奇談

hyui

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《体験談?》ある勇敢な紳士の話

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 私がかつて洒落怖というサイトで見かけた話だ。



 ある日、投稿スレに一つの心霊話が投稿された。
 なんでも、とあるホテルの一室で男一人で宿泊すると、夜中に女の幽霊が現れて、あれやこれやエロいことをされてしまうのだとか。
 多くはこの話を笑い話として流していたのだが、一人随分と食いつく男がいた。
「変態紳士」と名乗るその男は、スレ主にホテル名と部屋番号まで聞き、実際に突入すると豪語した。



 しかして後日、この「変態紳士」は実際にそのホテルに泊まり、どんな変化が起こるかをリアルタイムで書き込む、いわゆる「実況スレ」を敢行した。
 彼は部屋に着くなり荷物をまとめて全裸となり、部屋の中央に座り込んだ。いついかなる時にもエロ女幽霊を迎えるためである。
 彼はその「戦闘スタイル」のまま夜を過ごしたが、残念ながらその夜は件の幽霊は現れなかった。

 2日目。
 その日も紳士は例の「戦闘スタイル」で幽霊を待った。全神経を集中し、視覚だけでなく音にも耳を傾けた。
 しかし、何かくすくすと笑う声が聞こえたが、一向に幽霊は現れない。

 3日目。
 今日も今日とて、彼はいつもの格好で幽霊を待った。
 しかし、その日も待てども待てどもやはり幽霊は現れない。
 とその時、耳元で女の声が聞こえた。
 一言。たった一言。


「粗チン……。」


 この一言で、紳士の心は折れてしまった。
 彼は涙を堪えながらそのホテルを後にしたという。


 この話、結局のところは笑い話なのだが、だがしかし、私は彼の勇気ある行動に敬意を払いたい。
 なにしろ、目的が不純とはいえ実際に行動に移しているからだ。幽霊が出るということをわかっていながらそこに向かう。それがどれだけ難しいことか。
 男の価値とはの大きさでは無い。度胸の大きさなのだ。
 この男はそのことに気づかせてくれた素晴らしい紳士だ。
 …蛇足だが私は「粗チン」ではない、ということも付け加えておこう。
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