17 / 54
逆ハーと破滅からの脱出
17
しおりを挟む「……そのお話、是非受けさせていただきたいです」
意外にも、一番に賛同してくれたのは、イザベル様だった。
「正直に申しますと、もう見ていられなかったのです。
彼の方の醜態を。
いっそ隣国というのが嬉しいですし、今回のことで男性に頼って生きることの危険性をしみじみ感じましたわ。
私、出来る事なら、自分の力で生きてみたいと思っております。
伯爵家のことも、マーガレット様のおっしゃる専門家の方にお任せすれば、悪いようにはなりませんわね?」
「それは保証いたしますわ。
何せ、お任せするのは高等法院の副判事長、ラインバード侯爵様ですから」
ラインバード侯爵様は、50代半ば程の年齢の、貴族間の問題を多く扱う判事だ。
公正で公平な裁判に定評のある方。
経験も豊富だし、安心してお任せできる。
そして、私の件に関しては、証拠を既に渡してある。
その上で、ミクとエドウィンが結婚すれば慰謝料はプラスマイナスゼロになるよう、お願いしている。
「…貴女は、それで良いのですか?」
ラインバード侯爵様に何度も聞かれた。優しい。
そして、ミクをなるべく法廷に出さない方が良いとも伝えてある。
聖女である彼女は、貴族を含め民衆からの人気が絶大だ。何せ、魔獣の大規模侵攻から守ってくれた大恩人である。
今回の件も、男性側がミクに入れ上げているため、ミクに責任を問うのは難しいだろう。
そうなった理由も、おそらく私だけが知る能力のせいだし。
一番恐れるのは、その魅了を、判事相手に使われることだ。
公正な仲裁にならなくなってしまう。
それだけは避けたいから、ミクを法廷に近付けたくないのだ。
あの子自身は、ただ『普通』に過ごしているだけだ。
但し、『日本』の常識に近いところで。
あの子なりに、一生懸命こちらの世界に合わせようともしている。
だから、保身の意味もあって、『妹』を大切にして可愛がっていると見えるように接することに、あまり抵抗は無い。
実際、可愛いと思ってるしね。素直な良い子だから。
皆に愛され、大切にされるミクは、恐らく幸せだろうから、放っておいても大丈夫だろう。
エドウィン様に対しては、100年の恋も冷めている。いや、恋してさえいないけどね!
気持ちがグラついたのは、一時の気の迷いだ、絶対。
だから、断罪さえされなければ、何の問題もない!
私の事情を話した上で、4人の令嬢達にはそれぞれの家に慰謝料が入る形になるよう動いてもらうと告げた。
相手の有責を対外的に示すためだ。
そうすれば、次の相手ができやすくなる。隣国で探すので、傷物扱いはされにくいだろう。
そこまで話して、カトリーナ様とアンナマリー様が同意してくれた。
カトリーナ様とアンナマリー様は一学年下なので、中途の留学という形を取ることで落ち着いた。
イェーナ様は、去年病気のため参加出来なかった春の魔術実習を終えないと早期卒業制度が使えないので、他の方法が取れないか迷っていたが、恐らく断罪が行われる卒業パーティーは夏の終わりなので、ギリギリ間に合うと判断、賛同することになった。
私は、ちょっと悪役っぽい微笑みを浮かべた。
「では皆様、ここからは私達、運命共同体ですわ。
さり気なく、仲良くなったことを周囲にアピールしていきましょう。
一緒に居ることが不自然に見えないように、ゆっくりとしていきましょう。
社交の腕の見せ所ですわよ!」
「お任せくださいまし、やり切って見せますわ!」
イェーナ様が強い眸を私に向けた。
頷く私に、他の3人も倣う。
——後に、この部屋の名を取って『蒼星の会』と呼ばれる、女傑の会結成の瞬間である。
0
お気に入りに追加
466
あなたにおすすめの小説
攻略対象の王子様は放置されました
白生荼汰
恋愛
……前回と違う。
お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。
今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。
小説家になろうにも投稿してます。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
無責任でいいから
明日葉
恋愛
「責任?とってくださらなくて結構です」
没落伯爵家の令嬢セシリア・ノードはたまたま助けた少年から、責任を取って君と結婚する、と言われる。が。責任を取ってもらうほどの怪我でもなく、そもそも望んでいないのに責任とか、嫌がらせ、としか思えない。長年、家族から醜い容貌だと言われ続けたセシリアにしてみれば、とにかくそっとしておいて欲しくてすっぱりと断るが、すると相手の少年が絶望的な顔をする。
「わたしの容貌で責任と言われても、嫌悪感を与えるよな。すまない」
と、どこからどう見ても物語から出てきたような美しい容貌の人に謝罪されても意味がわからない。
それが、あまり表に出てこない第一王子とわかり、厳しく叱責を受けたセシリアは、そのまま家から追い出される。
一つだけ、持って出ることを許そうと言われ、ずっと近くにいてくれた侍従のアダンだけを連れて。
セシリアに仕えるばかりに、このまま家に残すことに危惧を覚えたから。アダンは喜ぶけれど、少しだけ顔を曇らせる。
「シア様がわたしだけ連れて出たと聞けば、兄上が烈火の如く荒れそうですが」
「お兄様は…そうね。でも、いつお耳に入ることか」
厄介払いを終えた伯爵家に、責任ではなく、感謝も伝えたいからと訪れた使者に「我が家への気遣いをいただけるのであれば、末娘が殿下に恋心を抱いております。どうか受け入れていただければ」と、伯爵は溺愛する娘を差し出そうとする。
そのことで、伯爵家が不興を買ったことは、もう関係のないことなので無責任と言われようと、知りません。
厄介な家からようやく解放された令嬢は、自由に生きたい。のだけど。「アダンも、わたしのことは放っておいて自由に生きていいのよ?」といえば、なぜか叱られ。
そっとしておいてくれない人たちを追い払ってくれるから。本当は、アダンがいてくれて、よかったのだけれど。
そうして今日も、セシリアはささやかな自由を満喫…したい。
私達、政略結婚ですから。
黎
恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。
それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。
契約結婚!一発逆転マニュアル♡
伊吹美香
恋愛
『愛妻家になりたい男』と『今の状況から抜け出したい女』が利害一致の契約結婚⁉
全てを失い現実の中で藻掻く女
緒方 依舞稀(24)
✖
なんとしてでも愛妻家にならねばならない男
桐ケ谷 遥翔(30)
『一発逆転』と『打算』のために
二人の契約結婚生活が始まる……。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる