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第四天 悩める俺(勇視点)
俺の本当の気持ち
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「お前、大丈夫か?」
「ん。ああ」
灘(なだ)が心配そうに俺を見る。
俺は灘を誘い近くで飲むことにした。奴は戸惑いながらも付き合ってくれた。
「なんか、様子おかしいな。だいたい王さんと一緒じゃないのか?」
「………」
説明するのも面倒だ。
いい奴だけど、色々勘ぐられるのが嫌だった。
「お前さあ、王さんはやめとけよ」
「!」
じっと見つめられそう言われ、俺は口に含んだビールを吐き出しそうになる。
目に涙を溜めて、口を押さえる俺を奴は静かに見ていた。
「お前さあ。俺と違って不器用だから心配なんだよ。月曜日、王さんと話をして、俺はやばいと思ったからさ。だから俺は引いた。彼はやめた方がいい」
「……そんなのわかってる」
言われなくてもわかっていた。
だいたい、俺はホモじゃない。
王さんを好きになるなんてありえない。今、気になるのはキスされたからに過ぎないんだ。
「……ならいいけど。さあ!元気に飲もうぜ。あー、もっと早い時間に会えばなあ。女の子呼んだのに。やっぱり女の子がいいよ。ふわふわしてて、やわらかいし。勇!今度合コン!合コンな!」
奴はばしっつばしっと俺の背中を叩く。
それが奴なりの励ましだとわかり、俺は笑う。
「そうだな。女の子。可愛い子、頼むよな。よろしく」
「可愛いいか。お前結構理想高いからなあ。まあ、がんばってみるは。じゃ、乾杯しようぜ!」
「ああ!」
俺達は笑いながら、カチンとジョッキを合わせ乾杯する。
そうして俺は奴のおかげで少し救われたような気分になりながら飲んだ。
「ありがとうございます」
灘と10時くらいには別れ、俺は代行運転を頼み寮まで帰ってきた。財布の中は危機的状況で明日から飲むのは控えようと頷く。
カンカンと階段を登り、俺は思わず王さんの寮の部屋を見る。明かりはついていない。
まだ帰ってないのか?
俺はそう思いながら、自分の部屋に戻る。
鍵を開け、中に入り、電気をつける。まず目に入ったのは白い陶器の徳利だった。そして、王さんの荷物が目に入る。
あのベッド、昨日眠れなかったんじゃ?
冷蔵庫を開けると王さんが買ったハムや、中国から持ってきた調味料が見えた。
俺は居間に座り込む。
やっぱり、王さんは嫌かもしんないけど、あの部屋は住めるような場所じゃない。
だから……
俺はそう決めると携帯電話を使って彼に電話をかける。
「喂(ウェイ)?」
呼び出し音が数回鳴り、訝しげな彼の声が聞こえた。
俺はその声を聞くだけで胸が締め付けれるような気持ちになる。でも息を吸うと口を開いた。
「実田です。やっぱり王さん、俺の部屋で寝泊りしてください。俺は邪魔しないようにしますから」
俺はそうまくし立てるように言うと、電話を切る。
卑怯だと思う。
でも断りの言葉なんて聞きたくなかった。
どこにいるだろう?
まだ係長たちと飲んでる?
それとも電車?
あほだ。
馬鹿だ。
なんでそんなこと考えるんだ。
俺は自分のおかしな思考に笑いたくなる。
シャワーでも浴びて、ビールでも引っ掛けて寝よう。
それとも、白酒飲もうか。
そうしよう、王さんに黙って飲むのはよくないけど、なんだか飲みたかった。
俺はシャワーをすばやく浴びると、テレビをつけて白酒を飲む。
喉に来るのがわかっているから、ちびちびと飲む。
芳醇な香りが俺を包み、心地ちよくなる。
それは王さんと飲んでる気持ちにさせてくれ、俺はなんだか幸せな気持ちになった。
王さん、帰ってこないかな。
会いたい。
あほだ、俺……
不意にガチャっと音がして足音が聞こえる。
「王さん?」
俺は立ち上がろうとして、足をもつれさせる。
「実田さん?!」
すごい音がしたのだろう、王さんが血相変えてやってきた。
「何してるのですか?しかも白酒。飲まないように言ったじゃないですか!」
王さんは呆れた様子で俺を叱る。
でも俺はそれがなんだか嬉しくふやけた笑いを作る。
「王さん、帰ってきてくれたんだ。おかえりなさい」
「……まったく」
王さんは腰を落とすと俺をひょいっと抱き上げた。
「!王さん?!」
「もう寝たほうがいいです。あと始末は私がしておきますから」
彼はそう言いながら俺をベッドの上に運ぶ。
「王さん、俺のこと嫌いですか?」
「……実田さん、かなり酔ってますね。この調子じゃ、明日は覚えてないでしょう」
王さんは溜息をつくとベッドの端に腰掛けた。
「あなたのおかげで善樹(シャンシュ)のことは忘れられそうです。でも……」
彼はそこで言葉を止める。俺は続きが聞きたくて体を起こすと彼を見つめた。王さんは俺の視線から避けるように視線を落とす。
「……辛いですね。でもやっぱり一緒にいたいと思ってしまう」
王さんは俺に笑顔を見せる。そしてその細い指で俺の唇を撫でた。
「おやすみなさい」
「王さん?」
「寝てください。お願いします」
彼は珍しく語気荒くそう言いい、パタンと襖を閉める。部屋が真っ暗になり、俺は立ち上がろうとする。しかし眩暈がしてベッドの上に倒れこんだ。すると睡魔が襲ってきて、俺はそのまま誘われるまま目を閉じた。
「ん。ああ」
灘(なだ)が心配そうに俺を見る。
俺は灘を誘い近くで飲むことにした。奴は戸惑いながらも付き合ってくれた。
「なんか、様子おかしいな。だいたい王さんと一緒じゃないのか?」
「………」
説明するのも面倒だ。
いい奴だけど、色々勘ぐられるのが嫌だった。
「お前さあ、王さんはやめとけよ」
「!」
じっと見つめられそう言われ、俺は口に含んだビールを吐き出しそうになる。
目に涙を溜めて、口を押さえる俺を奴は静かに見ていた。
「お前さあ。俺と違って不器用だから心配なんだよ。月曜日、王さんと話をして、俺はやばいと思ったからさ。だから俺は引いた。彼はやめた方がいい」
「……そんなのわかってる」
言われなくてもわかっていた。
だいたい、俺はホモじゃない。
王さんを好きになるなんてありえない。今、気になるのはキスされたからに過ぎないんだ。
「……ならいいけど。さあ!元気に飲もうぜ。あー、もっと早い時間に会えばなあ。女の子呼んだのに。やっぱり女の子がいいよ。ふわふわしてて、やわらかいし。勇!今度合コン!合コンな!」
奴はばしっつばしっと俺の背中を叩く。
それが奴なりの励ましだとわかり、俺は笑う。
「そうだな。女の子。可愛い子、頼むよな。よろしく」
「可愛いいか。お前結構理想高いからなあ。まあ、がんばってみるは。じゃ、乾杯しようぜ!」
「ああ!」
俺達は笑いながら、カチンとジョッキを合わせ乾杯する。
そうして俺は奴のおかげで少し救われたような気分になりながら飲んだ。
「ありがとうございます」
灘と10時くらいには別れ、俺は代行運転を頼み寮まで帰ってきた。財布の中は危機的状況で明日から飲むのは控えようと頷く。
カンカンと階段を登り、俺は思わず王さんの寮の部屋を見る。明かりはついていない。
まだ帰ってないのか?
俺はそう思いながら、自分の部屋に戻る。
鍵を開け、中に入り、電気をつける。まず目に入ったのは白い陶器の徳利だった。そして、王さんの荷物が目に入る。
あのベッド、昨日眠れなかったんじゃ?
冷蔵庫を開けると王さんが買ったハムや、中国から持ってきた調味料が見えた。
俺は居間に座り込む。
やっぱり、王さんは嫌かもしんないけど、あの部屋は住めるような場所じゃない。
だから……
俺はそう決めると携帯電話を使って彼に電話をかける。
「喂(ウェイ)?」
呼び出し音が数回鳴り、訝しげな彼の声が聞こえた。
俺はその声を聞くだけで胸が締め付けれるような気持ちになる。でも息を吸うと口を開いた。
「実田です。やっぱり王さん、俺の部屋で寝泊りしてください。俺は邪魔しないようにしますから」
俺はそうまくし立てるように言うと、電話を切る。
卑怯だと思う。
でも断りの言葉なんて聞きたくなかった。
どこにいるだろう?
まだ係長たちと飲んでる?
それとも電車?
あほだ。
馬鹿だ。
なんでそんなこと考えるんだ。
俺は自分のおかしな思考に笑いたくなる。
シャワーでも浴びて、ビールでも引っ掛けて寝よう。
それとも、白酒飲もうか。
そうしよう、王さんに黙って飲むのはよくないけど、なんだか飲みたかった。
俺はシャワーをすばやく浴びると、テレビをつけて白酒を飲む。
喉に来るのがわかっているから、ちびちびと飲む。
芳醇な香りが俺を包み、心地ちよくなる。
それは王さんと飲んでる気持ちにさせてくれ、俺はなんだか幸せな気持ちになった。
王さん、帰ってこないかな。
会いたい。
あほだ、俺……
不意にガチャっと音がして足音が聞こえる。
「王さん?」
俺は立ち上がろうとして、足をもつれさせる。
「実田さん?!」
すごい音がしたのだろう、王さんが血相変えてやってきた。
「何してるのですか?しかも白酒。飲まないように言ったじゃないですか!」
王さんは呆れた様子で俺を叱る。
でも俺はそれがなんだか嬉しくふやけた笑いを作る。
「王さん、帰ってきてくれたんだ。おかえりなさい」
「……まったく」
王さんは腰を落とすと俺をひょいっと抱き上げた。
「!王さん?!」
「もう寝たほうがいいです。あと始末は私がしておきますから」
彼はそう言いながら俺をベッドの上に運ぶ。
「王さん、俺のこと嫌いですか?」
「……実田さん、かなり酔ってますね。この調子じゃ、明日は覚えてないでしょう」
王さんは溜息をつくとベッドの端に腰掛けた。
「あなたのおかげで善樹(シャンシュ)のことは忘れられそうです。でも……」
彼はそこで言葉を止める。俺は続きが聞きたくて体を起こすと彼を見つめた。王さんは俺の視線から避けるように視線を落とす。
「……辛いですね。でもやっぱり一緒にいたいと思ってしまう」
王さんは俺に笑顔を見せる。そしてその細い指で俺の唇を撫でた。
「おやすみなさい」
「王さん?」
「寝てください。お願いします」
彼は珍しく語気荒くそう言いい、パタンと襖を閉める。部屋が真っ暗になり、俺は立ち上がろうとする。しかし眩暈がしてベッドの上に倒れこんだ。すると睡魔が襲ってきて、俺はそのまま誘われるまま目を閉じた。
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