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痴漢 1

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 放課後の理科準備室。ノックもなしにガラガラと扉が開いて、一人の男子生徒がひょこっと顔を出した。
「野嶋先生ぇ、今日の授業で分かんないところがあったんですけどぉ」
「またお前か、望月」
 野嶋は思わずため息を吐く。この望月翔太は毎日のように理科準備室に来て、野嶋の仕事を邪魔するのだった。
「いいじゃないですか。学習意欲のある生徒を邪険にするなんて、教師失格ですよぉ?」
「……はぁ、全く。それで、何が分からないんだ?」
 野嶋に言われて、翔太はタタタッと野嶋の横に走り寄り、教科書を広げた。
「んーと、ここが分からないんですけどぉ」
 そう言いながら翔太は、座っている野嶋の膝の上に手を置いて、斜め前からコテンと小首をかしげ、野嶋の方を覗き込んだ。
「お、おい! 近すぎるぞ!」
 野嶋は翔太の手を取って遠ざけようとしたが、翔太は逆にその手を握り返した。
「わああ! 先生の手、すっごく大きい! 大人の男のかっこいい手だぁ」
 そう言いながら、翔太は野嶋の手をすりすりとさすって、上目遣いでじっと見上げた。
「な、なにをしている! 離せ!」
 パッと手を離して野嶋が𠮟りつけると、翔太はシュンとして「ごめんなさい、だって、先生の手、とってもかっこいいから……」と言った。
「んんっ」野嶋は軽く咳払いしてから言った。「ともかくっ、ちょっと近すぎるから、あそこにある椅子を持ってきて座りなさい。それから教えてあげるから」
「はーい……」
 翔太はのろのろと椅子を持ってきて座る。野嶋が教科書の記述を説明しだすと、じっと熱心に野嶋の顔を見つめていた。説明はあまり聞いていなかった。

(んー。今日も失敗だったな。ちょっとは意識してたみたいだけど)
 帰りの電車の中で、翔太は一人反省会を開いていた。
 翔太は野嶋先生のことが大好きだった。優しくて、包容力があって、顔もかっこいいし、引き締まった身体も素敵。だから毎日こうやって野嶋のもとに通って、アピールしているのだ。いつか手を出してもらえるんじゃないかと期待しながら。
(間近で見る野嶋先生の顔、めちゃくちゃかっこよかった……。あのまま顔が近付いてキスとかされちゃったら、気絶するかもしれない)
 ああ、キス、してみたいな。翔太は思う。そして、先生に制服を脱がされて、優しく触られて……。
「はぁ♡」
 思わず熱い吐息を漏らしながら翔太は携帯を取り出して、漫画アプリを起動させた。
(やった、更新来てる!)
 それは翔太が今夢中になっているエロBL漫画だった。高校教師とその教え子の話で、攻めの高校教師がどことなく野嶋に似ている。それで翔太は受けに自分を重ね合わせて、野嶋へのせつない恋心をこの漫画で慰めているのだった。
(家帰ったら読めないし、今読んじゃお)
 翔太の父親はとても厳しく、翔太は家では常に監視されている。自分の部屋も持たせてもらえず、ずっと家族の誰かの監視を受けながら勉強するか、家事の手伝いをするかしかできない。テレビも漫画も禁止だ。高校生になってからやっとスマホを持たせてもらえるようになったが、家の中でスマホを使って漫画を読むなんて、できるわけがなかった。だから翔太はいつも学校でこっそり読んだり、こうやって通学中に読んだりしていた。
 今日の更新話は、学校で我慢ができなくなった生徒が教師に無理やりセックスをねだって、お仕置きされる話だった。大好きな先生に体中をまさぐられてトロトロになった受けを、教師は焦らしに焦らす。
(ああ、こんなに先生に弄ってもらって、うらやましい……)
 教師にいじわるな言葉を掛けられながらペニスを扱かれる受けのトロ顔を見ていると、翔太のペニスはムクムクと大きくなっていった。
(どうしよう……。触りたい)
 翔太は家で自慰ができない。お風呂もニ十分以内に上がらなくちゃならないので、やる時間と場所がないのだ。ヤりたい盛りの翔太は、そのせいでいつも欲求不満状態にあった。
(電車混んでるし……、バレないかな)
 電車は身動き取れないほどではないが、それなりに混んでいて、よっぽど頑張って覗き込まないと周りの人の下半身なんか見えないだろう。
(ちょっとだけ…)
 翔太はベルトを解いてズボンのホックを外し、隙間から手を入れた。
「っはぁ」
 翔太のペニスは熱く勃ち上がって、ズボンの生地を押し上げていた。
“分かっているのか。こんな場所でここをこんなに大きくして。お前はなんて淫乱なんだ”
 漫画の中の教師のセリフを、脳内で野嶋に置き換えて妄想する。
「んっ、ふぅっ」
 今日触った先生の手、節くれだった大きな手だった。あの手で乱暴に扱かれたりしたら……。
「ぁふ、んっ」
 翔太は周りの人にバレないように、必死に声を押し殺していたが、それでも吐息交じりの小さな声が漏れてしまう。
(ズボンがキツくて、やっぱりちゃんとは扱けない……。イきたいのにっ)
 翔太はもどかしさのあまり、ゆるく腰を振ってしまう。
「ふぁっ、っんん」
“こんな場所でそんなエロい声で鳴いてたら、誰かに見られるかもしれんぞ。お前がド淫乱の変態だってバレちゃうな”
(ひどい……野嶋先生、いじわるだ……)
「んっ、んあっ」
 野嶋にいじわるなことを言われながらペニスを扱かれている想像をして、翔太はゾクゾクと体を震わせた。
(あっ、やっぱり、ズボンが邪魔でうまく扱けない……)
 ズボンのファスナーを開けて、ペニスを出してしまえたらどんなに気持ちいいだろう。そう思った時だった。
 ジジジッと小さな音を立てて翔太のズボンのファスナーが開けられたのである。
「え?」


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