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伝言ゲーム
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とある国の国境付近。
隣国の動きを伺っていた一兵士が、遠方に何か以上を発見した。気になって望遠鏡を覗き込んで見ると、なんとこちらの国に向けて隣国が攻撃の準備をしているではないか。その見るからに巨大なミサイルは、こちらの国を瞬時に壊滅させる程の威力を容易に想像させた。
「た、大変だ…!すぐにこの事を本国へ伝えないと…!」
国境付近の歩哨は、急ぎ軍部へこのことを本国に伝えるように報告した。
「それは本当か!?」
「この目で見ました。間違いありません!隣国は我々の国を今にも攻撃しようとしております。一刻も早く本国に連絡し対策を!」
「分かった!任せておけ!」
…報告を受けた国境付近の軍司令部は、この事を国の防衛省に連絡した。
「国境付近にて、隣国がこちらを攻撃しようとしているとの報告を受けた。我々は一刻も早く対策を行いたい。そこで上層部の方々に至急攻撃許可を頂きたく存じます!」
「了解しました。そのように上に連絡致しましょう。」
そうして連絡を受けた防衛省は緊急会議を開いた。
「国境付近の軍司令部から報告がありました。緊急事態のようです。」
「これだけの仰々しい会議を開くからには、それなりの理由があるんでしょうな。」
「はい。リン・コックなる者が我々を攻撃しようとしていると…。」
「なんですと!」
騒然とする会議室。ざわめく上層部に、防衛省大臣は一喝した。
「皆様、今は戸惑っている場合ではございません。一刻も早くそのリン・コックとやらを見つけなければ。これはつまりクーデターを計画している者がいるという密告なのです。早くしなければ報告をくれた兵士達も危ない。」
かくして、軍主導で国内からリン・コックなる人物を探し出すこととなった。軍部内の人間のみならず、一般市民まで捜査の手を広げた結果、とうとうその人物は見つかった。
捕まったリン・コックは、田舎暮らしの農夫で、齢60は越えようかという老人だった。
「お、お役人様。これは一体どういう事でございますか?私が一体何をしたというのですか?」
捕まったリン・コックは訳もわからず、ただただ怯え震えるしかなかった。
「…リン・コック。お前に国家転覆を画策しているとの疑いがかけられている。今よりお前の処刑を始める。」
「そ、そんな!これは何かの間違いでございます!このような爺いにそのような事ができるはずがごさいませぬ!後生でございます!どうかお見逃しを!」
「証拠は上がっている!問答無用だ!総員、撃てい!」
大佐の命により、リン・コックに向けて一斉射撃がなされた。
血だるまとなったリン・コックはもはや何も語らず、ただの肉塊と化した。
「…謀反人、リン・コックを処刑致しました。」
「うむ…。ご苦労だった。しかし、国家転覆を図った罪人とはいえ、我が国民を死なせてしまうのは心が痛むな…。」
「首相。恐れながら、我々はこの国の平和を守らねばなりません。そのためならば、致し方ない犠牲なのではないでしょうか?」
「…そうだな…。」
憂鬱な表情で報告を聞く首相。と、その報告の最中に、緊急の連絡が入った。
「申し上げます!隣国の国境付近より、我が国に向けてミサイルが発射されました!」
「何だと!」
「馬鹿な!国境付近に駐在していた軍部から事前の報告はなかったのか!」
「ありませんでした!」
「なんて事だ…。ミサイルは今はどの地点だ?」
「もう間も無く我が国に落下してしまいます!迎撃も間に合いません!」
「何故だ…。何故国境付近にそんな兵器がありながら何の報告もしなかったのだ…!」
「なあ、大佐。もしかして、なのだが…。」
青白い顔で首相は大佐に尋ねた。
「防衛省が以前受けた報告、あれはもしかして隣国が攻撃しようとしているのを聞き間違えたのではないか?」
「そ、そんな…。では我々は、全く無駄な労力を使い、罪も無い市民を処刑したというのですか…?」
…もう彼らに後悔している暇はなかった。
程なくしてミサイルはとある国に着弾し、全面が焦土と化していった。
隣国の動きを伺っていた一兵士が、遠方に何か以上を発見した。気になって望遠鏡を覗き込んで見ると、なんとこちらの国に向けて隣国が攻撃の準備をしているではないか。その見るからに巨大なミサイルは、こちらの国を瞬時に壊滅させる程の威力を容易に想像させた。
「た、大変だ…!すぐにこの事を本国へ伝えないと…!」
国境付近の歩哨は、急ぎ軍部へこのことを本国に伝えるように報告した。
「それは本当か!?」
「この目で見ました。間違いありません!隣国は我々の国を今にも攻撃しようとしております。一刻も早く本国に連絡し対策を!」
「分かった!任せておけ!」
…報告を受けた国境付近の軍司令部は、この事を国の防衛省に連絡した。
「国境付近にて、隣国がこちらを攻撃しようとしているとの報告を受けた。我々は一刻も早く対策を行いたい。そこで上層部の方々に至急攻撃許可を頂きたく存じます!」
「了解しました。そのように上に連絡致しましょう。」
そうして連絡を受けた防衛省は緊急会議を開いた。
「国境付近の軍司令部から報告がありました。緊急事態のようです。」
「これだけの仰々しい会議を開くからには、それなりの理由があるんでしょうな。」
「はい。リン・コックなる者が我々を攻撃しようとしていると…。」
「なんですと!」
騒然とする会議室。ざわめく上層部に、防衛省大臣は一喝した。
「皆様、今は戸惑っている場合ではございません。一刻も早くそのリン・コックとやらを見つけなければ。これはつまりクーデターを計画している者がいるという密告なのです。早くしなければ報告をくれた兵士達も危ない。」
かくして、軍主導で国内からリン・コックなる人物を探し出すこととなった。軍部内の人間のみならず、一般市民まで捜査の手を広げた結果、とうとうその人物は見つかった。
捕まったリン・コックは、田舎暮らしの農夫で、齢60は越えようかという老人だった。
「お、お役人様。これは一体どういう事でございますか?私が一体何をしたというのですか?」
捕まったリン・コックは訳もわからず、ただただ怯え震えるしかなかった。
「…リン・コック。お前に国家転覆を画策しているとの疑いがかけられている。今よりお前の処刑を始める。」
「そ、そんな!これは何かの間違いでございます!このような爺いにそのような事ができるはずがごさいませぬ!後生でございます!どうかお見逃しを!」
「証拠は上がっている!問答無用だ!総員、撃てい!」
大佐の命により、リン・コックに向けて一斉射撃がなされた。
血だるまとなったリン・コックはもはや何も語らず、ただの肉塊と化した。
「…謀反人、リン・コックを処刑致しました。」
「うむ…。ご苦労だった。しかし、国家転覆を図った罪人とはいえ、我が国民を死なせてしまうのは心が痛むな…。」
「首相。恐れながら、我々はこの国の平和を守らねばなりません。そのためならば、致し方ない犠牲なのではないでしょうか?」
「…そうだな…。」
憂鬱な表情で報告を聞く首相。と、その報告の最中に、緊急の連絡が入った。
「申し上げます!隣国の国境付近より、我が国に向けてミサイルが発射されました!」
「何だと!」
「馬鹿な!国境付近に駐在していた軍部から事前の報告はなかったのか!」
「ありませんでした!」
「なんて事だ…。ミサイルは今はどの地点だ?」
「もう間も無く我が国に落下してしまいます!迎撃も間に合いません!」
「何故だ…。何故国境付近にそんな兵器がありながら何の報告もしなかったのだ…!」
「なあ、大佐。もしかして、なのだが…。」
青白い顔で首相は大佐に尋ねた。
「防衛省が以前受けた報告、あれはもしかして隣国が攻撃しようとしているのを聞き間違えたのではないか?」
「そ、そんな…。では我々は、全く無駄な労力を使い、罪も無い市民を処刑したというのですか…?」
…もう彼らに後悔している暇はなかった。
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