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第一章
-09- オッサン、美女から全裸で土下座謝罪を受ける
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「あ、あの……ど、どういう——」
「二見様!」
「は、はい?」
「わたしの……この愚かな鈴羽のことを……許して頂けますでしょうか?」
鈴羽さんは非常に切羽詰まった物言いであった。
そして、鈴羽さんはなんと突然、その場に膝をついて、両手を地面につく。
「二見様……本当に申し訳ありませんでした。大変……大変に虫のいい話ですがわたし鈴羽が……二見様に仕えることをお許し頂けるでしょうか……」
俺はこのありえない状況にしばし言葉を失ってしまった。
正直なところ鈴羽さんの言葉も俺の頭の中にはほとんど入ってこなかった。
それもそのはずで、なにせ鈴羽さんは俺の足元であられもない姿で、両手をついて謝罪……というか土下座しているのだ。
鈴羽さんのその一連の所作は花蓮さんと同じように流れるように華麗であった。
彼女もまた一流の作法を身に着けているのだろうか……と俺は、そんなことを考えて、出来る限り目の前の光景から思考をそらそうとしていた。
なにせ今の鈴羽さんは生まれたままの姿であり、俺の視界に映る今の彼女の姿は男ならば誰しもが目を引いてしまうほどにあまりにも蠱惑的である……。
「あの……鈴羽さん。と、とりあえず立って話を……」
俺はなんとかそう言葉を漏らすのが精一杯であった。
鈴羽さんはしばしの間の後でようやく立ち上がろうとする。
鈴羽さんの顔は先ほどと同様に……いやそれ以上に悲壮感が漂っていて、俺はその様子に見かねて、
「い、いや……許すも何も……こちらも色々と申し訳ないことをしてしまったので……謝りたいと思っていたくらいですので……」
と、俺がシドロモドロになりながらも、そう話す。
だがこれがいけなかった……。
「ふ、二見様……な、なんという……御慈悲を!」
と、鈴羽さんは立ち上がろうとするが、途中で、突然感涙極まったかのように突然膝から崩れ落ちる。
「ち、ちょ——大丈夫……」
俺は反射的に、倒れかける鈴羽さんを支える……というか抱きすくめる形になる。
しまった……と思ったときには、鈴羽さんの滑らかな柔らかい体を全身で感じてしまっていた。
これは……終わったな……せっかくの和解もこれでは——。
と、俺は理性では絶望的な気持ちに、本能では至福の時をすごすというよくわからない精神状態に陥っていた。
再び言い訳をさせてもらえるのならば、俺も40代とはいえ一応男である。
本能的……というより生理的な反応が体に生じるのは仕方がない……のである。
「二見……様。わたしはこれより至高かつ唯一の存在である二見様の下僕としてわたしの身命をとして仕える覚悟です!」
「いや……鈴羽さん……す、少し落ち着いた方が——」
「二見……様……その今後は二見様のことを……ご主人様とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
鈴羽さんは頬を上気させて、目は完全に一点のみ……俺の方を見つめている。
肝心の俺の話しはほとんど耳に入っていないようだ。
俺は、その段になって、ようやく鈴羽さんのこうした様子にただならぬものを感じてしまった。
もしかしたら俺の回復魔法って、服が消えるだけではなく他の面でも何か副作用があったりしたのか……。
例えば、相手の精神に影響を……っていやいやさすがにそれはないはずだ。
異世界でも回復魔法は散々使ったし、最後まで苦手なままであったが、使った相手にそんな兆候が出たことは一度もなかった。
現に花蓮さんにもそんな様子はない。
それに仮に鈴羽さんに意図せずして何らかの精神系魔法の影響を与えていたとしたら、術者である俺が確実に気付くはずだ。
だがしかし……鈴羽さんのこの様子……とても通常の状態とは——。
「鈴羽、どこに行ったんですの? もう……麻耶さんがそろそろ到着するというのに……」
と、その時、花蓮さんの声が扉の向こうから聞こえた。
俺は思わずビクッと体を震わせて、背筋を冷たくさせる。
まずい……この状態を見られたら、俺は確実に破滅——
「あら? これは鈴羽の服……ですわね。敬三様はもう出られたのかしら……。せっかく西条家の主人たる着物をまとってもらおうと思っていましたのに……」
花蓮さんは何やら一人つぶやいている。
頼む……このまま部屋から去ってくれれば——。
「……鈴羽に今後の策を相談しないといけませんわね……。鈴羽……失礼しますわよ」
俺の願いとは裏腹に、無念にも木製の引き戸がゆっくりと開け離れる。
俺は息を呑み、その繊細な模様が施された深緑の入口の扉を見つめていた。
それはまるで時間が止まったかのようにゆっくりであった。
湯気が立ち上る中、花蓮さんの驚愕の表情が目に入り、
「キャ!」
と、短い悲鳴が聞こえる。
終わったのか……俺のこの世界での生活は——。
俺は目の前が真っ暗になり、思わずその場に倒れ込みそうになった。
が……花蓮さんは、ただ頬を紅潮させて、その滑らかな両手で顔を隠しながら、
「け、敬三様! た、大変失礼いたしました!」
と、大慌てで踵を返して、そのまま浴場から出ていく。
花蓮さんにはどうやら鈴羽さんの姿は見えていなかったらしい。
鈴羽さんはとっさに俺の背後にスルリと体を隠していた。
湯気で視界が不鮮明であり、かつ俺等の位置から入り口までそれなりの距離があったことが幸いした。
花蓮さんは何やらしばし脱衣所にとどまっていたようだが、その後そのまま出ていった。
気配が完全になくなったことを確認し、俺は胸をなでおろす。
「二見様!」
「は、はい?」
「わたしの……この愚かな鈴羽のことを……許して頂けますでしょうか?」
鈴羽さんは非常に切羽詰まった物言いであった。
そして、鈴羽さんはなんと突然、その場に膝をついて、両手を地面につく。
「二見様……本当に申し訳ありませんでした。大変……大変に虫のいい話ですがわたし鈴羽が……二見様に仕えることをお許し頂けるでしょうか……」
俺はこのありえない状況にしばし言葉を失ってしまった。
正直なところ鈴羽さんの言葉も俺の頭の中にはほとんど入ってこなかった。
それもそのはずで、なにせ鈴羽さんは俺の足元であられもない姿で、両手をついて謝罪……というか土下座しているのだ。
鈴羽さんのその一連の所作は花蓮さんと同じように流れるように華麗であった。
彼女もまた一流の作法を身に着けているのだろうか……と俺は、そんなことを考えて、出来る限り目の前の光景から思考をそらそうとしていた。
なにせ今の鈴羽さんは生まれたままの姿であり、俺の視界に映る今の彼女の姿は男ならば誰しもが目を引いてしまうほどにあまりにも蠱惑的である……。
「あの……鈴羽さん。と、とりあえず立って話を……」
俺はなんとかそう言葉を漏らすのが精一杯であった。
鈴羽さんはしばしの間の後でようやく立ち上がろうとする。
鈴羽さんの顔は先ほどと同様に……いやそれ以上に悲壮感が漂っていて、俺はその様子に見かねて、
「い、いや……許すも何も……こちらも色々と申し訳ないことをしてしまったので……謝りたいと思っていたくらいですので……」
と、俺がシドロモドロになりながらも、そう話す。
だがこれがいけなかった……。
「ふ、二見様……な、なんという……御慈悲を!」
と、鈴羽さんは立ち上がろうとするが、途中で、突然感涙極まったかのように突然膝から崩れ落ちる。
「ち、ちょ——大丈夫……」
俺は反射的に、倒れかける鈴羽さんを支える……というか抱きすくめる形になる。
しまった……と思ったときには、鈴羽さんの滑らかな柔らかい体を全身で感じてしまっていた。
これは……終わったな……せっかくの和解もこれでは——。
と、俺は理性では絶望的な気持ちに、本能では至福の時をすごすというよくわからない精神状態に陥っていた。
再び言い訳をさせてもらえるのならば、俺も40代とはいえ一応男である。
本能的……というより生理的な反応が体に生じるのは仕方がない……のである。
「二見……様。わたしはこれより至高かつ唯一の存在である二見様の下僕としてわたしの身命をとして仕える覚悟です!」
「いや……鈴羽さん……す、少し落ち着いた方が——」
「二見……様……その今後は二見様のことを……ご主人様とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
鈴羽さんは頬を上気させて、目は完全に一点のみ……俺の方を見つめている。
肝心の俺の話しはほとんど耳に入っていないようだ。
俺は、その段になって、ようやく鈴羽さんのこうした様子にただならぬものを感じてしまった。
もしかしたら俺の回復魔法って、服が消えるだけではなく他の面でも何か副作用があったりしたのか……。
例えば、相手の精神に影響を……っていやいやさすがにそれはないはずだ。
異世界でも回復魔法は散々使ったし、最後まで苦手なままであったが、使った相手にそんな兆候が出たことは一度もなかった。
現に花蓮さんにもそんな様子はない。
それに仮に鈴羽さんに意図せずして何らかの精神系魔法の影響を与えていたとしたら、術者である俺が確実に気付くはずだ。
だがしかし……鈴羽さんのこの様子……とても通常の状態とは——。
「鈴羽、どこに行ったんですの? もう……麻耶さんがそろそろ到着するというのに……」
と、その時、花蓮さんの声が扉の向こうから聞こえた。
俺は思わずビクッと体を震わせて、背筋を冷たくさせる。
まずい……この状態を見られたら、俺は確実に破滅——
「あら? これは鈴羽の服……ですわね。敬三様はもう出られたのかしら……。せっかく西条家の主人たる着物をまとってもらおうと思っていましたのに……」
花蓮さんは何やら一人つぶやいている。
頼む……このまま部屋から去ってくれれば——。
「……鈴羽に今後の策を相談しないといけませんわね……。鈴羽……失礼しますわよ」
俺の願いとは裏腹に、無念にも木製の引き戸がゆっくりと開け離れる。
俺は息を呑み、その繊細な模様が施された深緑の入口の扉を見つめていた。
それはまるで時間が止まったかのようにゆっくりであった。
湯気が立ち上る中、花蓮さんの驚愕の表情が目に入り、
「キャ!」
と、短い悲鳴が聞こえる。
終わったのか……俺のこの世界での生活は——。
俺は目の前が真っ暗になり、思わずその場に倒れ込みそうになった。
が……花蓮さんは、ただ頬を紅潮させて、その滑らかな両手で顔を隠しながら、
「け、敬三様! た、大変失礼いたしました!」
と、大慌てで踵を返して、そのまま浴場から出ていく。
花蓮さんにはどうやら鈴羽さんの姿は見えていなかったらしい。
鈴羽さんはとっさに俺の背後にスルリと体を隠していた。
湯気で視界が不鮮明であり、かつ俺等の位置から入り口までそれなりの距離があったことが幸いした。
花蓮さんは何やらしばし脱衣所にとどまっていたようだが、その後そのまま出ていった。
気配が完全になくなったことを確認し、俺は胸をなでおろす。
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