきたんだろう・・・。入学時にそれらしい荷物無かったよね・・・。ちなみに大金貨は一枚あれば、庶民の三年間の生活費になるそうだ。貴族だと一年ぐらいかな。私は幼い頃、母様から毎月一枚貰ってたけど、あまりに高額過ぎて経済観念が壊れると当時は乳母だったカイサが母様に言ってくれて、毎月小金貨一枚になった。知らないは罪だよね。
アルトマイアー大陸の貨幣について説明すると、この貨幣制度はシュタイン帝国によって定められたもので、上から大金貨、中金貨、小金貨、大銀貨、小銀貨、大銅貨、中銅貨、小銅貨だ。貨幣の作成はシュタイン帝国の首都だった場所に興ったエルベン王国が、シュタイン帝国崩壊後に行われた独立国家間協議で行うこととなった。価値は先ほどのように大金貨は庶民の生活費三年分。生活費とは生きていくために必要な衣食住で使われるお金のことを指す。
後の貨幣の価値は、中金貨は庶民の生活費二年分、小金貨は生活費一年分、大銀貨は生活費三月分、小銀貨は一月分、大銅貨は十日、中銅貨が一日、小銅貨だけでは生活費として賄うことは少々難しい。ああっと、これは最低限の生活のための話で、例えば子が生まれればかかる費用に変動があるから、支払うお金も増えていくはずだ。
小銅貨十枚で中銅貨一枚、中銅貨十枚で大銅貨一枚、大銅貨五十枚で小銀貨一枚、小銀貨百枚で大銀貨一枚、大銀貨十枚で小金貨一枚、小金貨二枚で中金貨一枚、中金貨五枚で大金貨一枚に替えられる。ただ庶民は金貨自体見たことはないと思う。小銀貨を見たぐらいだと聞いたことがある。
幼い頃に母様から大金貨を毎月一枚貰ってた私ってどうなのよ、と思わないではない。あの金貨は、つかうことがなかったため、ログネルにある私の家にしまってある。侍従長と侍女頭と私しか持っていないカギのかかる金庫室を作ってそこに収めた。金庫室を作る前は私の部屋のそこかしこに放り出してあったので、掃除や取次などで部屋に入る侍女や侍従たちは悪い心が起きてしまいますと
カイサに直訴し、カイサが母様に話して金額の減額と金庫室を作ることになったらしい。というか、私幼かったからそんなこと覚えてもいないんだけどね。ただ大きなキラキラしたものが小さくなったことでがっかりしたことしか覚えていない。
ああ、ごめんなさい、話が逸れてしまったわね。
「・・・まあ、皆の好きにして・・・」
「「はい!」」
カイサとロニヤの声が重なった。
そんなにしないといけないのかな。
エルベン王国フェリクス・エルベン第二王子・・・。侮れないかもしれない。
母様に確認の手紙を出したのだが、なぜか私の出した手紙がどう考えても手元についてはいないはずなのに、母様から手紙が届く。
「・・・おおお、お嬢様、おおお、お手紙です」
相変わらず私を前にすると顔を赤くしてうまく話せなくなる専属侍女のロニヤが、今日の私の当番らしい。トレイに乗っている手紙を取り上げて、私はロニヤに話しかける。
「・・・ねえ、ロニヤ?」
「な、な、なんでしょか」
トレイを胸の前で両手で抱えてうろたえる。
「・・・もっと普通に話せないの?」
私の言葉にさらに顔を赤くしながら、口を開く。
「わわわわわわたし、は、こここここれが、ふふふふふふふふふつうで、ごごごございます!」
悪化した。可愛いくて武芸の腕は相当な、侍女としての仕事は完ぺきにこなせるロニヤだが、私を前にするとあがってしまってうまく話せないそうだ。というか、あがるのが普通なのか・・・。なんだか頭が痛くなってきた。
「・・・わかりました。一生懸命なのはわかってるから、そのあがり症なのを直すように努力してね。あと、お茶飲みたいから持ってきて」
「ひゃい!」
奇妙な返事とともにロニヤがすっと動き、すぐに音もなくカップが斜め前に置かれた。ちょうど手紙を読みながらでもカップを取りやすい位置だ。
「ありがとう」
ロニヤが淹れてくれたお茶を口に運びながら手紙を開封する。ふと、お茶を入れるときの配膳は完璧なのに気が付いた。カップの音をさせたことなどないし、私の前に音もなく静かにカップが置かれる。もちろんこぼれることなどない。
給仕などは完璧なのよねえ。
苦笑しながら、手紙の封を開けて目を通す。
「・・・母様・・・」
中身には私をげんなりさせることが書かれていた。
しばらくお茶を飲んで心を落ち着かせる。一度息を大きく吸い、そして吐き出す。
「ロニヤ」
「ひゃ、ひゃい」
「またサロンの予約をしなくちゃならないみたい」
「ひゃい?」
「また顔合わせをしなければならないみたいなのよ」
「はえ?ああああのアアアランコおうぴでしょか?」
「おうぴ?・・・ああ、おうじね。・・・エルネスティ・アランコ第三王子じゃない方と顔合わせをしろと母様が手紙に書いてきたわ」
「はええ、おおおおおじょうしゃまにまたおおおおみあいでしゅか」
「・・・そう言うことになるわね」
たぶん、この手紙と同じ内容のものがカイサにも届いているはずだ。カイサは今日、非番のはずなのに。手紙を読んで、今頃泡を食ってこちらに向かっているのだろう。
速足で移動する足音が近づいてくる。ドアの前まで来た足音は、そこでぴたりと止まる。
ノックの音が三回響いた。するっとロニヤが私の斜め後ろに移動する。
「お入りなさい」
かちゃっと軽くドアノブが動き、ドアを開けてカイサが入ってくる。まっすぐソファに腰を下ろしている私の前に進み、私に向けて一礼した。顔を上げ、私が手に手紙を持っているのを見ると、目を細める。
「カイサは今日非番ではなかったの?明日でも問題ないのではない?」
ゆるゆると首を振り、カイサが口を開く。
「お嬢様、もうお読みになられたと思いますが、また顔合わせをせよと命が届いております」
私はため息をつくと、持っていた手紙をローテーブルに置く。
「母様からの手紙にそう書いてあったわ」
「前回はとんでもないお方との顔合わせでございましたが、今回は私でも知っております貴公子でございます」
「?そうなの?」
「はい。エルネスティ・アランコなどという下だけ男とは比べ物にならない方でしょう」
そこまで言う・・・。とことん嫌われたねアランコの第三王子。
「・・・はははは、まあ、わかったからカイサ、サロンの予約を入れてくれる?」
だが私の言葉にカイサが首を横に振る。
「いえ、学園のサロンではなく、市井のものではございますが、喫茶室を借り切るため、エレンをその喫茶室に向かわせております」
はいい?学園のサロンではダメなの?
「サロンでいいと思うけど・・・」
「お嬢様のお母上の命でございます。学園のサロンなどというケチ臭いものではなくではなく最高級の喫茶室を使用せよと」
喫茶室に最高級なんてあるの?!それに学園のサロンがケチ臭いなんて言ってますけど。うちの、乳母じゃないわ、侍女頭、認識が私と違う。
「・・・無駄使いじゃない・・・?」
「そのようなことはございません。お嬢様のお母上の命でございます。
それにエレンが戻りましたら、侍女全員でお嬢様を盛り立てるための衣装、装飾品、髪型の研究会を致します」
「・・・お嬢様を盛り立て・・・」
斜め後ろでロニヤがうふふふふふっと恍惚の声を上げている。これは見ちゃいけないやつだ。見たら引くね・・・。
「アランコなどの王子は既製服に毛の生えたもので十分ですが、今回は注文して作らせます。お母上曰く『金に糸目はつけるな』だそうです」
「おおっ!」
斜め後ろで歓声が上がっている。
「・・・でもすぐには無理じゃない?注文品のドレスは」
大げさすぎると、私は言ってみる。
「・・・ですから『金に糸目はつけるな』です!大金貨を二十万枚用意して御座います!足りなければ追加も送らせます!」
はいいい!二十万枚・・・。どうやって持ってきたんだろう・・・。入学時にそれらしい荷物無かったよね・・・。ちなみに大金貨は一枚あれば、庶民の三年間の生活費になるそうだ。貴族だと一年ぐらいかな。私は幼い頃、母様から毎月一枚貰ってたけど、あまりに高額過ぎて経済観念が壊れると当時は乳母だったカイサが母様に言ってくれて、毎月小金貨一枚になった。知らないは罪だよね。
アルトマイアー大陸の貨幣について説明すると、この貨幣制度はシュタイン帝国によって定められたもので、上から大金貨、中金貨、小金貨、大銀貨、小銀貨、大銅貨、中銅貨、小銅貨だ。貨幣の作成はシュタイン帝国の首都だった場所に興ったエルベン王国が、シュタイン帝国崩壊後に行われた独立国家間協議で行うこととなった。価値は先ほどのように大金貨は庶民の生活費三年分。生活費とは生きていくために必要な衣食住で使われるお金のことを指す。
後の貨幣の価値は、中金貨は庶民の生活費二年分、小金貨は生活費一年分、大銀貨は生活費三月分、小銀貨は一月分、大銅貨は十日、中銅貨が一日、小銅貨だけでは生活費として賄うことは少々難しい。ああっと、これは最低限の生活のための話で、例えば子が生まれればかかる費用に変動があるから、支払うお金も増えていくはずだ。
小銅貨十枚で中銅貨一枚、中銅貨十枚で大銅貨一枚、大銅貨五十枚で小銀貨一枚、小銀貨百枚で大銀貨一枚、大銀貨十枚で小金貨一枚、小金貨二枚で中金貨一枚、中金貨五枚で大金貨一枚に替えられる。ただ庶民は金貨自体見たことはないと思う。小銀貨を見たぐらいだと聞いたことがある。
幼い頃に母様から大金貨を毎月一枚貰ってた私ってどうなのよ、と思わないではない。あの金貨は、つかうことがなかったため、ログネルにある私の家にしまってある。侍従長と侍女頭と私しか持っていないカギのかかる金庫室を作ってそこに収めた。金庫室を作る前は私の部屋のそこかしこに放り出してあったので、掃除や取次などで部屋に入る侍女や侍従たちは悪い心が起きてしまいますと
カイサに直訴し、カイサが母様に話して金額の減額と金庫室を作ることになったらしい。というか、私幼かったからそんなこと覚えてもいないんだけどね。ただ大きなキラキラしたものが小さくなったことでがっかりしたことしか覚えていない。
ああ、ごめんなさい、話が逸れてしまったわね。
「・・・まあ、皆の好きにして・・・」
「「はい!」」
カイサとロニヤの声が重なった。
そんなにしないといけないのかな。
エルベン王国フェリクス・エルベン第二王子・・・。侮れないかもしれない。
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