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第三話

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「さっさと来い!」

 私は今日も暴力を振るわれる

 昔からそれが当たり前だった私にとってそれは、もはや日常と呼べるくらいのものになっていた

 そして、その日も屋上で暴力を振るわれる――はずだった


「気持ち悪いんだよ!」

 拳が目の前に迫るが私に抵抗する意思はない

 もうそんな感情はとっくに無くしていた

 でも――

「何やってんだ」

 その拳は背が高くて少し顔が怖い男の人によって止められた

 その人は私を暴力から守ってくれただけでなく


「傷の手当は自分でできます……慣れてますから」

「そういう問題じゃない、動くな」

 私の容姿を気味悪がるどころか、傷の手当までしてくれた

 そんな彼は私がお礼をしたいと告げると部活に入っているのかと聞いてきた


「入っていません」

「ゲーム部に入れ」

「はい」

 勿論、私は喜んで応じた

 でも……ここで勘違いをしてはいけないのは、先輩は部室でヤる相手として私を部活に勧誘したということだ

 実際の先輩は噂よりもずっと優しい人だったけど、わざわざ部活に誘ったってことはやっぱりそういうことなんだろう

 その日、私は初めてゴムを買って帰った



 ◆◆

 次の日学校に行くと、私のことをいじめていた子に土下座された

「いっ、今まで申し訳ありませんでした!」

「えっ、あっ……」

「もう二度としませんから!!」

 驚いた私が中々喋れないでいると、そう言ってどこかに行ってしまった……

 いきなり別人のようになった所を見ると、先輩のおかげかな

 放課後になって部室にきた私はゴムを机に置く

 けど、先輩は噂とは全く違う人みたいだった


「学校でしたことは一度もない」

 どうやら学校ではしないらしい

 そのあともゲームができない私に苛立ちもせずに優しく教えてくれた

 学校でしないなら放課後するのかとそわそわしていたが

 帰りに呼び止められこそしたが結局誘われなかった

 土日は部活がないから会えないかと先輩のことを考えていたら

 気づいた時にはゲーム好きの先輩がいそうなゲームセンターに私は足を運んでいた

 ゲームセンターに来たからといって先輩に会えるわけでもないのに……

 しばらく待っていると


「おい、そこの女!俺らと遊ぼうぜ!」

 怖い男の人たちに話しかけられて、

 断ったら手を掴まれて無理やり連れていかれそうになった


 でも――

「おい、うちの後輩に何してんだ」

 先輩が助けてくれた

 男の人達に絡まれて困っていた私を先輩がまた助けてくれた

 初めて会った時から先輩に優しくされると心が痛くなる

 痛いと言ってもそれはどこか心地よくて切ない痛みだ


「またな」

「……」

 先輩の背中が遠くなっていく――

「……何だ?」

 私は無意識に先輩の服の袖をつかんでしまっていた


「あっ、あの……」

「?」

 何で掴んじゃったんだろう……でも、離したくないな

「先輩、今から私の家に来ませんか?」

 その提案は一度断られてしまったけど

 私がつらそうな顔をしたら先輩は


「やっぱり邪魔させてもらう」

 来てくれると言ってくれた

 優しすぎる先輩が私以外の子に騙されないか心配だ

 どこまでも優しい先輩をずっと私だけに繋ぎとめておく為には――


「先輩、薬局に寄ってもいいですか?」
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