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彼女と喧嘩した
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桶に冷水を貯めてそれを浴び、イラついた頭を冷やす。
だけど冷水は俺の体に触れた瞬間5割が蒸発したような気がした。
「何がわからず屋だよ。あいつの方がわからず屋だろ」
体を洗いながらそんな独り言をブツブツとつぶやく。
「俺の気持ちも察さずに自分のことばっか考えてさ、自分の感情に任せて人の話を聞かなくなるのはあいつの悪いとこだろ。さっさと治してくれ」
それになんだよあの首筋。浮気したならもうちょっとバレないようにしたらどうなんだ?
べつに浮気しようがしなかろうが正直俺はどうでもいいんだが。あいつみたいに心狭くないからな。
「てかなんで俺が決めたってことになってるんだよ。提案したのはあいつだろ」
俺はさっき彩羽に言われたことを思い出す。
少し昔に俺たちは《言いたいことは素直に言う》ということを決めていた。
それを決める経緯に至ったのは彩羽の発言だ。
《私はもう前世みたいに我慢してすれ違いたくない!》そう言われて俺が提案をした。《なら言いたいことは素直に言い合うか?》ってな。
それに元気よく頷いたのは彩羽だ。あくまでも俺は提案しただけだ。意見と最後に決めたのはあいつなのに──。
──なんで俺になすり付けるんだよ!
言葉には出てないが、髪の毛を掻き乱す。
はぁとため息をひとつ吐いて湯船を見る。
落ち着こうと思って湯船に入ろうと思ったのだが、よく考えてみれば彩羽の入ったあとだ。ってことはこの湯船には彩羽の匂いが染み付いている。
そんな考えに俺は鼻で笑ってお湯を全部抜く。
なーにが彼女が入ったあとの風呂だよ。今この状況ではなんも感じんわ。それどころかイライラが増すわ!
適当にタオルで体を拭いて風呂を出る。
そしてさっき強く閉めた扉のドアノブを握って色々考える。
寝てろ寝てろ寝てろ寝てろ。地面で寝てろ。百歩譲って枕は渡すから地面で寝てろ。
そう願いながらドアを開けるが。
結果は俺の願いとは真逆で、ベッドの全てを占領して2つの枕を1つは抱き枕として使い、もう1つは頭の下に敷いていた。
俺は無言で彩羽が寝ているベッドの横に立ってシーツを引っ張る。
「じゃま。下で寝ろ」
「うるさい。そっちが下で寝て」
そう言いながら彩羽は枕を耳に押し当てる。
「むり。退かないのなら無理やり下ろすぞ」
「1個だけ枕上げるから黙って下で寝──キャッ!」
俺は話している途中に彩羽をベッドから引きずり下ろす。
俺の足元で仰向けになった彩羽に睨まれるが俺は無視してベッドの上に寝転がる。
「無理やり下ろすって言っただろ。今抱いてるその枕で下で寝ろ」
「ホント性格悪い」
そう言いながら彩羽が立ち上がってなにやら詠唱を始めだした。
「ここで魔法使うのは禁止だぞ」
「──身体強化。邪魔だから──下りて!」
「うわっ!バカ!」
身体強化された彩羽に俺はあっさり飛ばされてしまう。
俺が飛ばされたのを鼻で笑って彩羽は余裕な笑みでベッドに寝転がる。
「ほーん。そんなことすんだな?」
「そっちが先にしてきたんでしょ」
ゆっくりと彩羽に近づきながら口を開く。
「覚悟しろよ?」
彩羽も体を起こして俺の方を向く。
「そっちこそ覚悟しなさい?」
その日の夜は落として落とされの繰り返しで結局一睡も出来なかった。
だけど冷水は俺の体に触れた瞬間5割が蒸発したような気がした。
「何がわからず屋だよ。あいつの方がわからず屋だろ」
体を洗いながらそんな独り言をブツブツとつぶやく。
「俺の気持ちも察さずに自分のことばっか考えてさ、自分の感情に任せて人の話を聞かなくなるのはあいつの悪いとこだろ。さっさと治してくれ」
それになんだよあの首筋。浮気したならもうちょっとバレないようにしたらどうなんだ?
べつに浮気しようがしなかろうが正直俺はどうでもいいんだが。あいつみたいに心狭くないからな。
「てかなんで俺が決めたってことになってるんだよ。提案したのはあいつだろ」
俺はさっき彩羽に言われたことを思い出す。
少し昔に俺たちは《言いたいことは素直に言う》ということを決めていた。
それを決める経緯に至ったのは彩羽の発言だ。
《私はもう前世みたいに我慢してすれ違いたくない!》そう言われて俺が提案をした。《なら言いたいことは素直に言い合うか?》ってな。
それに元気よく頷いたのは彩羽だ。あくまでも俺は提案しただけだ。意見と最後に決めたのはあいつなのに──。
──なんで俺になすり付けるんだよ!
言葉には出てないが、髪の毛を掻き乱す。
はぁとため息をひとつ吐いて湯船を見る。
落ち着こうと思って湯船に入ろうと思ったのだが、よく考えてみれば彩羽の入ったあとだ。ってことはこの湯船には彩羽の匂いが染み付いている。
そんな考えに俺は鼻で笑ってお湯を全部抜く。
なーにが彼女が入ったあとの風呂だよ。今この状況ではなんも感じんわ。それどころかイライラが増すわ!
適当にタオルで体を拭いて風呂を出る。
そしてさっき強く閉めた扉のドアノブを握って色々考える。
寝てろ寝てろ寝てろ寝てろ。地面で寝てろ。百歩譲って枕は渡すから地面で寝てろ。
そう願いながらドアを開けるが。
結果は俺の願いとは真逆で、ベッドの全てを占領して2つの枕を1つは抱き枕として使い、もう1つは頭の下に敷いていた。
俺は無言で彩羽が寝ているベッドの横に立ってシーツを引っ張る。
「じゃま。下で寝ろ」
「うるさい。そっちが下で寝て」
そう言いながら彩羽は枕を耳に押し当てる。
「むり。退かないのなら無理やり下ろすぞ」
「1個だけ枕上げるから黙って下で寝──キャッ!」
俺は話している途中に彩羽をベッドから引きずり下ろす。
俺の足元で仰向けになった彩羽に睨まれるが俺は無視してベッドの上に寝転がる。
「無理やり下ろすって言っただろ。今抱いてるその枕で下で寝ろ」
「ホント性格悪い」
そう言いながら彩羽が立ち上がってなにやら詠唱を始めだした。
「ここで魔法使うのは禁止だぞ」
「──身体強化。邪魔だから──下りて!」
「うわっ!バカ!」
身体強化された彩羽に俺はあっさり飛ばされてしまう。
俺が飛ばされたのを鼻で笑って彩羽は余裕な笑みでベッドに寝転がる。
「ほーん。そんなことすんだな?」
「そっちが先にしてきたんでしょ」
ゆっくりと彩羽に近づきながら口を開く。
「覚悟しろよ?」
彩羽も体を起こして俺の方を向く。
「そっちこそ覚悟しなさい?」
その日の夜は落として落とされの繰り返しで結局一睡も出来なかった。
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