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最終章 五女と家族と妖精の薬
第4話 惑わされた魂は見えずとも、
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「メイシィ、そこにいるのか……!」
サフィアン様が部屋の角を指差して『そこにメイシィの魂がいる』とおっしゃった。
その言葉に誰よりも早く反応したのは、ローレンス様だった。
ただ一点を見つめながら足元を気にせず歩み寄る姿に、必死さが伝わってくる。
あまりの豹変ぶりに私は驚きを隠せずにいた。
ローレンス様の言葉に反応する者はいない。
サフィアン様がくすくすと小さく笑みを浮かべていらっしゃるだけ。
「魂だけじゃ声は聞こえないわねえ。耳がないもの」
「そう、ですか……」
「私もあの子の声は聞こえないけれど、様子はわかるわ。
ずっと誰にも認識されなかったから驚いているみたい。少し笑っちゃってるわ、おほほ。お元気そうね?ちょっと窮屈そうだけれど、あら、埋もれそう、おほほ」
「へえ、笑ってんなら無事なんだな」
セロエ様はとてもお優しい声で言うと安心したように腕を組んだ。
サーシャ様とナタリー様は嬉しそうにお互いの顔を見ていらっしゃる。
驚いた。メイシィの様子ひとつで張りつめていた空気がこんなに和らぐなんて。
彼女の存在がいかにユーファステア侯爵家で大きいのか感じ取れる。
「誰にも認識されなかったとはいえ、寂しくなかったみたいね、よほど騒がしいのだわ」
「騒がしいとは?」
「妖精たちよ。ここはクリードの隣の部屋で、彼女のもとに移った子も多いから。部屋中妖精だらけ!まるでなんにも片付けてないおもちゃの倉庫のよう!」
「……まさか!」
ふいにナタリー様が声を上げた。流石にセロエ様は肘鉄を食らわせることなく黙っていらっしゃる。
「今メイシィは妖精と同じ存在になっているのでしょうか?」
「その通りよ。妖精は自然の形、人が見る世界とは少し異なる存在。見えざる存在同士、認識することができるのよ。
普通は魂が身体から離れてしまうと自然に還ってしまうのだけれど、たくさんの妖精たちのおかげで形を留めているみたい。しばらくは大丈夫そうね」
メイシィをお願いしますね、妖精さん。
サフィアン様が何も見えない空間に声をかけると、眠っているメイシィに目線を戻された。
「……でも、安心してばかりはいられないわ」
先ほどとは全く違う厳しい表情。私たちは思わず空気を緊張感で埋め尽くしてしまう。
どういうことかと聞く方がいないほど張りつめた空間で、サフィアン様の声が響き渡っていく。
「魂は本来その場に留まることはできないもの。妖精の力を注いで保っているけれど、受け皿にも限界があるの。
普通は消えていく魂でも、妖精の力を注ぎすぎてしまえば、
メイシィの魂は妖精となってしまって、身体に戻れなくなるわ」
「妖精……」
物音のしない空間に、呟く小さな声が次々に聞こえてきた。
人が妖精になるなんて聞いたことがない。
あまりにも現実的でない話に、私も混乱している。
やっぱり解毒をすることは間違いじゃなかった。
今のメイシィでも幸せになれるかもしれない。でも、魂が本人ではなければ何の意味もない。
ただのむなしい人形遊びとなるだけだわ。
やがて誰もが声を失う状況の中、ただひとりだけ口を開く方がいらっしゃった。
「メイシィの魂がいない?妖精に……なる?」
「クリード殿下……!?」
私の真後ろから声を出し驚かせたのはクリード殿下だった。
蒼白な表情でサフィアン様を見つめ、ふらふらとした足取りで近づいていく。
いつのまに話を聞いていらっしゃったのだろう。
振り向けば、アンダンさんを筆頭に騎士たちが気まずい顔で扉の近くに立っている。
ということは、大勢の気配を感じて物音立てず入ってこられたのだろう。
「サフィアンおばあさま、それは本当の話なのですか?」
「……ええ、そうよクリード」
「メイシィ……僕のせいで君が」
ベッドに腰掛け、眠るメイシィの頬を撫でる手は酷く震えていらっしゃった。
背後に置いてあった花瓶が怪しく揺れ始める。
妖精のいたずらで割れるかもしれない。慌てて近づこうとすれば、その花瓶は光りだしゆっくりと持ち上がった。
ちらりと横を向けば、ローレンス様から同じ色の光が見える。
さすが慣れていらっしゃる手つきだった。
「クリード、あなたが心を痛める必要はないわ。こんなに協力してくれる人々がいるんだもの。きっと元に戻る」
「……」
「後悔はメイシィが帰って来てからよ。たっぷり怒られるといいわ」
「……」
「クリード……もう、あなたは本当に心の整え方が不器用ねえ」
サフィアン様はそう言って立ち上がると、殿下のもとへ歩み寄るなりその頭を撫で始めた。
ゆっくりと、ゆっくりと。とても慣れた手つきで何度でも。
クリード殿下は幼い頃、毎日のように妖精の暴走が起き、怪我人が後を絶たなかったという。
ミリシア・ユーファステア様が登城されているときは、妖精たちをなだめ、殿下の頭を撫でてすぐに落ち着いたらしい。
きっとミリシア様亡き後、サフィアン様が代わりをしてくださっていたのだろう。
「いいことを教えてあげるわ。
あなたの隣、メイシィの魂が座っている。心配そうにあなたを見ている」
「……メイシィ」
「メイシィ、あなたも撫でていいのよ。この子は撫でられるのが大好きなの」
「なっ」
「あらクリード、体勢を変えてしまっていいの?撫でられなくなっちゃうわ?」
「……っ」
「ふふふ」
殿下はもう一度頭を下げてメイシィの身体を覗き込む姿勢に戻った。
感じることはできなくとも、サフィアン様が空に向けて話しているお姿に不思議と違和感がない。
ちゃんといる。私たちが会いたいメイシィがそこにいるんだと、すとんと腑に落ちていった。
―――――――――――――――――
「これで我々がどうすべきかだいぶ見えてきたようだな」
あれから、ローレンス様の執務室に戻った私とユーファステア侯爵家のみなさまは会議を始めた。
サフィアン様は少し疲れたご様子でお戻りになり、クリード殿下は騎士を連れて出て行ってしまった。
お世話はもうひとりの側近であるパラノさんに任せて、私はここにいる。
「作るべきは『魂を身体に戻す薬』っつーことだな」
「そんな不思議な薬、作り方なんて見つかるのかしら」
「正直、どの文献にも存在しないと思うわ~。だから、産み出すしかない。
ローレンス、ミカルガ薬師をお連れしたのはそれが理由でしょう?」
今回の会議ではミカルガ様に同席いただいていた。
ラジアン殿下に命じられたとはいえ、このような状況を作り出してしまった薬の調合者本人とあって、厳しい表情をされている。
「ああ、そうだ。
……ミカルガ殿、改めてこの度の協力、大変ありがたく思います」
「とんでもございません、私の調合した薬がこのような事態を招いているのは事実。彼女の師として全力をもって治療薬を完成させましょう」
「感謝いたします。ミカルガ殿。
それで、サフィアン様のお話を伺って治療薬の調合について心当たりはありますか?」
ローレンス様の言葉に、ほぅ、とふくろうが鳴くような声でつぶやくミカルガ様。
一瞬思案したと思えば、小さくうなずいて羽角《うかく》を揺らし、私たちを見回した。
「今回調合した薬――そうですな、便宜上『離別薬《りべつやく》』と名付けましょう。この離別薬は『身体が封じている魂の扉を開く』こと、『偽物の魂を作る』ことの2つの力がございます。どちらも素材に術式を埋め込むことで起こしているのです」
「素材に直接術式を刻み、調合することで発動させるということ?魔法陣よりも高度じゃない……信じられないわ」
薬学と魔法学を学んでいらっしゃるサーシャ様が驚いた声を出す。
長年カナリス王子の病の治療薬を探しているだけあって、どれだけ非現実的な話なのか理解されているのだろう。
「魂を戻すのであれば、『身体が封じている魂の扉を開く』効能は必須でしょうな。ただ、『魂を入れる』という効能はどのように組み立てれば良いか、私には全く心当たりのない状況でございます。大変申し訳ございません」
「謝る必要はねーよ、ミカルガじーちゃん」
「セロエ様、温かいお言葉感謝いたします」
ミカルガ様の妻、テラー様は1級魔法薬師としてとても高名で、王族と公爵家、そして侯爵家であるユーファステア家の専属をされていた。
夫で薬師院院長であったミカルガ様ももちろん関わっていらっしゃったに違いない。
セロエ様の言動で両者の固い絆が垣間見えた。
「それではミカルガ殿、この離別薬をミリシア・ユーファステアが飲んだという点について、何か心当たりはございますか?」
「……当時はテラーがひとりで調合したものですので、私は直接かかわっておりません。
ただ、この薬を飲んだことでミリシア様の急死に繋がったのは納得いたします」
「なっ……それはどういうことですか!?」
ローレンス様は思わず立ち上がってミカルガ様を見下ろす。
老年の薬師は動じることなく、瞼を閉じて淡々と言葉を連ねた。
「離別薬は『身体から魂を取り出し、体液が入った相手の願いが混じった仮の魂を入れる』薬でございます。
薬に体液が入っていなければ『仮の魂』は作られず、魂がない身体は生きていくことはできません。
ミリシア様の死は離別薬が原因であるならば、『魂が戻らないまま身体が死を迎えてしまった』と仮定すれば、つじつまが合いましょう」
ローレンス様。
ミカルガ様はそう言って立ち上がり、名を呼んだ相手に深く頭を下げた。
言葉も出ないまま驚く私たちに、低い声が懇願《こんがん》する。
「どうかミリシア様の死の謎を、薬を飲んだ理由を解き明かしてくださいませんか。
きっとその答えが、『魂を入れる』カギになるに違いございません」
サフィアン様が部屋の角を指差して『そこにメイシィの魂がいる』とおっしゃった。
その言葉に誰よりも早く反応したのは、ローレンス様だった。
ただ一点を見つめながら足元を気にせず歩み寄る姿に、必死さが伝わってくる。
あまりの豹変ぶりに私は驚きを隠せずにいた。
ローレンス様の言葉に反応する者はいない。
サフィアン様がくすくすと小さく笑みを浮かべていらっしゃるだけ。
「魂だけじゃ声は聞こえないわねえ。耳がないもの」
「そう、ですか……」
「私もあの子の声は聞こえないけれど、様子はわかるわ。
ずっと誰にも認識されなかったから驚いているみたい。少し笑っちゃってるわ、おほほ。お元気そうね?ちょっと窮屈そうだけれど、あら、埋もれそう、おほほ」
「へえ、笑ってんなら無事なんだな」
セロエ様はとてもお優しい声で言うと安心したように腕を組んだ。
サーシャ様とナタリー様は嬉しそうにお互いの顔を見ていらっしゃる。
驚いた。メイシィの様子ひとつで張りつめていた空気がこんなに和らぐなんて。
彼女の存在がいかにユーファステア侯爵家で大きいのか感じ取れる。
「誰にも認識されなかったとはいえ、寂しくなかったみたいね、よほど騒がしいのだわ」
「騒がしいとは?」
「妖精たちよ。ここはクリードの隣の部屋で、彼女のもとに移った子も多いから。部屋中妖精だらけ!まるでなんにも片付けてないおもちゃの倉庫のよう!」
「……まさか!」
ふいにナタリー様が声を上げた。流石にセロエ様は肘鉄を食らわせることなく黙っていらっしゃる。
「今メイシィは妖精と同じ存在になっているのでしょうか?」
「その通りよ。妖精は自然の形、人が見る世界とは少し異なる存在。見えざる存在同士、認識することができるのよ。
普通は魂が身体から離れてしまうと自然に還ってしまうのだけれど、たくさんの妖精たちのおかげで形を留めているみたい。しばらくは大丈夫そうね」
メイシィをお願いしますね、妖精さん。
サフィアン様が何も見えない空間に声をかけると、眠っているメイシィに目線を戻された。
「……でも、安心してばかりはいられないわ」
先ほどとは全く違う厳しい表情。私たちは思わず空気を緊張感で埋め尽くしてしまう。
どういうことかと聞く方がいないほど張りつめた空間で、サフィアン様の声が響き渡っていく。
「魂は本来その場に留まることはできないもの。妖精の力を注いで保っているけれど、受け皿にも限界があるの。
普通は消えていく魂でも、妖精の力を注ぎすぎてしまえば、
メイシィの魂は妖精となってしまって、身体に戻れなくなるわ」
「妖精……」
物音のしない空間に、呟く小さな声が次々に聞こえてきた。
人が妖精になるなんて聞いたことがない。
あまりにも現実的でない話に、私も混乱している。
やっぱり解毒をすることは間違いじゃなかった。
今のメイシィでも幸せになれるかもしれない。でも、魂が本人ではなければ何の意味もない。
ただのむなしい人形遊びとなるだけだわ。
やがて誰もが声を失う状況の中、ただひとりだけ口を開く方がいらっしゃった。
「メイシィの魂がいない?妖精に……なる?」
「クリード殿下……!?」
私の真後ろから声を出し驚かせたのはクリード殿下だった。
蒼白な表情でサフィアン様を見つめ、ふらふらとした足取りで近づいていく。
いつのまに話を聞いていらっしゃったのだろう。
振り向けば、アンダンさんを筆頭に騎士たちが気まずい顔で扉の近くに立っている。
ということは、大勢の気配を感じて物音立てず入ってこられたのだろう。
「サフィアンおばあさま、それは本当の話なのですか?」
「……ええ、そうよクリード」
「メイシィ……僕のせいで君が」
ベッドに腰掛け、眠るメイシィの頬を撫でる手は酷く震えていらっしゃった。
背後に置いてあった花瓶が怪しく揺れ始める。
妖精のいたずらで割れるかもしれない。慌てて近づこうとすれば、その花瓶は光りだしゆっくりと持ち上がった。
ちらりと横を向けば、ローレンス様から同じ色の光が見える。
さすが慣れていらっしゃる手つきだった。
「クリード、あなたが心を痛める必要はないわ。こんなに協力してくれる人々がいるんだもの。きっと元に戻る」
「……」
「後悔はメイシィが帰って来てからよ。たっぷり怒られるといいわ」
「……」
「クリード……もう、あなたは本当に心の整え方が不器用ねえ」
サフィアン様はそう言って立ち上がると、殿下のもとへ歩み寄るなりその頭を撫で始めた。
ゆっくりと、ゆっくりと。とても慣れた手つきで何度でも。
クリード殿下は幼い頃、毎日のように妖精の暴走が起き、怪我人が後を絶たなかったという。
ミリシア・ユーファステア様が登城されているときは、妖精たちをなだめ、殿下の頭を撫でてすぐに落ち着いたらしい。
きっとミリシア様亡き後、サフィアン様が代わりをしてくださっていたのだろう。
「いいことを教えてあげるわ。
あなたの隣、メイシィの魂が座っている。心配そうにあなたを見ている」
「……メイシィ」
「メイシィ、あなたも撫でていいのよ。この子は撫でられるのが大好きなの」
「なっ」
「あらクリード、体勢を変えてしまっていいの?撫でられなくなっちゃうわ?」
「……っ」
「ふふふ」
殿下はもう一度頭を下げてメイシィの身体を覗き込む姿勢に戻った。
感じることはできなくとも、サフィアン様が空に向けて話しているお姿に不思議と違和感がない。
ちゃんといる。私たちが会いたいメイシィがそこにいるんだと、すとんと腑に落ちていった。
―――――――――――――――――
「これで我々がどうすべきかだいぶ見えてきたようだな」
あれから、ローレンス様の執務室に戻った私とユーファステア侯爵家のみなさまは会議を始めた。
サフィアン様は少し疲れたご様子でお戻りになり、クリード殿下は騎士を連れて出て行ってしまった。
お世話はもうひとりの側近であるパラノさんに任せて、私はここにいる。
「作るべきは『魂を身体に戻す薬』っつーことだな」
「そんな不思議な薬、作り方なんて見つかるのかしら」
「正直、どの文献にも存在しないと思うわ~。だから、産み出すしかない。
ローレンス、ミカルガ薬師をお連れしたのはそれが理由でしょう?」
今回の会議ではミカルガ様に同席いただいていた。
ラジアン殿下に命じられたとはいえ、このような状況を作り出してしまった薬の調合者本人とあって、厳しい表情をされている。
「ああ、そうだ。
……ミカルガ殿、改めてこの度の協力、大変ありがたく思います」
「とんでもございません、私の調合した薬がこのような事態を招いているのは事実。彼女の師として全力をもって治療薬を完成させましょう」
「感謝いたします。ミカルガ殿。
それで、サフィアン様のお話を伺って治療薬の調合について心当たりはありますか?」
ローレンス様の言葉に、ほぅ、とふくろうが鳴くような声でつぶやくミカルガ様。
一瞬思案したと思えば、小さくうなずいて羽角《うかく》を揺らし、私たちを見回した。
「今回調合した薬――そうですな、便宜上『離別薬《りべつやく》』と名付けましょう。この離別薬は『身体が封じている魂の扉を開く』こと、『偽物の魂を作る』ことの2つの力がございます。どちらも素材に術式を埋め込むことで起こしているのです」
「素材に直接術式を刻み、調合することで発動させるということ?魔法陣よりも高度じゃない……信じられないわ」
薬学と魔法学を学んでいらっしゃるサーシャ様が驚いた声を出す。
長年カナリス王子の病の治療薬を探しているだけあって、どれだけ非現実的な話なのか理解されているのだろう。
「魂を戻すのであれば、『身体が封じている魂の扉を開く』効能は必須でしょうな。ただ、『魂を入れる』という効能はどのように組み立てれば良いか、私には全く心当たりのない状況でございます。大変申し訳ございません」
「謝る必要はねーよ、ミカルガじーちゃん」
「セロエ様、温かいお言葉感謝いたします」
ミカルガ様の妻、テラー様は1級魔法薬師としてとても高名で、王族と公爵家、そして侯爵家であるユーファステア家の専属をされていた。
夫で薬師院院長であったミカルガ様ももちろん関わっていらっしゃったに違いない。
セロエ様の言動で両者の固い絆が垣間見えた。
「それではミカルガ殿、この離別薬をミリシア・ユーファステアが飲んだという点について、何か心当たりはございますか?」
「……当時はテラーがひとりで調合したものですので、私は直接かかわっておりません。
ただ、この薬を飲んだことでミリシア様の急死に繋がったのは納得いたします」
「なっ……それはどういうことですか!?」
ローレンス様は思わず立ち上がってミカルガ様を見下ろす。
老年の薬師は動じることなく、瞼を閉じて淡々と言葉を連ねた。
「離別薬は『身体から魂を取り出し、体液が入った相手の願いが混じった仮の魂を入れる』薬でございます。
薬に体液が入っていなければ『仮の魂』は作られず、魂がない身体は生きていくことはできません。
ミリシア様の死は離別薬が原因であるならば、『魂が戻らないまま身体が死を迎えてしまった』と仮定すれば、つじつまが合いましょう」
ローレンス様。
ミカルガ様はそう言って立ち上がり、名を呼んだ相手に深く頭を下げた。
言葉も出ないまま驚く私たちに、低い声が懇願《こんがん》する。
「どうかミリシア様の死の謎を、薬を飲んだ理由を解き明かしてくださいませんか。
きっとその答えが、『魂を入れる』カギになるに違いございません」
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