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第二章

第二十一話「新たな力を手にして俺は強くなる!」

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 今にも殺されそうになっているエルフの男女を目の前にして、俺は何をしているんだろう。
 そう思っていた時だった。

 フェイの言葉を聞いて俺は後ろを振り返った。
 フェイは仮面を取りゆっくりと近づいてくる。

 「ふぇ、い……?」

 「大丈夫、君は十分彼らに認められてる……。願えば、彼らから加護がもらえるはず。さあ、願って?我に力を与えたまえ……、と」

 静かに唱えるように目を閉じながら呟くフェイを見て、俺は静かに祈りを捧げるようなポーズで両手を口元まで持って行き念じた。
 彼らを助ける強くて自信が持てるような力が欲しいと、願ったのだった。

 すると俺の体を何かが包み込んできた。

 それは魔法とは少し違う力だった。

 「これは……?」
 
 「裕也が光ってる……?」

 身体全てが光に包まれていたと思ったら、いきなり力が吸い込まれていくような感覚にとらわれて、数秒間意識が飛んでいた。
 意識が戻った時には、目に映るものがスローモーションのようにゆっくりと動いている。
 それに力も沸き上がってくる。

 「これなら、行けるっ!」

 俺はクナイに念を込めるように集中して、人間の足元めがけて投げつけた。
 草むらから一点にめがけて飛んでいくクナイが、エルフの顔のすぐ横を通り抜けて犯罪者の足の甲に突き刺さった。

 いきなりクナイが飛んできて、それも男の足に突き刺さったのを見たエルフの男女は辺りを見回した。
 
 「さすが、この森がさずけた力―― 精霊の道標フェアリーサインポーストゥだね」

 俺の耳に微かに聞こえる声に意識が持って行かれそうになったが、今はそんなことよりも彼女たちを助けるのが先だ。
 俺は急いで殺人犯の前に立ちはだかった。

 「なんだー、お前ー!?」

 「うるせえなー、俺か?俺はただのパティシエ……、料理人さ。それよりも、若い男女を殺そうとするなんてひどいんじゃないか……?」

 ああ、怖い。
 恐怖に怯えているのか、思っていることと違う言葉を口走っている。
 仕方がないだろう?

 だって、ここで引き下がっては男がすたるってもんだろう。
 自信は今でもないけどいい加減強くならなきゃダメだ。

 それに森の力も手に入れられたんだ。
 少しでも人のために使わないと力の持ち腐れになってしまうからな。

 「ああ?なんだ、てめー、俺のこと知らないってか!?俺様はな、シャドーアイスの中でも中核に位置する役割を持たせてもらってるんだよ。雑魚は引っ込んでな……っ!」

 そう言って大きなハンマーを俺の上に振り下ろしてきた。
 雑魚と言われても仕方ないくらい俺は弱かった。

 だけど、今は違う。
 フェイも言ってくれたとおり、俺は認められた。
 森の神に!
 静寂の森の番人をなめるんじゃねえ!

 俺は腰に刺していた小刀を引き抜きハンマーをお仕上げた。
 なんだろう、少し力を入れただけで上に押し出される感じがある。

 ハンマーで押し付けているのにも関わらず、俺が押し上げているのでその男は自分の立場に慌てふためいている。
 そりゃあ、弱いと思っていた人間にこんな簡単に負けそうになるなんて誰も思ってなかっただろうからな。

 俺はニヤつきながらハンマーを押しのけ、黒く光る小刀を尻餅をついたその男につきつけた。

 「今後この二人には指一本でも触れてみろ!俺が許さない!」

 睨むような目つきで見つめながら、怒鳴るように叫ぶと腰が抜けたのかその男は小便を漏らしながら逃げていった。
 俺は小さく呼吸をしたあと、殺されかけて怯えていた男女二人の方に振り返った。

 「……大丈夫ですか?」

 そっと声をかけると、紛い物でも見たような恐ろしそうな顔で後ろに下がっていく若き男女の姿があった。
 俺、なにかしたっけ?

 俺は小刀をそっと戻してからその様子をただ呆然として見つめていたのだった。
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