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第五天 嫌な男現る(勇視点)
生産係の男1
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「よくやったな!」
係長がにこやかに笑い、ぽんと印鑑を押す。
「俺、私というよりも辰巳先輩と松元主任のおかげです」
「ははは。確かに、でもお前がまとめたんだろう?だからこれはお前の功績だと思っていいぞ」
なんでそんなこと知ってるんだろう?そう思いながらも誉められて悪い気分がするわけがない。俺は思わず笑みを漏らした。
「後は生産開発課に行って、コストを出してもらえ。昨日、話を通しておいたからな。頑張ってくれるだろう」
「はい」
俺は返してもらった報告書を握りしめ、頷いた。
「あ、実田さん」
部屋を出て、3階の生産開発課に行くため廊下を歩いていると休憩室から王さんが顔をのぞかせる。
それがすこぶる可愛らしくて、俺は思わずニマニマしてしまいそうになった。
「今日は残業ありそうですか?」
王さんは部屋から出てきて、俺にそう問う。
「……多分ないと思います」
昨日も本当はなかったんだ。だから今日も大丈夫のはず。
「それなら今日、お買い物に付き合ってもらってもよろしいですか?」
「はい」
俺は迷うことなく頷く。
「今日はおいしいもの作りますね」
王さんはにこやかにそう言うと俺に手を振り、部署に戻って行った。
王さん、可愛いな。
美味しいもの作るってなんだろう。
いやいや、ウキウキしてる場合じゃない。
俺はホモじゃない。単に同僚と仲直りして嬉しいだけなんだ。
あのキスだって過ちにすぎない。
俺と王さんは単なる仕事仲間なんだから。
「うわっつ」
3階の廊下を歩いていると、ふいに目の前に壁が立ちふさがる。俺は避けることができず、そのままぶつかって弾き飛ばされた。
「大丈夫?」
それは壁ではなく、人で、尻もちついて床に座り込んだ俺を心配げに見つめていた。
「す、すみません。俺、いや、私がぼーとしてまして」
俺は慌てて立ち上がり、頭を下げる。そして報告書を探そうときょろきょろしていると、視界に白い紙が入った。
ああ、これだ。
「君は……実田(みた)勇(いさむ)くんだね。この話は岸田さんから聞いている。課長も今ちょうどいるから一緒についてきて」
男の人はそう言うと、俺の報告書を持ったまま、すたすたと歩いて行く。
岸田さん?……ああ、係長のことか。
この人誰だろう?
なんで俺の名前?ああ、報告書か。
俺は訝しげに思いながらも選択肢がないので、そのまま彼に着いて行った。
「なるほどな。わかった。今週中にはコストを出すから安心しなさい」
ちょっと太目、いや貫録たっぷりの生産開発課の課長はそう言って、がははと笑った。
数日前に王さんを案内してここに来たけど、この人は見たことないな。
俺はそう思いながら課長の横に立つ男を見る。
それにしても背が高いなあ。190センチはありそうだ。
「錫元(すずもと)くん。とりあえず、この実田くんと内容を確認してもらってもいいか?今日中に全体を確認しておけば、後で色々聞かなくてすむだろう?実田くん。1-2時間もらうがいいかね?」
「はい、もちろんです」
この後、俺には予定はなかった。王さんも今日も翻訳に急がしそうだし、俺がしなきゃいけない業務はこれ以外にはなかった。
係長がにこやかに笑い、ぽんと印鑑を押す。
「俺、私というよりも辰巳先輩と松元主任のおかげです」
「ははは。確かに、でもお前がまとめたんだろう?だからこれはお前の功績だと思っていいぞ」
なんでそんなこと知ってるんだろう?そう思いながらも誉められて悪い気分がするわけがない。俺は思わず笑みを漏らした。
「後は生産開発課に行って、コストを出してもらえ。昨日、話を通しておいたからな。頑張ってくれるだろう」
「はい」
俺は返してもらった報告書を握りしめ、頷いた。
「あ、実田さん」
部屋を出て、3階の生産開発課に行くため廊下を歩いていると休憩室から王さんが顔をのぞかせる。
それがすこぶる可愛らしくて、俺は思わずニマニマしてしまいそうになった。
「今日は残業ありそうですか?」
王さんは部屋から出てきて、俺にそう問う。
「……多分ないと思います」
昨日も本当はなかったんだ。だから今日も大丈夫のはず。
「それなら今日、お買い物に付き合ってもらってもよろしいですか?」
「はい」
俺は迷うことなく頷く。
「今日はおいしいもの作りますね」
王さんはにこやかにそう言うと俺に手を振り、部署に戻って行った。
王さん、可愛いな。
美味しいもの作るってなんだろう。
いやいや、ウキウキしてる場合じゃない。
俺はホモじゃない。単に同僚と仲直りして嬉しいだけなんだ。
あのキスだって過ちにすぎない。
俺と王さんは単なる仕事仲間なんだから。
「うわっつ」
3階の廊下を歩いていると、ふいに目の前に壁が立ちふさがる。俺は避けることができず、そのままぶつかって弾き飛ばされた。
「大丈夫?」
それは壁ではなく、人で、尻もちついて床に座り込んだ俺を心配げに見つめていた。
「す、すみません。俺、いや、私がぼーとしてまして」
俺は慌てて立ち上がり、頭を下げる。そして報告書を探そうときょろきょろしていると、視界に白い紙が入った。
ああ、これだ。
「君は……実田(みた)勇(いさむ)くんだね。この話は岸田さんから聞いている。課長も今ちょうどいるから一緒についてきて」
男の人はそう言うと、俺の報告書を持ったまま、すたすたと歩いて行く。
岸田さん?……ああ、係長のことか。
この人誰だろう?
なんで俺の名前?ああ、報告書か。
俺は訝しげに思いながらも選択肢がないので、そのまま彼に着いて行った。
「なるほどな。わかった。今週中にはコストを出すから安心しなさい」
ちょっと太目、いや貫録たっぷりの生産開発課の課長はそう言って、がははと笑った。
数日前に王さんを案内してここに来たけど、この人は見たことないな。
俺はそう思いながら課長の横に立つ男を見る。
それにしても背が高いなあ。190センチはありそうだ。
「錫元(すずもと)くん。とりあえず、この実田くんと内容を確認してもらってもいいか?今日中に全体を確認しておけば、後で色々聞かなくてすむだろう?実田くん。1-2時間もらうがいいかね?」
「はい、もちろんです」
この後、俺には予定はなかった。王さんも今日も翻訳に急がしそうだし、俺がしなきゃいけない業務はこれ以外にはなかった。
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