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第17話 合宿  〜天音〜 2

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 幼なじみが、いつもとすっかり態度を変えて、なぜか告白してきた。

 誰も来ない場所で、周りが寝静まった後に二人っきりというシチュエーション。

『こんなはずじゃなかったのになぁ』

 困っていた。

 けれども親密な幼なじみからの告白を受けて、自分の中に嬉しさがあるのは否めない。同時に反省もしていた。

『こんなことなら来なきゃ良かったなぁ』

 言い訳はいっぱいある。合宿の最後の夜の解放感。明日は半日練習してバスに乗るだけ。愛する彼氏のアドバイスを取り入れているから調子は上り調子だ。

 心が軽かった。

 それに、なんと言っても相手は、子どもの頃から、時には一緒の布団で寝て育った幼なじみ。いつもなら、毎晩のように、どちらかの部屋に行き来して、二人きりで話をしてる。

 むしろ、部屋に二人きりにならない日が3日も続いたら「なんかヘンだ」と感じてしまうほどの日常茶飯事。

 天音からしたら、健と2人になるのは、いつものことに過ぎないのだ。

 そこに何か警戒をするべきだという理由はなかったのだ。

 もちろん、消灯後の呼び出しにの可能性を全く考えなかったと言えばウソになる。しかし、それを自分で否定したのが天音だった。

『今さら告白なんてありえないよ。しかも合宿中だよ? そんなことするわけがないし。仮に告白されても「瞬がいるから無理」って言えば、それ以上の無茶なんてしないでしょ』

 特別な信頼関係がそう思わせていた。幼なじみとはそういうものなんだろう。

 健への信頼はあるし、確かに「特別な親しみ」はある。けれども、それは恋愛感情とは全く違うもの。恋人への気持ちとは違う親しみに過ぎない。

 家族に感じるのようなものだ。

 親しみと愛情は全く違うものである以上、正面から抱きしめられて「好きだ」と言われても返す言葉に困るのだ。相手を傷つけまいと思うほどに態度は慎重になる。

『あ~ 私が、甘かったか~』

 突き飛ばすのは違う気がする。かと言って応じるわけにもいかない。でも渉のことが頭にあって、健を孤独に追い込んでしまうのは怖いと思った。

 だから、突き放すことにためらいがある。

『でも、ちょっち、まずいのは私の心かもしれないわ』

 健に抱き締められるのは嫌だと思う気持ちが一つもないのだ。

 それも当たり前かもしれない。

 毎晩のように健は部屋にやってくる。中学からの習慣のようなもの。何でも話せるし、スキンシップだっていつものこと。「二人っきりのハグ」だって毎日してることに過ぎないのだ。

 そこに合宿最後の夜という高揚感があるせいか、抱きしめられると安心感すら生まれてしまっていた。
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