15 / 18
白か黒か
しおりを挟む
夏も過ぎ、秋に差し掛かる頃。
未だに夏休みを満喫するアキオとハルコは、休暇を利用して田舎に旅行に来ていた。
「やっぱ、田舎はいいよな」
「そうね。のどかでいいわね。」
新幹線での旅行もいいが、車でゆったり進む旅行もまた味があっていい。
流れる風景を眺めながら、お気に入りの音楽を流し、のどかな雰囲気を楽しむ…。
なんて風に呑気に走っていたら、道に迷ってしまった。
「困ったな…。道に迷っちまった。」
「まあ、大変。どうしましょう。」
「あそこの人に聞いてみようか。」
少し向こうに人影が見える。アキオは村人と思い、道を尋ねることにした。
「あのう。少しお聞きしたいんですが…。」
「!?」
アキオの声を聞いた途端、村人と思われる男はこちらに向けて猟銃を構えた。
「わ!わ!な、何ですか!いきなり!」
「大変だわ。」
「どうもこうもねえ!俺の質問に答えろ!」
「ちょ、ちょっと落ち着いてください!いきなりそんなもん突きつけられて、質問に答えろ!って…!」
慌てて応対するアキオを、男は少し訝しんでいたが、やがて気が済んだのか銃口を下ろした。
「…いきなりすまない。実はこの界隈で困った事態が起きてな。」
「困った事態?」
「口で説明するより、見てもらった方が早い。ついて来てくれ。」
言われるがままに、アキオとハルコはその男について行った。
しばらく歩いた先で、何人かが倒れているのが目に入った。
「た、大変だ!行き倒れ!?病気か!?とにかく病院へ連れてかないと!」
「大変だわ。」
「二人とも落ち着け。あれは人間じゃない。近づいてよく見てみろ。」
男に促されて恐る恐る見てみると、全員顔の部分が人間ではなかった。からくり人形というか、般若の面というか、とにかく人の顔を模してはいるものの、人からはかけ離れた恐ろしい姿をしていた。
「な、な、なんだ!?こいつらは!?」
「大変だわ。」
「驚いたろう。こいつらが人間に化けて里の奴らを襲ってるんだ。もうほとんどこいつらにやられちまった。」
「人間に化けてるって、こいつらは一体…?」
「詳しいことは分からんが、人工知能が進化して人間に成り代わろうとしているらしい。どうやら全国のあちこちに潜んでるみたいだな。」
「大変だわ。」
「それであんな応対したんですね。しかし、あのやり取りでなんで俺が人間だって分かったんです?」
「ああ。奴らは見た目は人間でも、感情が希薄な傾向があってな。あんな風に銃で脅されてもビクともしないんだ。それが奴らと人間の数少ない違いってやつかな。」
「へー…。」
アキオは改めて人工知能の遺体(?)に目をやった。
人工知能の進歩は凄まじいものがある。こうして人間そっくりの姿で侵略をひっそりと始めるなんて…。しかし、いつか成り替わる日が来たとしてもそれは今じゃない。彼らには人間の心を真似ることはまだできないんだから…。
ドサリ。
背後で誰かが倒れる音がした。
「…だわ。大変だわ。大変だわ。大変だわ。大変…」
ハルコの声だ。だが何かおかしい。同じ言葉を繰り返し繰り返し呟いている。
「ワレワレノショウタイガバレテイル。タイヘンタイヘンタイヘンタイヘン。」
…そういえばハルコは変だった。
銃で脅されても怯えなかったし、死体を見ても驚かなかった。
まさか…。まさか…。
「アキオサン。コッチヲムイテ。」
ハルコの声が心なしか機械的な声に聞こえてきた。
…いや、そんなはずない。ハルコは俺の彼女だ。そうだ。振り向けばいつものハルコが見えるはずだ。そう。振り向けばいつもの…。
未だに夏休みを満喫するアキオとハルコは、休暇を利用して田舎に旅行に来ていた。
「やっぱ、田舎はいいよな」
「そうね。のどかでいいわね。」
新幹線での旅行もいいが、車でゆったり進む旅行もまた味があっていい。
流れる風景を眺めながら、お気に入りの音楽を流し、のどかな雰囲気を楽しむ…。
なんて風に呑気に走っていたら、道に迷ってしまった。
「困ったな…。道に迷っちまった。」
「まあ、大変。どうしましょう。」
「あそこの人に聞いてみようか。」
少し向こうに人影が見える。アキオは村人と思い、道を尋ねることにした。
「あのう。少しお聞きしたいんですが…。」
「!?」
アキオの声を聞いた途端、村人と思われる男はこちらに向けて猟銃を構えた。
「わ!わ!な、何ですか!いきなり!」
「大変だわ。」
「どうもこうもねえ!俺の質問に答えろ!」
「ちょ、ちょっと落ち着いてください!いきなりそんなもん突きつけられて、質問に答えろ!って…!」
慌てて応対するアキオを、男は少し訝しんでいたが、やがて気が済んだのか銃口を下ろした。
「…いきなりすまない。実はこの界隈で困った事態が起きてな。」
「困った事態?」
「口で説明するより、見てもらった方が早い。ついて来てくれ。」
言われるがままに、アキオとハルコはその男について行った。
しばらく歩いた先で、何人かが倒れているのが目に入った。
「た、大変だ!行き倒れ!?病気か!?とにかく病院へ連れてかないと!」
「大変だわ。」
「二人とも落ち着け。あれは人間じゃない。近づいてよく見てみろ。」
男に促されて恐る恐る見てみると、全員顔の部分が人間ではなかった。からくり人形というか、般若の面というか、とにかく人の顔を模してはいるものの、人からはかけ離れた恐ろしい姿をしていた。
「な、な、なんだ!?こいつらは!?」
「大変だわ。」
「驚いたろう。こいつらが人間に化けて里の奴らを襲ってるんだ。もうほとんどこいつらにやられちまった。」
「人間に化けてるって、こいつらは一体…?」
「詳しいことは分からんが、人工知能が進化して人間に成り代わろうとしているらしい。どうやら全国のあちこちに潜んでるみたいだな。」
「大変だわ。」
「それであんな応対したんですね。しかし、あのやり取りでなんで俺が人間だって分かったんです?」
「ああ。奴らは見た目は人間でも、感情が希薄な傾向があってな。あんな風に銃で脅されてもビクともしないんだ。それが奴らと人間の数少ない違いってやつかな。」
「へー…。」
アキオは改めて人工知能の遺体(?)に目をやった。
人工知能の進歩は凄まじいものがある。こうして人間そっくりの姿で侵略をひっそりと始めるなんて…。しかし、いつか成り替わる日が来たとしてもそれは今じゃない。彼らには人間の心を真似ることはまだできないんだから…。
ドサリ。
背後で誰かが倒れる音がした。
「…だわ。大変だわ。大変だわ。大変だわ。大変…」
ハルコの声だ。だが何かおかしい。同じ言葉を繰り返し繰り返し呟いている。
「ワレワレノショウタイガバレテイル。タイヘンタイヘンタイヘンタイヘン。」
…そういえばハルコは変だった。
銃で脅されても怯えなかったし、死体を見ても驚かなかった。
まさか…。まさか…。
「アキオサン。コッチヲムイテ。」
ハルコの声が心なしか機械的な声に聞こえてきた。
…いや、そんなはずない。ハルコは俺の彼女だ。そうだ。振り向けばいつものハルコが見えるはずだ。そう。振り向けばいつもの…。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
東京カルテル
wakaba1890
ライト文芸
2036年。BBCジャーナリスト・綾賢一は、独立系のネット掲示板に投稿された、とある動画が発端になり東京出張を言い渡される。
東京に到着して、待っていたのはなんでもない幼い頃の記憶から、より洗練されたクールジャパン日本だった。
だが、東京都を含めた首都圏は、大幅な規制緩和と経済、金融、観光特区を設けた結果、世界中から企業と優秀な人材、莫大な投機が集まり、東京都の税収は年16兆円を超え、名実ともに世界一となった都市は更なる独自の進化を進めていた。
その掴みきれない光の裏に、綾賢一は知らず知らずの内に飲み込まれていく。
東京カルテル 第一巻 BookWalkerにて配信中。
https://bookwalker.jp/de6fe08a9e-8b2d-4941-a92d-94aea5419af7/
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
古屋さんバイト辞めるって
四宮 あか
ライト文芸
ライト文芸大賞で奨励賞いただきました~。
読んでくださりありがとうございました。
「古屋さんバイト辞めるって」
おしゃれで、明るくて、話しも面白くて、仕事もすぐに覚えた。これからバイトの中心人物にだんだんなっていくのかな? と思った古屋さんはバイトをやめるらしい。
学部は違うけれど同じ大学に通っているからって理由で、石井ミクは古屋さんにバイトを辞めないように説得してと店長に頼まれてしまった。
バイト先でちょろっとしか話したことがないのに、辞めないように説得を頼まれたことで困ってしまった私は……
こういう嫌なタイプが貴方の職場にもいることがあるのではないでしょうか?
表紙の画像はフリー素材サイトの
https://activephotostyle.biz/さまからお借りしました。
パワハラ女上司からのラッキースケベが止まらない
セカイ
ライト文芸
新入社員の『俺』草野新一は入社して半年以上の間、上司である椿原麗香からの執拗なパワハラに苦しめられていた。
しかしそんな屈辱的な時間の中で毎回発生するラッキースケベな展開が、パワハラによる苦しみを相殺させている。
高身長でスタイルのいい超美人。おまけにすごく巨乳。性格以外は最高に魅力的な美人上司が、パワハラ中に引き起こす無自覚ラッキースケベの数々。
パワハラはしんどくて嫌だけれど、ムフフが美味しすぎて堪らない。そんな彼の日常の中のとある日の物語。
※他サイト(小説家になろう・カクヨム・ノベルアッププラス)でも掲載。
夏色パイナップル
餅狐様
ライト文芸
幻の怪魚“大滝之岩姫”伝説。
城山市滝村地区では古くから語られる伝承で、それに因んだ祭りも行われている、そこに住まう誰しもが知っているおとぎ話だ。
しかしある時、大滝村のダム化計画が市長の判断で決まってしまう。
もちろん、地区の人達は大反対。
猛抗議の末に生まれた唯一の回避策が岩姫の存在を証明してみせることだった。
岩姫の存在を証明してダム化計画を止められる期限は八月末。
果たして、九月を迎えたそこにある結末は、集団離村か存続か。
大滝村地区の存命は、今、問題児達に託された。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる