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第19話 接吻  〜天音〜 4

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 キスしてしまった!

 背徳感がすごすぎる。

『ハァーッ 私、どうしちゃったんだろ?』

 幼なじみに抱きしめられて、キスを許してしまった。今も素肌を直接撫でられている。これでは恋人同士の逢瀬《愛撫》になってしまう。

『瞬という彼氏がいるのに』

 許してしまった自分を叱りつつ「だけど」と言い訳してしまう自分を持て余してしまう天音。申し訳なさはあるのに、嫌な気持ちが起きないのだ。何よりも拒否すれば健を孤独にしてしまうという罪悪感が言い訳になってしまう。

『どうしよ? どうすれば一番良いの? 私が好きなのは瞬だけなのに。それは間違いないのに! でも、健を傷つけるのは嫌だし。どうしたら誰も傷つかずにすむの? 我慢したら…… 私が我慢したらいいの? あぁ、でも、そうしたら、裏切ることになっちゃうよね。ごめんなさい、瞬』

 しかし、そんな風に思考が乱れ、ふわふわしている天音を安心させるかのような囁きが聞こえる。

半分だけシェアだから。安心して」
「半分って…… これ、ダメだと思うん、んっ、んっ~」

 またしても唇が重ねられた。思わず目を見開いたまま。ゆっくりと舌が入れられる。

 確かに、歯を食いしばったはずだった。しかし、背中を大きな手が這い回ってきたとき、肉体的な快感とは違う、強烈な闇の記憶が快感につながってしまったのだ。

「んっ」

 いつの間にか、健の舌と絡み合い、吸い合い、流れ落ちてくる唾液を受け入れている自分がいた。

 健の手は、自由に動き回っている。背中を撫でる手が「邪魔だ」と言わんばかりにホックを外してしまったが、抗議すらできなかった。

 健のキスは、悠々と天音の中を蹂躙していたのだ。

 何秒だったろうか?

 ようやく顔を引いて唇を離した。それを健は無理に追ってこない。代わりに「ほらね」と嬉しそうに笑った。

「何がほらね、よ。ダメだってば」
「だって嫌がってない」
「だけど、これ、ダメだよ」

 瞬が知ったら絶対怒る。裏切りだもん。

「そうかな? うっとりしてくれたみたいだけど」

 健が突きつけた言葉。

 天音は心に張ったバリアが割れたのを知る。

 埋めてしまった記憶の彼方から「本当は嫌じゃないんだろ? 気持ちよさそうだったな」という言葉が引きずり出された。

 、言われた言葉だ。

 否定できない自分を見つけて唖然としている天音だった。
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