82 / 153
第一章
晩餐会-05-
しおりを挟む
しかも、その服はレースのような刺繍が織り込まれており、見る者からするといかにも女性らしい印象を受ける。
そして、ノースリーブとなっているため、鈴羽さんのなめらかな腕が大胆に露出されているため、余計にそう思えるのかもしれない。
鈴羽さんの格好はボーイッシュ……というか男装と見紛うばかりの格好だったから、そのあまりのギャップに正直今まで同一人物だと気づかなかったくらいだ。
今の鈴羽さんは、その服装とあいまって、とても清楚かつ上品に見える。
別に今までの鈴羽さんが正反対だったとまで言いたい訳ではないが、雰囲気は大分違う。
と……俺がそんなことを考えている間に、鈴羽さんが、勢いよく俺の方に向かってきて——。
気づいたときには、鈴羽さんは、ワンピースの裾をふわりと広げて、俺の体に飛び込んでいた。
今まで大人しくしていた鈴羽さんのこの行動は俺にとっては完全に不意打ちになった。
しかも俺は下をむいて考え込んでいたからなおさらだ。
俺は鈴羽さんのタックル……ではなく飛び込みをマトモに受けてしまう。
そして、その勢いのまま地面に倒れ込んでしまう。
「あいたた……」
と、うめき声をあげて、目を開くと、そこには鈴羽さんの体があった。
鈴羽さんも俺と一緒に倒れ込んでしまったようだ。
が……問題はその位置であった。
変な方向に倒れてしまったのか、鈴羽さんの両足……というかもっとあからさまに描写するならばYラインにあたる部分がちょうど俺の顔にきてしまっていた。
「……あ……も、申し訳ありません……ご、ご主人様……」
「むぐ……い、いえ……」
俺は鈴羽さんの体に口元をふさがれていたので、変な声しか出せなかった。
鈴羽さんはすぐ俺の上から離れると思っていたが、なぜか動く気配がない。
それどころか、鈴羽さんはただ、
「あん……ご、ご主人様の……吐息が……」
と、うめき声をあげているだけであった。
「す、鈴羽……何をしているんですの!?」
と、さすがに見かねた様子の花蓮さんの声でようやく鈴羽さんは立ち上がる。
「か、花蓮様……申し訳ありません。ご主人様がご無事でついつい興奮してしまいまして……」
俺がチラリと麻耶さんの方を見ると、案の定というか眉根を思いっきりよせて、不機嫌そうに俺の方を一瞥する。
が、俺と目が合うとなぜか慌てたようにすぐに視線を外す。
そして、鈴羽さんの方を見て、やや戸惑い気味に、
「す、鈴羽、あ、あなたねえ……そ、その言い方はどうにかならないの? ご、ご主人様って……。は、恥ずかしくないのかしら」
と、言う。
まずい……今までウヤムヤにされていたから、うまくごまかすことができたと思っていたが……。
ついに鈴羽さんの異常な言動……いや行動を指摘されてしまったか。
が、鈴羽さんはまるで怯むこともなく妙に堂々とした態度で、
「わたしは何も恥ずべきことは言っておりません」
と、宣言する。
そして、やや間を開けると、麻耶さんの方に向き直り、
「それに……それを言うなら、麻耶様、あなたの方が……どうなのでしょうか? 美月……様の前で、自身の感情を抑えることもなく、『旦那様』などと言うなんて。まあ……同じ女として、ご主人様に魅せられてしまうのは理解しますが」
と、冷ややか気味に言う。
「な、何を馬鹿なことを言っているの!? あ、あれはこの男……二見に無理やり——」
麻耶さんはそこで突如何かに気づいたようにはっとした顔を浮かべて、言葉が止まる。
「ふ、二見……二見……い、今は普通に言えるわ!」
麻耶さんは何故か嬉しそうにオレの名前を連呼している。
そして、ペンダント……あれは確かフォートペンダントか……を握り締めている。
麻耶さんのその様子は傍目から見てもかなりおかしい。
俺だけでなく、美月さんと花蓮さんも怪訝な顔で麻耶さんを見ている。
鈴羽さんの言動が変なのは今に限った話しではないが……。
まさか……記憶を失っている間に、俺は麻耶さんにも回復魔法を使ったのか。
それが原因で——。
と、花蓮さんが一言、
「ええっと……麻耶さん。話があるんでしたよね。とりあえず話しをしませんか?」
と水を向ける。
「そ、そうね……。とりあえず関係者は全員集まったようだし、座って話しましょうか」
と、麻耶さんはひとまず落ち着きを取り戻し、相変わらず俺の方を警戒気味に見ながら、窓際にある自身の椅子に座る。
そして、ノースリーブとなっているため、鈴羽さんのなめらかな腕が大胆に露出されているため、余計にそう思えるのかもしれない。
鈴羽さんの格好はボーイッシュ……というか男装と見紛うばかりの格好だったから、そのあまりのギャップに正直今まで同一人物だと気づかなかったくらいだ。
今の鈴羽さんは、その服装とあいまって、とても清楚かつ上品に見える。
別に今までの鈴羽さんが正反対だったとまで言いたい訳ではないが、雰囲気は大分違う。
と……俺がそんなことを考えている間に、鈴羽さんが、勢いよく俺の方に向かってきて——。
気づいたときには、鈴羽さんは、ワンピースの裾をふわりと広げて、俺の体に飛び込んでいた。
今まで大人しくしていた鈴羽さんのこの行動は俺にとっては完全に不意打ちになった。
しかも俺は下をむいて考え込んでいたからなおさらだ。
俺は鈴羽さんのタックル……ではなく飛び込みをマトモに受けてしまう。
そして、その勢いのまま地面に倒れ込んでしまう。
「あいたた……」
と、うめき声をあげて、目を開くと、そこには鈴羽さんの体があった。
鈴羽さんも俺と一緒に倒れ込んでしまったようだ。
が……問題はその位置であった。
変な方向に倒れてしまったのか、鈴羽さんの両足……というかもっとあからさまに描写するならばYラインにあたる部分がちょうど俺の顔にきてしまっていた。
「……あ……も、申し訳ありません……ご、ご主人様……」
「むぐ……い、いえ……」
俺は鈴羽さんの体に口元をふさがれていたので、変な声しか出せなかった。
鈴羽さんはすぐ俺の上から離れると思っていたが、なぜか動く気配がない。
それどころか、鈴羽さんはただ、
「あん……ご、ご主人様の……吐息が……」
と、うめき声をあげているだけであった。
「す、鈴羽……何をしているんですの!?」
と、さすがに見かねた様子の花蓮さんの声でようやく鈴羽さんは立ち上がる。
「か、花蓮様……申し訳ありません。ご主人様がご無事でついつい興奮してしまいまして……」
俺がチラリと麻耶さんの方を見ると、案の定というか眉根を思いっきりよせて、不機嫌そうに俺の方を一瞥する。
が、俺と目が合うとなぜか慌てたようにすぐに視線を外す。
そして、鈴羽さんの方を見て、やや戸惑い気味に、
「す、鈴羽、あ、あなたねえ……そ、その言い方はどうにかならないの? ご、ご主人様って……。は、恥ずかしくないのかしら」
と、言う。
まずい……今までウヤムヤにされていたから、うまくごまかすことができたと思っていたが……。
ついに鈴羽さんの異常な言動……いや行動を指摘されてしまったか。
が、鈴羽さんはまるで怯むこともなく妙に堂々とした態度で、
「わたしは何も恥ずべきことは言っておりません」
と、宣言する。
そして、やや間を開けると、麻耶さんの方に向き直り、
「それに……それを言うなら、麻耶様、あなたの方が……どうなのでしょうか? 美月……様の前で、自身の感情を抑えることもなく、『旦那様』などと言うなんて。まあ……同じ女として、ご主人様に魅せられてしまうのは理解しますが」
と、冷ややか気味に言う。
「な、何を馬鹿なことを言っているの!? あ、あれはこの男……二見に無理やり——」
麻耶さんはそこで突如何かに気づいたようにはっとした顔を浮かべて、言葉が止まる。
「ふ、二見……二見……い、今は普通に言えるわ!」
麻耶さんは何故か嬉しそうにオレの名前を連呼している。
そして、ペンダント……あれは確かフォートペンダントか……を握り締めている。
麻耶さんのその様子は傍目から見てもかなりおかしい。
俺だけでなく、美月さんと花蓮さんも怪訝な顔で麻耶さんを見ている。
鈴羽さんの言動が変なのは今に限った話しではないが……。
まさか……記憶を失っている間に、俺は麻耶さんにも回復魔法を使ったのか。
それが原因で——。
と、花蓮さんが一言、
「ええっと……麻耶さん。話があるんでしたよね。とりあえず話しをしませんか?」
と水を向ける。
「そ、そうね……。とりあえず関係者は全員集まったようだし、座って話しましょうか」
と、麻耶さんはひとまず落ち着きを取り戻し、相変わらず俺の方を警戒気味に見ながら、窓際にある自身の椅子に座る。
45
お気に入りに追加
1,028
あなたにおすすめの小説
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう
果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。
名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。
日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。
ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。
この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。
しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて――
しかも、その一部始終は生放送されていて――!?
《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》
《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》
SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!?
暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する!
※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。
※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。
最強のコミュ障探索者、Sランクモンスターから美少女配信者を助けてバズりたおす~でも人前で喋るとか無理なのでコラボ配信は断固お断りします!~
尾藤みそぎ
ファンタジー
陰キャのコミュ障女子高生、灰戸亜紀は人見知りが過ぎるあまりソロでのダンジョン探索をライフワークにしている変わり者。そんな彼女は、ダンジョンの出現に呼応して「プライムアビリティ」に覚醒した希少な特級探索者の1人でもあった。
ある日、亜紀はダンジョンの中層に突如現れたSランクモンスターのサラマンドラに襲われている探索者と遭遇する。
亜紀は人助けと思って、サラマンドラを一撃で撃破し探索者を救出。
ところが、襲われていたのは探索者兼インフルエンサーとして知られる水無瀬しずくで。しかも、救出の様子はすべて生配信されてしまっていた!?
そして配信された動画がバズりまくる中、偶然にも同じ学校の生徒だった水無瀬しずくがお礼に現れたことで、亜紀は瞬く間に身バレしてしまう。
さらには、ダンジョン管理局に目をつけられて依頼が舞い込んだり、水無瀬しずくからコラボ配信を持ちかけられたり。
コミュ障を極めてひっそりと生活していた亜紀の日常はガラリと様相を変えて行く!
はたして表舞台に立たされてしまった亜紀は安らぎのぼっちライフを守り抜くことができるのか!?
劣等生のハイランカー
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す!
無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。
カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。
唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。
学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。
クラスメイトは全員ライバル!
卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである!
そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。
それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。
難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。
かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。
「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」
学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。
「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」
時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。
制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。
そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。
(各20話編成)
1章:ダンジョン学園【完結】
2章:ダンジョンチルドレン【完結】
3章:大罪の権能【完結】
4章:暴食の力【完結】
5章:暗躍する嫉妬【完結】
6章:奇妙な共闘【完結】
7章:最弱種族の下剋上【完結】
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
『付与』して『リセット』!ハズレスキルを駆使し、理不尽な世界で成り上がる!
びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中
ファンタジー
ハズレスキルも組み合わせ次第!?付与とリセットで成り上がる!
孤児として教会に引き取られたサクシュ村の青年・ノアは10歳と15歳を迎える年に2つのスキルを授かった。
授かったスキルの名は『リセット』と『付与』。
どちらもハズレスキルな上、その日の内にステータスを奪われてしまう。
途方に暮れるノア……しかし、二つのハズレスキルには桁外れの可能性が眠っていた!
ハズレスキルを授かった青年・ノアの成り上がりスローライフファンタジー! ここに開幕!
※本作はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる