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第二章

第二十三話 「食事の考慮」

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 夜が更け始めだんだんと肌寒くなってきた頃、俺は夕飯を何にしようかと考えながら、店から持ってきた調味料を地面に並べた。
 そんな俺の様子をにこやかな表情でフェイと琢磨が見つめる中、エルフの4人はきのこや野菜などを探してきてくれた。

 「ふー……。今あるのは味噌、煮干、醤油、塩、砂糖に餅と昼間食べようと思っていたフルーツ大福だろ?あとは……、水ぐらいか」

 もちろん食器なども用意してある。
 絶対にありえないと思っていたが、もしかしたら野宿もあると思って用意していたのだった。
 まさか本当に野宿になるとは思ってもみなかったがな。

 「で、そこの二人にお願いがあるんだけど、ここにシソダレがある。お茶漬けかお雑煮にするか迷っているんだが……、どっちがいい?」

 俺は現世の本で読んだことがあった。
 大抵ファンタジー系の本とか読んでみると、エルフは乳酸菌のものや、獣臭いもの、卵とかも食べれないと聞いている。
 だから、大抵そういうのを使わずにできる食べ物にしたいと思っていたら、この二つの料理が出てきた。
 もちろん、どっちかは明日の朝のご飯にするつもりだ。

 「俺はー、雑煮が食いたい!」

 「僕はお茶漬けっての食べてみたいなー……」

 二人の意見を聞いて思ったことがある。
 バラバラだな。
 まあ、どっちも久し振りに食べるからどんな作り方でも上手いんだろうけど、と深くため息をついてから悩んでいたらエルフの姫さまの従者の男が話しかけてきた。

 「あの、我々は肉や牛乳などそういうのは食べれないのですが……」

 「ああ、大丈夫どっちもそういうの使用しないで作るからさ」

 「ですが、人間にそんな技術があるとは思えません……」

 だろうなと俺も頷きながら聞いていた。
 実際にここの人にそんな技術があるとは思えない。

 だけど、お雑煮もお茶漬けもそこまで作るのが難しいものではない。
 俺は大丈夫と言ってどちらを作るか考え始めた。

 すると、若きエルフ夫婦と思われる二人が俺から少し離れたところで、体育座りをしながら恐る恐る口を開いた。

 「あの、私たち、どっちも食べたことがないのですが……、美味しいのでしょうか?」

 俺はうまいとぐっと親指を立てると少しだけ表情が豊かになったのか、静かに笑い合っていた。
 夜は寒いだろうし、お鍋もあることだからお雑煮を作ることにした。

 できればハンバーグなどの肉厚な食べ物も食べたいが、俺にそんな技量はない。

 そう思って鍋にたっぷりの水に煮干を入れていく。

 「それは一体……」

 従者の男性が鍋をそっと覗くと俺は笑いながら煮干を差し出した。
 
 「これは煮干っていうんだ。出汁を取るのに最高なんだよ」

 男は感心するように様子を見つめていた。
 俺は少しの間水に浸して置いてから、下にある薪に火をつけた。

 「よしっ、次に味噌を入れていくかな……」

 そう言って袋から取り出したのは白味噌だった。
 俺の出身では白味噌を使うことが多かった。

 「へー、裕也は白味噌かー、俺は赤味噌派だな」

 ケタケタとお腹を抱えながら笑っている琢磨を横目にみつめたまま、味付けが終わったところに根菜を入れていった。
 日本と変わらない野菜なので、すぐに根菜とか見分けがついた。
 もちろん、根菜から入れていく。

 近くの湖で獲った魚を肩から下げながら姫様が帰ってきた。

 「何だそのスープは」

 俺が作った食べ物に興味を示しているのか、魚の下処理を済ませながらチラチラとこちらの様子を伺っている。
 俺は笑いながら野菜を煮ながら、家から持ってきたもち米からついたお餅を鍋に投入した。

 それを見て何を入れたのかわからなかった姫様は勢いよく立ち上がった。

 「なんだそれは!私たちは……!」

 「姫様落ち着いてください、このスープからは獣の匂いは一切ありません」

 そう従者がなだめると、少し不機嫌そうな表情で大人しく座った。
 この人はいちいち文句をつけたがるんだなと頭の隅で思いながら苦笑していた。

 「よしっ、これはもう少しで完成っと……って、それ魚か?なら串挿しにして食べよう!」

 俺は昔キャンプをしながら過ごしていた時期もあったため、串に必要な木を加工して綺麗な棒を作り出した。
 串挿しという言葉を聞いて首をかしげていたエルフたちは、俺の手際の良さと魚をそのまま串に刺したのに驚いて固まってしまった。

 「よしっ、できた!あとは焼くだけ~」

 俺は色々とテンションが上がってきて、鼻歌交じりで作り出した。
 琢磨も同じようにテンションが上がっているのか、体を揺らしながら俺の料理を待っていた。

 そして鍋の中身がグツグツ言いながら煮てきたのを見て、味見をしてみた。

 うん、うまい!

 俺はそう思って皆にご飯をよそってあげた。

 「これは……、なんだ?普通のスープと違うような……」

 「ですがいい香りですよ?食べてみましょう……」

 そう言ってエルフたちは俺が作った料理に口をつけた。
 一口食べると、箸が進むのか一気に食べていった。

 それを見た琢磨とフェイも雑煮を食べ始めた。

 「なんだこれは、すっごいうまいじゃないか!」

 「さきほど言っていた料理人というのは本当だったんですねー……」

 「おいしい……」

 エルフの夫婦も喜んでくれたようで、焼きあがった魚と一緒に食べていった。
 そして、お腹いっぱいになったところで、家から持ってきたフルーツ大福を取り出した。

 それを見た琢磨以外の全員が首をかしげて覗き込んできた。

 「ああ、フルーツ大福だよ。結構うまいんだこれが。中身は、果実にあずきで作ったこし餡に、餅で包んでみたんだ。だから乳製品……、牛乳とか卵とか肉とかも入ってないから大丈夫だ!食べてみるか?」

 俺はそっと差し出して食べてもらうことにした。
 それを受け取ると、恐る恐る口にした。

 だけど、さっきとは違う感触に目を見開きながら出ていたもの全てなくなった。

 もちろん、まだあるから大丈夫だけど。

 「うまかったか?よかったよかった!」

 俺は満足そうに笑いながらエルフたちの食べっぷりに感動した。
 ここまでうまそうに食べてくれた人はいないからだ。

 もちろん、琢磨もフェイも喜んで食べてくれた。
 そんな俺たちはその日はすぐ眠ることにして、床に付いた。

 寒いので軽く火は炊いたままで。
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