奇談

hyui

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《語源》馬鹿

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誰かを蔑む時。煽る時。または罵る時。
人は時にこの言葉を言うだろう。
「馬鹿」と。
まあ阿呆だの間抜けだの言う人も居るだろうが、今回は「馬鹿」として取り上げさせていただきたい。

さて、この「馬鹿」という言葉。
何の気なしに使っているが、何故「馬鹿」なのだろうか、と思った方はいらっしゃるだろうか。
何を「馬鹿」なと笑うかもしれないが、私は気になってしまったのだ。
何故「馬」と「鹿」なのか。
別に「豚」と「猪」で「豚猪とんちょ」でもいいだろう。あるいは「蛾」と「蝶」を合わせて「蛾蝶がちょう」と読ませても良いではないか。(それこそ今なら“ガチョーン”である程度通じそうではないか。)
とまあ、いつまでも「馬鹿」なことを言っていては埒があかないので、いつもの通り調べてみることにした。

そもそも「馬鹿」とはどういう意味か。
広辞苑、大辞泉によると「馬鹿」の意味は次の通りだという。

愚かなこと。
社会の常識に欠けていること(「専門馬鹿」・「役者馬鹿」・「親馬鹿」などと用いる)。
知能が劣り愚かなこと。
つまらないこと。無益なこと。
役に立たないこと。機能を果たさないこと。

うーむ。改めてみると、なかなかに酷い罵倒である。
さてさて、この「馬鹿」という言葉、語源には諸説があり、元々はサンスクリット語の「愚か」を意味する「moha」から「莫迦ばか」となり、そこに当て字をしていまの「馬鹿」となった、という説がある。
なるほど。確かに古い小説などを読んでいると、時折この「莫迦」という言葉にお目に掛かることがある。これは語源としてはかなり有力であろう。

また家が破産するほど散財をする愚かな行為を為すものとして「破家はか」から派生したという説もあるそうだ。
なるほど。これも最もらしい説だ。確かに家を破産させるような行為は愚か以外の何者でもない。私もエロサイトの架空請求で十数万を父親に払わせてしまったことがあるが、全くもって愚かと呼ぶに相応しいだろう。

話を戻すが、「馬鹿」の語源の説についてはまだある。
それが史記の「指鹿為馬(しかをさしてうまとなす)」という故事から来ているという説だ。
それは以下のような内容のようだ。
秦の・胡亥の時代、権力をふるった宦官の趙高は謀反を企み、廷臣のうち自分の味方と敵を判別するため一策を案じた。彼は宮中に鹿を曳いてこさせ『珍しい馬が手に入りました』と皇帝に献じた。皇帝は『これは鹿ではないのか』と尋ねたが、趙高が左右の廷臣に『これは馬に相違あるまい?』と聞くと彼を恐れる者は馬と言い、彼を恐れぬ気骨のある者は鹿と答えた。趙高は後で、鹿と答えた者をすべて殺したという。

つまり、本当は鹿なのに自分の権勢を誇示せんが為に馬と言わせ、逆らった者は皆殺しにして晒し上げるというわけだ。何とも恐ろしい話だし、権力者であるはずの皇帝をも、「物を知らぬ愚か者」と「馬鹿」にした話である。

今の国の権力のトップに居座っている面々も相当の「馬鹿」だが、まだ「馬鹿」を「馬鹿」といえるだけこの国はマシなのかもしれない。
国が変われば、権力者を「馬鹿」と罵った者は「国家の重要機密を漏洩した」として処刑されることだってあるのだから。「馬鹿」という言葉も「馬鹿」にできない。

とまあ、ここまで「馬鹿」について調べてみて、何とも歴史があるのだなあ、と感じながら、心のどこかで私はこう思う。

俺何でこんな「馬鹿」なことやってんだろう、と。
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