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第一章
第一話「現れた少年の意図とは」
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扉から差し込まれた光が眩しすぎて、俺は一歩二歩とゆっくりと後ろに引いていった。
そんな俺の腕を誰かが引っ張り出した。
「!?……何するんだよ!」
俺は引っ張られると同時に前にのめり込む形となった。
すぐにバランスを取らなければと思ったが、目の前には地面がありそのまま顔面をぶつけた。
痛い…。
すぐに感じた言葉だった。
そんな俺の頭の上から中性的な少年の声が聞こえた来た。
「だいじょーぶ?お兄さん?」
運良く地面は草むらだったから、そこまでの被害はなく擦り切れ程度におさまってくれた。
だが、顔中ににじむような痛みが広がり眉間にシワを寄せながら、声の主を見上げた。
俺は一瞬思考が止まった。
俺のことを見下ろしながら微笑むその姿は、思ったとおり少年だが素顔を見せないように口周り以外は仮面に覆われていて、素顔が見えない状態だった。
「お前、いったい誰だ…?」
俺はすぐに思ったことを口にした。
口と目は笑っているがどうにもその少年が不気味でしょうがなかった。
見透かすような目に寒気がしたのだ。
そんな俺の不安な気持ちを見抜かすように少年は顔を覗き込んできた。
「はははっ、怖いって顔してるねー。そんなに僕が怖い?」
俺はそんな少年の言葉に何も言えずにいた。
怖いなんて言えるわけがない。
だって、そんなこと言ったら何をされるかわからないからだ。
そんな恐怖を抱えたまま見つめていたら、少年はすぐに無邪気に笑い出した。
「本当にお兄さんって面白いねー。僕、お兄さんをこの世界に連れてきてよかったよー」
きゃっきゃっとはしゃぎくるっと一回転して楽しそうに笑っている。
こうやってみると、どこにでもいるような可愛らしい子供だ。
だけど、こんなところに少年がいることも、ここが俺の居た場所とは違うところということが何を企んでいるのか不安にさせるんだ。
唇を歯で軽く噛みながら態勢を整えて少年を見つめた。
少年は回るのをやめてこちらに近づいてきた。
「お兄さん、なんでこんなとこに連れてきたの?って顔してるよね?」
口にも出してないことをこの少年はわかるのだろうか。
俺は少年を見下ろしながらゆっくりと唾を飲み込んだ。
少年も俺の方を見つめながら優しく微笑んでくる。
そんな俺たちは数秒間見つめ合っていた。
でも、俺は何も言ってこない少年にしびれを切らして口を開いた。
「だから、何なんだ、お前は?!なんで俺はここにいる!」
勢いよく少年の両肩に手で押さえ込んだ。
だが、少年の体はびくともしない。
岩や鉛など硬いものを押しているようだった。
何なんだ、この子は…。
俺の頭の中では不安や恐怖などが混ざり合っていた。
それが顔に出てたのだろう、俺の頬を人差し指でつついてくる。
「お兄さん、そんな顔しないで?ちゃんと答えるから」
不安でいっぱいの俺の腕を引っ張りながら森の中に入っていく。
数分くらいたっただろうか。
どれくらい走ったかわからないけど足が疲れてきた。
そんな時だった。
いきなり少年は止まった。
俺の腕を掴んでいた手を離して光が差し込んできている小さな円の中に入り、こちらに向かっておいでと手招きをしていた。
「ここは……」
俺は少年に呼ばれてゆっくりと足をそちらに向かわせた。
その場所は、光が木々から差し込んでとても暖かいところだった。
少年は俺の様子に満足したのか、近くの切り株に腰をかけた。
すると、先程まで彼の周りには何もいなかったはずが森の動物たちでいっぱいになった。
「お兄さん、僕の話を聞いてくれる?」
小鹿の頭を撫でながら少しだけ下の方を俯く姿があった。
何故かその姿がどこか寂しそうにも見えた。
俺は小さく小刻みに頷き、彼の前にやってきて動物たちと同じように地べたに座り込んだ。
「あのね、この世界には戦争が続くせいで食べ物に困り続けている民たちがいるの」
小さい声で静かに話し始めた少年を俺は静かに耳を澄ました。
俺のいる世界は平和で戦争なんてないところだった。
まあ、北朝鮮とかがいつ攻めて来るかわからないから怖いもんだけど、この世界よりはまだましなんだろうなと話を聞いてふと思った。
少年は俺の不安な気持ちが少しでもなくなったことに安心したのか、目をつむりそのまま話を続けた。
「民たちはね?美味しいものが食べたい、心の潤いになる場所が欲しいって……」
そこで少年の言葉は止まった。
じっと俺の目を見つめ真剣そうな眼差しを向けながら腰掛けていた場所から立ち上がった。
そして俺の目の前までやってきたと思ったら、ゆっくりとその場にしゃがみこんで仮面を取り外した。
その彼の顔には大きな痣のようなものが浮かび上がっていた。
どうしたらこんなふうになるのか俺は衝撃を受けた。
「民の不安の塊でできた僕からのお願い……、民に幸福を、この世界の人に笑顔をもたらして欲しいんだ」
少年の熱い思いと俺の腕を掴む小さいがしっかりとした手、この少年は本気で世界を救って欲しいと願っているようだった。
そんな俺の腕を誰かが引っ張り出した。
「!?……何するんだよ!」
俺は引っ張られると同時に前にのめり込む形となった。
すぐにバランスを取らなければと思ったが、目の前には地面がありそのまま顔面をぶつけた。
痛い…。
すぐに感じた言葉だった。
そんな俺の頭の上から中性的な少年の声が聞こえた来た。
「だいじょーぶ?お兄さん?」
運良く地面は草むらだったから、そこまでの被害はなく擦り切れ程度におさまってくれた。
だが、顔中ににじむような痛みが広がり眉間にシワを寄せながら、声の主を見上げた。
俺は一瞬思考が止まった。
俺のことを見下ろしながら微笑むその姿は、思ったとおり少年だが素顔を見せないように口周り以外は仮面に覆われていて、素顔が見えない状態だった。
「お前、いったい誰だ…?」
俺はすぐに思ったことを口にした。
口と目は笑っているがどうにもその少年が不気味でしょうがなかった。
見透かすような目に寒気がしたのだ。
そんな俺の不安な気持ちを見抜かすように少年は顔を覗き込んできた。
「はははっ、怖いって顔してるねー。そんなに僕が怖い?」
俺はそんな少年の言葉に何も言えずにいた。
怖いなんて言えるわけがない。
だって、そんなこと言ったら何をされるかわからないからだ。
そんな恐怖を抱えたまま見つめていたら、少年はすぐに無邪気に笑い出した。
「本当にお兄さんって面白いねー。僕、お兄さんをこの世界に連れてきてよかったよー」
きゃっきゃっとはしゃぎくるっと一回転して楽しそうに笑っている。
こうやってみると、どこにでもいるような可愛らしい子供だ。
だけど、こんなところに少年がいることも、ここが俺の居た場所とは違うところということが何を企んでいるのか不安にさせるんだ。
唇を歯で軽く噛みながら態勢を整えて少年を見つめた。
少年は回るのをやめてこちらに近づいてきた。
「お兄さん、なんでこんなとこに連れてきたの?って顔してるよね?」
口にも出してないことをこの少年はわかるのだろうか。
俺は少年を見下ろしながらゆっくりと唾を飲み込んだ。
少年も俺の方を見つめながら優しく微笑んでくる。
そんな俺たちは数秒間見つめ合っていた。
でも、俺は何も言ってこない少年にしびれを切らして口を開いた。
「だから、何なんだ、お前は?!なんで俺はここにいる!」
勢いよく少年の両肩に手で押さえ込んだ。
だが、少年の体はびくともしない。
岩や鉛など硬いものを押しているようだった。
何なんだ、この子は…。
俺の頭の中では不安や恐怖などが混ざり合っていた。
それが顔に出てたのだろう、俺の頬を人差し指でつついてくる。
「お兄さん、そんな顔しないで?ちゃんと答えるから」
不安でいっぱいの俺の腕を引っ張りながら森の中に入っていく。
数分くらいたっただろうか。
どれくらい走ったかわからないけど足が疲れてきた。
そんな時だった。
いきなり少年は止まった。
俺の腕を掴んでいた手を離して光が差し込んできている小さな円の中に入り、こちらに向かっておいでと手招きをしていた。
「ここは……」
俺は少年に呼ばれてゆっくりと足をそちらに向かわせた。
その場所は、光が木々から差し込んでとても暖かいところだった。
少年は俺の様子に満足したのか、近くの切り株に腰をかけた。
すると、先程まで彼の周りには何もいなかったはずが森の動物たちでいっぱいになった。
「お兄さん、僕の話を聞いてくれる?」
小鹿の頭を撫でながら少しだけ下の方を俯く姿があった。
何故かその姿がどこか寂しそうにも見えた。
俺は小さく小刻みに頷き、彼の前にやってきて動物たちと同じように地べたに座り込んだ。
「あのね、この世界には戦争が続くせいで食べ物に困り続けている民たちがいるの」
小さい声で静かに話し始めた少年を俺は静かに耳を澄ました。
俺のいる世界は平和で戦争なんてないところだった。
まあ、北朝鮮とかがいつ攻めて来るかわからないから怖いもんだけど、この世界よりはまだましなんだろうなと話を聞いてふと思った。
少年は俺の不安な気持ちが少しでもなくなったことに安心したのか、目をつむりそのまま話を続けた。
「民たちはね?美味しいものが食べたい、心の潤いになる場所が欲しいって……」
そこで少年の言葉は止まった。
じっと俺の目を見つめ真剣そうな眼差しを向けながら腰掛けていた場所から立ち上がった。
そして俺の目の前までやってきたと思ったら、ゆっくりとその場にしゃがみこんで仮面を取り外した。
その彼の顔には大きな痣のようなものが浮かび上がっていた。
どうしたらこんなふうになるのか俺は衝撃を受けた。
「民の不安の塊でできた僕からのお願い……、民に幸福を、この世界の人に笑顔をもたらして欲しいんだ」
少年の熱い思いと俺の腕を掴む小さいがしっかりとした手、この少年は本気で世界を救って欲しいと願っているようだった。
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