破滅の足音

hyui

文字の大きさ
上 下
21 / 36

セカンドライフ

しおりを挟む
最近同僚がネットゲームにハマっている。「セカンドライフ」というネットゲームだ。
仮想空間に自分のキャラを投影し、そこで新しい生活を営む、という内容らしい。
「とにかく面白いんだって!お前もやってみろよ!」
「いや、遠慮しとくよ…。」
同僚は俺を何度も誘ってきたが、その度に断ってきた。俺はそういうゲームの類は苦手なんだ。
「お前も始めたらわかるって!俺最近、自分の店開いてさ~!」
「へえ。」
「これが結構人気で儲かってんのよ!いや~、こんな快感、ゲームじゃなきゃ感じられないぜ!」
「ふ~ん。」
俺は話半分で仕事に戻ることにした。
「あ、おい。まてよ!話はまだまだあるぜ!」
「悪いな。俺は今のライフの方が大事なんだよ。」
あいつは話し始めたらきりがない。適当なところで切り上げるのが一番だ。


翌日、また例の同僚が話しかけてきた。
「よお!俺この前セカンドライフでさぁ、とうとう結婚しちゃったよ~。」 
「結婚!?そんなこともできるのか!」
「おうよ。それがまたかわいいんだよ。これが。」
かわいいって…、所詮ゲームのキャラだろ?
「その子がなあ、ずっとよんでくれるんだよ。おれのこと。もう彼女にゾッコンだね。」
「…ゾッコンなのはいいけど、程々にしとけよ。目にクマできてるぞ。」
「大丈夫だって。お前もやってみろよ。面白いから。」

またその翌日。同僚の様子がおかしい。
「お、おい。大丈夫か?」
「まなみが呼んでる…。まなみが呼んでる…。まなみが呼んでる…。」
同僚の目は視点が定まらず、死んだ魚のように濁っていた。口はだらんと下がり、唾液も垂れ流しだ。
「おい!しっかりしろよ!」
「まなみ…。まなみ…。」
同僚はブツブツ言いながら去っていった。

一ヶ月後。しばらく会社に来ていなかった同僚が遺体で発見された。パソコン画面の前で衰弱死していたそうだ。
「どうしてそこまで…。」
気になった俺は、例の「セカンドライフ」というゲームを始めてみることにした。

ゲームの立ち上げ後、画面一杯に「セカンドライフ」の文字が映され、その後ユーザー登録画面に移る……。


ーねえ…。


ユーザー名は…適当でいいか。とりあえず入って奴の死の真相を調べるんだ。

ーねえ…。


さっきから、誰の声だ?誰かに話しかけられてる…。


ー私、まなみよ。1人で寂しいの。


まなみ…。あいつがうわごとのように言っていた名前…。

ーねえ、遊びましょう?

画面が急に真っ暗になり、続いて文字の羅列が画面一杯に…。


アソビマショウアソビマショウアソビマショウアソビマショウアソビマショウアソビマショウアソビマショウアソビマショウアソビマショウアソビマショウアソビマショウアソビマショウ……



「おい、お前大丈夫か?」
「え?なにがですか?」
「目にクマできてるぞ。」
「大丈夫ですよ。最近ネットゲームにハマってまして、セカンドライフって言うんですけど…。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

奇談

hyui
ホラー
真相はわからないけれど、よく考えると怖い話…。 そんな話を、体験談も含めて気ままに投稿するホラー短編集。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

監獄の部屋

hyui
ライト文芸
初投稿となります。よろしくお願いします。 異次元に迷い込んだ男の話他、短篇集となっています。 2017/07/24 一まず、完結といたします。 もっと面白いものが書けるよう、これからも頑張ります。 読んで下さった方々、ありがとうございました!

処理中です...