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プロローグ
-02- オッサン、S級冒険者の美女から不審がられる
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俺は声をかけられていることも忘れて、憧れの「流麗の剣姫」に会えた感動で、年齢も忘れて、ガラにもなく舞い上がってしまっていた。
年は俺の方がはるかに上とはいえ、彼女はこの世界——ダンジョン動画配信——では断然先輩だし、何よりもその動画は非常に人気がある。
どんな分野であれ、また自分よりもどんなに若くとも、自分よりも匠な技を持ち合わせている者には敬意を示して、学ぼうという意思を持たなければならない。
成長するためにはそのことが何よりも重要だと俺は異世界で散々学んできた。
だから、俺は超人気配信者である「流麗の剣姫」のことを尊敬していた。
それに何よりも彼女の配信は何というか雅なところがありPV目当てに下品なことをする配信者とは一線を画していて、そんなところもオッサンの俺としては数多いる動画配信者の中で尊敬できるところであった。
「えっと……聞こえていますか!?」
『流麗の剣姫』は、ポカーンと突っ立っている俺を見て、戸惑いの表情を浮かべている。
いかん……いかん……ついつい感動のあまりぼおっとしてしまった。
「あ、ああ……大丈夫です。ちゃんと聞こえています」
「そう……ですか。その……さきほどもお尋ねしましたが、こんなところで何を……ここはまだわたしたち以外は誰も立ち入っていない未踏査の最下層なのですが……」
『流麗の剣姫』は黒髪をなびかせながら、かなり不審そうな目で俺を見ている。
まあ……確かにこんな低ランクのダンジョンだ。
時間だけかけて、最下層まで来ても大したモンスターも素材も出現しないことは明白だから、誰も奥まで来ないのだろう。
実際、俺も一応未踏査となっているこのダンジョンの最下層に行って、動画配信したけど、全然再生数伸びなかったしな……。
「ああ。実は……ちょっと最深部に行った帰りでして。そこで動画配信したら、少しは再生数伸びるかなあ……なんて思ったんですが、やっぱりダメですね。ハハ……」
と、俺は自嘲気味にそう話す。
すると、『流麗の剣姫』は動画では見たこともないほどに、口をあんぐりと開けて、驚きの表情を浮かべる。
「え……い、今なんと……。このダンジョンの最深部に到達したのですか!? あなたが……たったひとりで!?」
「え……は、はい。ま、まあ……一応」
「そ、そんな!? このダンジョンは最初期のダンジョンの一つですが、最深部は世界中の誰も未だに到達していないはず!?」
え……そうなの?
まあ……確かに低ランクの割にやけに階数だけは多いから、あえて最深部まで行くもの好きが滅多にいなくても不思議ではない。
異世界でも、低ランクでドロップ品も大したことがない長ったらしいダンジョンは放置されていて、過疎っていたしな。
あるいは、こんなダンジョンの最深部に到達しても、冒険者としては、まったく自慢にもならないからわざわざ公表してないのかもな……。
俺はそんな低ランクのダンジョンの最深部にあえて行って、動画配信までしていた自分が恥ずかしくなってしまう。
「おいおい……美月ちゃん。こんなオッサンの言う事を真に受けるなよ。相変わらず素直すぎるなあ」
そう口を出してきたのは、「ダンジョンの支配者たち」のパーティーの一人である若い戦士の男であった。
たしか……「雷鳴の狂戦士」こと加賀美龍太——だったか……。
「ダンジョンの支配者たち」は『流麗の剣姫』の実力と人気が飛び抜けて高くて、他の二人のメンバーの影はどうしても薄くなっている印象だ。
特にこの若者……「雷鳴の狂戦士」はどうも軽薄な印象を見る者に与えてしまうらしく、あまり人気はない。
まあ……実際こう間近で見ても、チャラそうな髪型に、言動もどうも幼稚な印象があり、俺も同じような印象を受けてしまう。
って……いかん……いかん。
見た目で判断するなんて最低だ。
異世界でも、見た目がアレでも素晴らしい奴らは大勢いた。
だいたい彼はこの分野——ダンジョン配信——では俺よりも断然先輩で実力もある。
年を取るとついつい上から目線になってしまう。
反省しないといかんなあ……。
と……俺が自省していると、一番うしろにいたパーティーメンバーの一人であるヒーラーの女性が声を出す。
「龍太君。いきなり見ず知らずの他人をつかまえて『オッサン』は失礼ですわよ」
大人びた口調に落ち着いた物言いが耳に心地よく響く。
そうか……彼女が『癒やしの織姫』——西条花蓮か。
「ダンジョンの支配者たち」は先に説明した通り、『流麗の剣姫』が確かに一番人気なのだが、ヒーラーの彼女にもまた根強いファンがいる。
その見た目通りに、いつもは貞淑でおっとりした大人の雰囲気なのだが、いざ戦闘となると適格な指示出しと凛々しい立ちふるまいを見せる。
しかも彼女は超がつくほどのお嬢様である。
元々は華族でもあった日本屈指の名家の一つである西条家の令嬢だという。
そんな令嬢でありながら、冒険者として勇ましく闘う……そのギャップで見る者を魅了させている。
それに『癒やしの織姫』は、その外見も非常に美しく『流麗の剣姫』とはまた違った大人の魅力にあふれている。
ヒーラーという役割上、どうしても絵になるシーンがあまりなく、その分影は薄いのだが、その分たまに映る彼女に熱狂しているファンも多いと聞く……。
年は俺の方がはるかに上とはいえ、彼女はこの世界——ダンジョン動画配信——では断然先輩だし、何よりもその動画は非常に人気がある。
どんな分野であれ、また自分よりもどんなに若くとも、自分よりも匠な技を持ち合わせている者には敬意を示して、学ぼうという意思を持たなければならない。
成長するためにはそのことが何よりも重要だと俺は異世界で散々学んできた。
だから、俺は超人気配信者である「流麗の剣姫」のことを尊敬していた。
それに何よりも彼女の配信は何というか雅なところがありPV目当てに下品なことをする配信者とは一線を画していて、そんなところもオッサンの俺としては数多いる動画配信者の中で尊敬できるところであった。
「えっと……聞こえていますか!?」
『流麗の剣姫』は、ポカーンと突っ立っている俺を見て、戸惑いの表情を浮かべている。
いかん……いかん……ついつい感動のあまりぼおっとしてしまった。
「あ、ああ……大丈夫です。ちゃんと聞こえています」
「そう……ですか。その……さきほどもお尋ねしましたが、こんなところで何を……ここはまだわたしたち以外は誰も立ち入っていない未踏査の最下層なのですが……」
『流麗の剣姫』は黒髪をなびかせながら、かなり不審そうな目で俺を見ている。
まあ……確かにこんな低ランクのダンジョンだ。
時間だけかけて、最下層まで来ても大したモンスターも素材も出現しないことは明白だから、誰も奥まで来ないのだろう。
実際、俺も一応未踏査となっているこのダンジョンの最下層に行って、動画配信したけど、全然再生数伸びなかったしな……。
「ああ。実は……ちょっと最深部に行った帰りでして。そこで動画配信したら、少しは再生数伸びるかなあ……なんて思ったんですが、やっぱりダメですね。ハハ……」
と、俺は自嘲気味にそう話す。
すると、『流麗の剣姫』は動画では見たこともないほどに、口をあんぐりと開けて、驚きの表情を浮かべる。
「え……い、今なんと……。このダンジョンの最深部に到達したのですか!? あなたが……たったひとりで!?」
「え……は、はい。ま、まあ……一応」
「そ、そんな!? このダンジョンは最初期のダンジョンの一つですが、最深部は世界中の誰も未だに到達していないはず!?」
え……そうなの?
まあ……確かに低ランクの割にやけに階数だけは多いから、あえて最深部まで行くもの好きが滅多にいなくても不思議ではない。
異世界でも、低ランクでドロップ品も大したことがない長ったらしいダンジョンは放置されていて、過疎っていたしな。
あるいは、こんなダンジョンの最深部に到達しても、冒険者としては、まったく自慢にもならないからわざわざ公表してないのかもな……。
俺はそんな低ランクのダンジョンの最深部にあえて行って、動画配信までしていた自分が恥ずかしくなってしまう。
「おいおい……美月ちゃん。こんなオッサンの言う事を真に受けるなよ。相変わらず素直すぎるなあ」
そう口を出してきたのは、「ダンジョンの支配者たち」のパーティーの一人である若い戦士の男であった。
たしか……「雷鳴の狂戦士」こと加賀美龍太——だったか……。
「ダンジョンの支配者たち」は『流麗の剣姫』の実力と人気が飛び抜けて高くて、他の二人のメンバーの影はどうしても薄くなっている印象だ。
特にこの若者……「雷鳴の狂戦士」はどうも軽薄な印象を見る者に与えてしまうらしく、あまり人気はない。
まあ……実際こう間近で見ても、チャラそうな髪型に、言動もどうも幼稚な印象があり、俺も同じような印象を受けてしまう。
って……いかん……いかん。
見た目で判断するなんて最低だ。
異世界でも、見た目がアレでも素晴らしい奴らは大勢いた。
だいたい彼はこの分野——ダンジョン配信——では俺よりも断然先輩で実力もある。
年を取るとついつい上から目線になってしまう。
反省しないといかんなあ……。
と……俺が自省していると、一番うしろにいたパーティーメンバーの一人であるヒーラーの女性が声を出す。
「龍太君。いきなり見ず知らずの他人をつかまえて『オッサン』は失礼ですわよ」
大人びた口調に落ち着いた物言いが耳に心地よく響く。
そうか……彼女が『癒やしの織姫』——西条花蓮か。
「ダンジョンの支配者たち」は先に説明した通り、『流麗の剣姫』が確かに一番人気なのだが、ヒーラーの彼女にもまた根強いファンがいる。
その見た目通りに、いつもは貞淑でおっとりした大人の雰囲気なのだが、いざ戦闘となると適格な指示出しと凛々しい立ちふるまいを見せる。
しかも彼女は超がつくほどのお嬢様である。
元々は華族でもあった日本屈指の名家の一つである西条家の令嬢だという。
そんな令嬢でありながら、冒険者として勇ましく闘う……そのギャップで見る者を魅了させている。
それに『癒やしの織姫』は、その外見も非常に美しく『流麗の剣姫』とはまた違った大人の魅力にあふれている。
ヒーラーという役割上、どうしても絵になるシーンがあまりなく、その分影は薄いのだが、その分たまに映る彼女に熱狂しているファンも多いと聞く……。
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