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平民決勝戦?

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僕は息も落ち着いてきて、トイレに行くことにした。

通路を出ると、
「タカユキィ!」と声をかけられた。

こっ、この声は・・・
僕はビクビクしながら振り返った。

「ごめんなさい!」と両手を頭の上に置く防御態勢をとった。

「何言ってるの?それより凄かったわね」

「えっ!怒ってないんですか?」

「えっ!何を怒るのよ。凄い興奮しちゃったわ」

あれは怒ってたんじゃなくて、興奮してたのか・・・

「それより2組目に凄い子がいるわよ。あなたより小さいのに、長剣を振り回して、次々とやっつけてるの」

「長剣?」

きっとあの子だ。武器まで見なかった。

「そうなの。全然軸もぶれないし、軽々と扱ってる。間合いに入るのは大変そうよ」

「分かりました。ありがとうございます」


そこに、
「ねぇ、まだ」と赤毛の女の子が来た。

「なんだ、戻ってたんだ。何?この人、ファン?」

「いやいや、違うよ。この人は僕の・・・」

「婚約者よ。タカユキィの婚約者」セラフィは言った。

「えっ!こんな人がいるのに、私に、天使みたいに可愛いって言ったの!許せない!絶対に決勝で倒してやる」と走っていってしまった。

僕もダッシュで逃げようとした。しかし、防具の繋ぎ目の紐を掴まれた。

「ふ~ん、さっき謝ったのは、このことなのね」

「ちっ、違います。誤解です。誤解」

「じゃあ、言ってないの?嘘つかないわよね?」

「いや、あぁ、なんていうか」 

「どっちなの!はっきりしなさい!」

「うわぁ、言いました」

「へぇ~、言ったんだ。どう言うつもり?」

「僕は病気なんです!思ったこと言っちゃう病気なんです」

「もう、いいわ。決勝で負けたら、どうなるか、分かるわよね?」

「はい!だっ、大丈夫です。瞬殺、瞬殺で勝ちます!」

「瞬殺ね。途中で負けたら、私が瞬殺してるかもね」とセラフィはニヤリとした。

「まっ、任せてください。必ずセラフィさんに相応しい男になって、迎えに行きます」

「うん、楽しみにしてるわ」セラフィは手を離し、去っていった。

「ふぅ~」僕は息を吐き出した。

「タクティクス!瞬殺で頼むよ。一生のお願いだから」


そして通路に戻ると、セラフィが注意した受験者がいた。
「あれ、少なくない?」

「僕しか残らなかったよ」

「えっ、どういうこと?」

「予選なんかどうでもいいじゃないか。次さえあれば十分さ。そこの2人も邪魔でしかない」

「何だ、お前」巨漢の受験者が凄んだ。

「直ぐに退場してもらうから」

「はぁ?」

「止めなさい。38番、終わったばかりだが、大丈夫なのか?」試験官が来た。

「僕はいつでも大丈夫ですよ」

「分かった。直ぐに開始する。みんな闘技場に進んでくれ」

「38番。お前が直ぐに退場だ」巨漢が先に歩いていく。

「フンッ」赤毛の女の子が続いていく。

「待ってるよ」38番は歩いて行った。

僕はゆっくりと歩きながら、
「ナビちゃん、38番って魔族じゃないの?」

「今の魔法石の魔力量では復活はしないはずです」

「もし、ここで魔族の復活がバレたら、どうなる?」

「先のことは分かりません」

「やっぱりそれか」

「が、シナリオが巻き戻る可能性が高いと思われます」

「あれ?ナビちゃん、随分と融通が利くようになったね」

「マスターのお陰です」

「んっ?褒めてる?」

ナビちゃんは応えない。

はぉ、随分人間っぽくなったなぁ。
とにかく先に倒すしかないな。どこまで巻き戻ってしまうか想像できない。

僕は闘技場の中に入った。大歓声が巻き起こった。

そんな中、笛が吹かれた。

すぐに異様な魔力を感じた。やっぱりコイツ、間違いない。

38番は、巨漢に向かっていく。巨漢は剣で立ち向かおうとするが、虚しく吹き飛んでしまった。倒れた先でピクリとも動かない。

38番は、追い打ちをかけようとした。
んっ、コイツ殺すつもりか!
僕は足を踏み込んで、巨漢の近くで38番の剣を受けた。

「なぜ、邪魔をするんです。同じ魔族なのに」

「今はまだ魔族の復活がバレるわけにはいかないんだ。大人しく身を潜めるなら、危害を加えない」

「あなた程度で、私を抑えられるとでも?」

「どうしても分かってくれないのか?」

「こんな茶番が終わった後は、王の命を奪い、魔族復活を宣言します。どうですか?私に協力しませんか?」

タクティクスの体が呼応しようとする。
「ダメだ!タカティクス!騙されるな!お前の恨みを晴らすのはここではない!約束しただろ!オレが必ず晴らさせてやるって!」

「あらら、自分の体も思い通りにならないんですか?期待外れのようですね。私一人で十分です、廃棄しましょう」

僕は何の前触れもなく、閃いた。
「あっ、ナビちゃん!こいつ、バグなんじゃないか!」

「バクとは?」

「多分、シナリオが巻き戻らない程度で、僕が少し世界を変えてしまっているんだ。そのせいで、こいつは生まれた」

「システムエラー」と目の前で赤く文字が点滅した。

「あぁ、分かったよ。自分のケツは自分で拭くよ!」

タカティクス、頼む、僕の声に応えて!
「上級剣技!ソニックウェーブ!」

僕は38番を蹴り飛ばし距離を取った。そして、剣をエックスの文字に振り抜いた。

「こんなもの、私には。あっ、なぜだ!弾き返せない!うわぉ!!」

斬撃が38番の体をバラバラに切り刻み、消えた。

「はぉ、なんとかバレずに済んだかな・・・」
僕はゆっくりと振り返った。

赤毛の女の子はブルブルと震えていた。

「え~と、何か聞こえたかな?」

女の子は思いっきり顔を左右に振った。

「そう?それならいいんだけど」

判定員が走って近づいてきた。
「おい、なんてことしてくれたんだ。殺すなんて」

「え~っと、そうですよねぇ」

考えをぐるぐると巡らせるが、何も浮かばない。ナビちゃんは、システムエラーの文字から復帰してくれない。

「魔族だった」

みなが声のした方を振り返る。

赤毛の女の子だった。
「さっきのヤツ、この場で王様を殺して、魔族復活を宣言するって言ってた」

あちゃぁ、聞こえてたんしゃん。僕は頭を抱えた。

「本当か?聞き間違いじゃないのか?」

「本当です!ねぇ、あなたも聞こえたでしょ」

あれ?まだ巻き戻らない。いつも有無を言わせず巻き戻るのに。

「うん、言ってた。王様の安全のために、仕方なく殺しました」

他の判定員が来た。
「おい、死体がないんだ。どういうことなんだ?」

「えっ?」

僕もキョロキョロした。確かに何も残っていない。

「ということは、魔族だったというのが事実なのか?おい、急いで報告して、王の身の安全を確保だ」判定員達が走っていった。

僕と赤毛の女の子は、取り残された。
「あのぉ、どこまで聞こえてたのかな?」

「えっ!何も聞こえなかったわよ。フフフッ」

「何だよ、ちゃんと言ってよ」

「別に、今は魔族復活がバレるわけにはいかないなんて、聞こえてないわよ」

僕は両膝と両手を地面に付けた。

終わった。セラフィとの結婚も、ハルリナとの学園生活も。

「ほら、顔を上げて、誰にも言わないから」

「えっ?何で?」僕は正座するように座った。

「その代わりと言ったら、なんか脅してるみたいで嫌なんだけどぉ・・・」

「えっ、何?何?言ってみて」僕は期待を込めて聞いた。

「え~、しょうがないなぁ。私の彼氏になって、ウフッ」

「えっ!えぇ~!」
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